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ガルド城の秘密
第118話-もう1人の物語-後編
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彼女が亡くなって俺は周りから責められた。
怪しげな薬を飲ませたからじゃない。怪しげな儀式をしたからでもない。
ただ、彼女の願い事を聞かなかったから。
「一緒に思い出を作りたい。他愛無い話をして、変わっていく村を見ていたい」その言葉を俺は元気になればと聞き流していた。
それでも目が覚めなかったのが俺だった。
また会えればそんな願いは叶えてやれる。そんな馬鹿なことを考えて、一層魔法にのめり込んだ。
死んだ人間が生き返る。そんな事ありえない。だけど、それを可能にするのが魔法だと信じて。
責められながら村を出て行って10年が経っていた。
俺は変わらず各地をふらふらしながら魔法の事を調べていた。その中で久々に村の近くを通った。堂々と顔を出すのは出来なかったから夜の間にこっそりと彼女の墓に手を合わせるだけのつもりで寄った。
そこでまさか彼女の家族に会っちまって、逃げようとした俺に見せたいものがあるって、家にまで入れてくれた。
中は変わってない。昔見た通りの家の中でなんだか安心した。
彼女の親が持ってきたのは一通の手紙だった。
封は切られてない。つまり、差し出し人しか中身は分からない。
差出人は彼女からだと告げられた。
本当はもっと早く渡すものだったが、俺への怒りのせいで渡すに渡せなかったと謝られた。謝るべきは俺のはずなのに。
中には小さな文字で書いた俺への嫌味でいっぱいだった。「人の話は聞きはしない」「だらしない」「誰にでも優しいのがむかつく」「声と体の大きさだけは一丁前」とかな。
でも、その文面を読んでると目の奥が熱くなってきた。彼女の声で俺の頭の中で再生されるんだ。
そして最後に「また一緒の村で、同じ世界で会えますように。改めて思い出を作りたい」
その言葉は今まで誰に言われた言葉以上に突き刺さった。
罵倒よりも痛くて辛い言葉。本来出来たことをしなかった。俺への罪だ。そこでようやく目が覚めた。遅すぎんだけどな。
俺は彼女の墓の前で泣いて、謝罪した。許してくれる人ももういないのに。
馬鹿なことをしたと。そして、俺は自分に痛みを与えるために、今までの俺から変わるために紋様の所を傷つけた。
そこで足を洗って、魔法信者達との縁も切った。
そこからは今までの人脈を使って商売を始めた。そして、今日に至る。
「ってことだ。辛気臭い話だったろ、馬鹿な男の半生さ」
「お茶をとってきます」
「おう、うまいの頼む」
「強がらなくていいです。お互い目が真っ赤なんですから。ここは誰もこないので泣いてもいいですよ」
「もう死ぬほど泣いた。だから今はこれでいい。思い返してちょっと寂しくなるけどよ。俺は声だけは一丁前だからな」
そこからの言葉はお互いなかった。
無言でお茶を入れてきて、それをお互いに啜る。
乾きかけていた喉が潤っていくのが気持ちいい。
「私は本で魔法と言う言葉を何度も目にしました。けど、実際それを信じてはいません。だから、信じていた人のきっかけを聞きたかったんです。ごめんなさい」
「謝る必要ないだろ。舞台裏で言ってた、体が大きい人が苦手なのも謝る必要はなかったろうに」
「嫌なことを話させてしまったのかな、それと怖い人と言って不快な気持ちにさせたかと」
「人それぞれ感性があるからな。あんま気にするな」
管理人は冷たいように見えて、人一倍気を使う人物なのだと分かった。
「美味しかった。ありがとう。そしたら俺はそろそろ部屋に戻る。手伝いはいいぜ」
「この城にも今後出入りするんですよね?」
「いや、どうだろうかね。ガルド公は普段ここにはいないだろう」
「えぇ、まぁそうですが」
バツの悪そうな、言いたいことを言えなさそうな空気が漂う。いや、本当は何を言いたいのかわかる気がする。自分の自惚れでなければ。
「お茶美味しかったしな。また近くによれば休憩がてら来てみるさ。俺も美味いお茶知ってるんだ。差し入れに来るからな。ここにいてくれよ」
「えぇ、楽しみにしておきます。おやすみなさい」
言葉で返さずに手をあげて返事をする。
こりゃ、来なかったら後が怖そうだ。また手土産でも持ってくる予定入れとかなきゃな。
怪しげな薬を飲ませたからじゃない。怪しげな儀式をしたからでもない。
ただ、彼女の願い事を聞かなかったから。
「一緒に思い出を作りたい。他愛無い話をして、変わっていく村を見ていたい」その言葉を俺は元気になればと聞き流していた。
それでも目が覚めなかったのが俺だった。
また会えればそんな願いは叶えてやれる。そんな馬鹿なことを考えて、一層魔法にのめり込んだ。
死んだ人間が生き返る。そんな事ありえない。だけど、それを可能にするのが魔法だと信じて。
責められながら村を出て行って10年が経っていた。
俺は変わらず各地をふらふらしながら魔法の事を調べていた。その中で久々に村の近くを通った。堂々と顔を出すのは出来なかったから夜の間にこっそりと彼女の墓に手を合わせるだけのつもりで寄った。
そこでまさか彼女の家族に会っちまって、逃げようとした俺に見せたいものがあるって、家にまで入れてくれた。
中は変わってない。昔見た通りの家の中でなんだか安心した。
彼女の親が持ってきたのは一通の手紙だった。
封は切られてない。つまり、差し出し人しか中身は分からない。
差出人は彼女からだと告げられた。
本当はもっと早く渡すものだったが、俺への怒りのせいで渡すに渡せなかったと謝られた。謝るべきは俺のはずなのに。
中には小さな文字で書いた俺への嫌味でいっぱいだった。「人の話は聞きはしない」「だらしない」「誰にでも優しいのがむかつく」「声と体の大きさだけは一丁前」とかな。
でも、その文面を読んでると目の奥が熱くなってきた。彼女の声で俺の頭の中で再生されるんだ。
そして最後に「また一緒の村で、同じ世界で会えますように。改めて思い出を作りたい」
その言葉は今まで誰に言われた言葉以上に突き刺さった。
罵倒よりも痛くて辛い言葉。本来出来たことをしなかった。俺への罪だ。そこでようやく目が覚めた。遅すぎんだけどな。
俺は彼女の墓の前で泣いて、謝罪した。許してくれる人ももういないのに。
馬鹿なことをしたと。そして、俺は自分に痛みを与えるために、今までの俺から変わるために紋様の所を傷つけた。
そこで足を洗って、魔法信者達との縁も切った。
そこからは今までの人脈を使って商売を始めた。そして、今日に至る。
「ってことだ。辛気臭い話だったろ、馬鹿な男の半生さ」
「お茶をとってきます」
「おう、うまいの頼む」
「強がらなくていいです。お互い目が真っ赤なんですから。ここは誰もこないので泣いてもいいですよ」
「もう死ぬほど泣いた。だから今はこれでいい。思い返してちょっと寂しくなるけどよ。俺は声だけは一丁前だからな」
そこからの言葉はお互いなかった。
無言でお茶を入れてきて、それをお互いに啜る。
乾きかけていた喉が潤っていくのが気持ちいい。
「私は本で魔法と言う言葉を何度も目にしました。けど、実際それを信じてはいません。だから、信じていた人のきっかけを聞きたかったんです。ごめんなさい」
「謝る必要ないだろ。舞台裏で言ってた、体が大きい人が苦手なのも謝る必要はなかったろうに」
「嫌なことを話させてしまったのかな、それと怖い人と言って不快な気持ちにさせたかと」
「人それぞれ感性があるからな。あんま気にするな」
管理人は冷たいように見えて、人一倍気を使う人物なのだと分かった。
「美味しかった。ありがとう。そしたら俺はそろそろ部屋に戻る。手伝いはいいぜ」
「この城にも今後出入りするんですよね?」
「いや、どうだろうかね。ガルド公は普段ここにはいないだろう」
「えぇ、まぁそうですが」
バツの悪そうな、言いたいことを言えなさそうな空気が漂う。いや、本当は何を言いたいのかわかる気がする。自分の自惚れでなければ。
「お茶美味しかったしな。また近くによれば休憩がてら来てみるさ。俺も美味いお茶知ってるんだ。差し入れに来るからな。ここにいてくれよ」
「えぇ、楽しみにしておきます。おやすみなさい」
言葉で返さずに手をあげて返事をする。
こりゃ、来なかったら後が怖そうだ。また手土産でも持ってくる予定入れとかなきゃな。
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