女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -完結編-

page.408

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詩織が、ちょっとむっとした表情で、アンナさんをじーっと見てる…?


『んもぅ!アンナさんってば!!』

『えっ、なに?詩織』

『鈴ちゃんの芸能界デビューのきっかけが、実は雄二さんだったって、それをずっと前から知ってたのなら…なんで私たちにそっと教えてくれなかったのぉ!』


アンナさんは少し困った様子で…。


『だって…鈴ちゃんの名前を雄二が訊かなかったわけだし、雄二が冴嶋社長と過去に繋がっていたことも、冴嶋プロダクションに紹介した子が鈴ちゃんだったって知ったのも、鈴ちゃんが芸能界デビューしてから何年か経ったあとだったし…そのことさえも私、すっかり忘れちゃってたの…』


アンナさんもそう《忘れてたんだって》言ってるんだし、アンナさんは別に悪くないんじゃ?って僕も思う。

けれどアンナさんは、そんな詩織に対して…。


『ほんとにごめんね。詩織』

『ぷんっぷんっ!』

『あとで早瀬ヶ池で有名なあの美味しい高級プリン専門店で、好きなプリンを買ってあげるから…ね』

『♡』


詩織もそれで納得し、機嫌を治した様子…って単純すぎない?
っていうか…それが詩織の本当の狙い…?

するとアンナさんは左手首の内側…キラキラした高そうな腕時計をちらりと確認。

僕も同じように、店内の壁掛け時計を見た。


『そろそろ、戻ってくる時間だと思うのよね…』


そういえば、駅まで見送りに行ってから、もう1時間くらい経つ。
確かに、そろそろ帰ってきてもいい頃…。


『鈴ちゃんですよね。アンナさん』

『うん』

『…えっ?』


急に驚いた様子を見せる詩織。


『帰ったんじゃないの?鈴ちゃん。冴嶋社長を新井早瀬駅まで見送ってから…』


そんな詩織の一言を、アンナさんが軽く否定する。


『でも詩織…鈴ちゃんは美容院ここを出る前に《社長を駅まで見送りに》って言ってたのよ』


確かに。《行ってきます》って一言は《そのまま帰ります》の一言とは違って、またここへ戻ってくるっていう前提があっての言葉なんじゃないかと思う。

…なぁんて、鈴ちゃんのことを3人で話していたらタイミング良く、ひんやりとした湿った空気と、ザァァッと降り続いている外の雨音が、同時に美容院の玄関先から店内へと入ってきた。


『あの…すみません。ここへ戻ってくるの、遅くなってしまいました…』






『それで…私にお願いって…何かしら?』


そう鈴ちゃんにアンナさんは訊いた。


『私が詩織ちゃん達から、金魚ちゃんが実は男の子なんだって秘密と…そして、女装を始めたきっかけが《早瀬ヶ池の女の子たちに復讐するため》って聞いたってことも…アンナさんはもうご存知かと思いますが…』





















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