上 下
334 / 744

アイトネのお礼!

しおりを挟む
「皆様ありがとう御座いました。」
「困った時はお互い様ですわよ、妖精達にはお世話になってるもの。」
 ドライアドとマルグリットは笑みを浮かべながら話す。

「はーい妖精ちゃん達お疲れ様ー!お菓子あるよー!」
 千春がスーパーのお菓子を取り出し、頼子と麗奈も開けるのを手伝いテーブルに並べる、しかし妖精達はいつもの様にお菓子へ特攻をしない。

「あれ?」
「どうしたのかな?」
「リリ、どうしたの?」
 3人はいつもと違う妖精に戸惑いながら問いかける。

「皆んな集まってー。」
 リリの声を聞いた妖精が集まり話し出す、そしてリリが石を千春に渡す。

「はい、チハル、私達からのお礼よぉ。」
「げ。」
「おうっ、やばいヤツ。」
「コレか、どうすんのコレ。」
 千春の手のひらに置かれたソレは国宝級の宝石、精霊の涙だ。

「千春、メグ様にあげたら?」
「ナイスヨリ、そうしよう。」
 千春はドライアドと話をしているマルグリットを声を掛ける。

「お母様。」
「チハルお疲れ様、どうしたの?」
「はいコレ、妖精達からのお礼です。」
 有無を言わさず手に乗せる千春。

「はーい妖精ちゃん達お菓子食べるよー!」
「ちょっと!?チハル!?」
「「「「わぁぁぃ!」」」」
「「「「お菓子食べるー!」」」」
 マルグリットの声は妖精達にかき消される、千春もお菓子をつまみ口に入れる、妖精達のオヤツタイムは暫く続いた。


-----------------


『あら、賑やかねぇ。』
「アイさん、おかえりなさい。」
『メグちゃんありがとう、コレ管理者案件だったのよ。』
「モートさんにお聞きしました、そちらは終わったのですか?」
『えぇ、問題無いわ、犠牲者の魂も輪廻に戻せたし終了ね。』
 笑みを浮かべ答えるアイトネ。

「それは良かったわ。」
『それで、お礼をしたいのだけれど。』
「要らないわ、コレ貰っちゃったもの。」
 手のひらに乗せた精霊の涙を見せながら呟くマルグリット。

『チハル、ヨリ、レナ、お礼何が良い?』
「いらなーい。」
「んー、家内安全?」
「初詣の祈願か。」
「だって神様にお願いってそんなんじゃん?」
「んじゃ私は今年一年健康であります様に。」
 お礼を考える気の無い3人はケラケラと笑いながら話す。

「そうだ、お礼ならドワーフの王様にしたら良いんじゃない?」
『そうねぇ、それじゃ行きましょうか。』
「・・・ん?私達も?」
『えぇ、メグちゃんも行くでしょ?』
「そうね、ゲルダムにお願いしたのは私だし、カラーシャとも話がしたから行くわ。」
『それじゃ送るわね。』
 再度ドライアドにお礼を言われ、手を振りドワーフ国に移動する千春達。

「うおぉ!急に現れるとビックリするだろうが!」
 城の中に転移され、急に現れた千春達にゲルダムが声を上げる。

「ゲルダムありがとう、すべて解決したわ。」
「気にするな、良い運動にもなったからな。」
『私からもお礼を言うわ、今回は手伝ってくれてありがとう。』
「女神よ、この世界を守る者よ、友の願いを聞いただけだ気にしないでくれ。」
 ゲルダムは平然とした態度でアイトネに言う、アイトネは微笑み話をする。

『何かお礼をしたいのだけれど、何かあるかしら?』
「神に願い事か?」
『えぇ、何か有るかしら?』
「フンッ、神に願いなど、必要無いな。」
「ゲルダム、失礼な言い方するのはやめなさいよ。」
「ドワーフの生き方の1つだ、願いは自分の手で掴むもの、与えられた物なんぞ自分の糧にならんし手に余る物だ。」
『国の事でも良いわよ?』
「尚更だな、神に頼らなければならない国なんぞ滅ぶしかあるまい、自分達の手で作り上げ、育ててこその国だからな。」
 ドワーフの矜持に反するのか、不満げに言うゲルダム。

『・・・まったく、チハルといいメグといい、欲の無い子ばかりねぇ。』
「あら、欲まみれの人もそこらにいっぱい居るわよ?」
『メグちゃんの周りの人がって事よ、でも何かしらお礼はしたいのだけれど。』
 困り顔のアイトネに千春が声を掛ける。

「アイトネ、お酒とか出せないの?」
『お酒?出せるわよ?』
 酒と聞きゲルダムの目が変わる。

「酒だと?神の酒が有ると?」
『神の酒ではないわ、私に送られた供物のお酒ね、沢山あるわよ。』
「ほほう、それは興味がある、お礼と言うなら酒にしてくれ。」
 先ほどとは打って変わり、酒を要求するゲルダム。

『良かったわ、それじゃぁお酒を出すわね、何処に出しましょうか。』
「ココで良くない?」
 千春はゲルダムの職務室と思われる部屋を指し言う。

『・・・入りきらないわよ?』
「どんだけ出すつもりなの!?」
『今日手伝った兵士たちも飲むんでしょ?沢山出すわよ。』
「女神よ、隣の部屋で構わんか?そこなら広い。」
 ゲルダムが言うと扉を開け、隣の部屋に行く、応接間の様になっているが、飾り気も少なく、会議室の様な感じだ。

『それじゃ出していくわね。』
 アイトネは千春と同じ様な空間を開き、お酒を次々と出していく。

「うわぁ、樽だ。」
「これ陶器で出来てる。」
「すっご、コレ何年前のお酒なの?」
『それ?え~っと多分3千年前のもう滅びちゃった国のお酒ね。』
「3000年!?そんな酒が!?」
『時の止まった空間に入れてるから劣化はしてないわよ。』
「ふむ、配る前に一度調べた方が良いな、これは掘り出し物もありそうだ。」
『これ全部あげるから好きなようにしてちょうだい、本当にお酒だけで良いの?』
「勿論だ!また何か有ったらすぐに手伝おう!」
 大量の酒を目の前にし、興奮気味に答えるゲルダム、アイトネとマルグリットはクスクスと笑う。

「はーい!アイトネー。」
『はい!チハル!』
 手を上げる千春にアイトネが指を差す。

「ボックスに入っている妖精喰いはどうしたらいい?」
『好きなようにして良いわよ、食べても良いし、魔術の材料にしても良いわ。』
「・・・え゛?これ食べれるの?」
『食べれるわよ、食べてる人間見た事有るもの。』
「食べられてる人間じゃなく?」
『えぇ、あと、魔術の材料にもなるわ、何に使うかは魔導士なら知ってるんじゃないかしら?』
「・・・ヨリの影に入ってるのはアリンさん行きだね。」
「そんじゃ千春のは食事用?」
「えぇぇぇ、食べるのぉ?コレ。」
 2人は嫌そうな顔をしながら話す。

「あのー私も結構入れてんだけど。」
 麗奈はそっと手を上げながら言う。

「食べて良いよ。」
「食べなよ。」
「嫌だよ!!!どうやって食べんのよコレ!!!!」
「「さぁ?」」
 ぎゃいぎゃいと騒ぐ千春達。

「アイトネこれどうやって食べんの?」
『鍋に入れて火をかけると溶けるからスープにして飲める・・・みたいね。』
 空間をぼーっと見ながら答えるアイトネ。

「何見てんの?」
『記憶庫にある映像よ、うん、鍋に細かく切って火をかけて・・・溶かしてるわねぇ。』
「記憶庫って便利だね。」
『えぇ。』
「何か調味料入れてる?」
『・・・塩ねコレは。』
「塩かぁぁ・・・こっちの味付け塩ばっかりなんだよなぁ。」
 千春はアイテムボックスから凍った小さめの妖精食いを取り出す。

「鑑定・・・チッ!弾きやがったコイツ!」
『まだ生きてるもの、魔法抵抗が高いからチハルには鑑定出来ないわよ。』
「アイトネ鑑定してー。」
『えっと・・・・・・・・・。』
「どうしたの?」
『生で踊り食い出来るそうよ。』
「うそぉん、腹食い破られるでしょ!こんなの!」
『これ見える?この小さな丸い粒』
「うん、スライムの中のだよね、結構あるね。」
『これが核なの、これを全部取れば良いのよ。』
 妖精食いの中には大豆の様な粒が沢山入っている。

「・・・めんどくさっやっぱり細かく切って溶かす方が早いな。」
『そうね、味付けは?』
「ん~色々やってみないと分かんないね。」
 千春とアイトネが話をしているのを皆は黙って見ている、そして頼子がポツリと話しかける。

「千春。」
「なに?」
「食べるの?」
「・・・食べてみたくない?」
 千春は悪戯を思いついたように、ニヤリと笑うと頼子と麗奈を見た。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幸子ばあさんの異世界ご飯

雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」 伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。 食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。

転生王女は現代知識で無双する

紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。 突然異世界に転生してしまった。 定番になった異世界転生のお話。 仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。 見た目は子供、頭脳は大人。 現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。 魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。 伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。 読んでくれる皆さまに心から感謝です。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~

明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

処理中です...