女装と復讐は街の華

女装と復讐 -完結編-

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まさか…今この場で『君がここで声掛けを始める前の去年、僕は先にここに立っていたんだ』とか『今、女の子の格好をしてるけど…本当は男なんだ』って…『同じように声掛けをしていた《メダカ》だから解るんだ』なんて、絶対に言えるわけがない…。


『信じてなんて言われても無理ぃ…』


ドジョウは冷めた表情で続けて言った。


『君みたいなめちゃくちゃ可愛くてね、生涯そういうことにも苦労することもないんだろう女の子に、こんな一生モテ期のない僕の気持ちなんて、解るわけないだろぉ…』

『でも…』


僕も君と同じ境遇を経験してきたんだ。だから君のことを本当に理解してあげられるのは、僕しかいないんだ！

…なんて真実を隠さなければならない…正直に言えないことが…本当に辛くて苦しい…。


『金魚を信じてあげて！今は何も説明できないけど…あなたの気持ちを理解してあげられるのは、本当に金魚しかいないの！お願い！』


彼は詩織の一言一言の強さと勢いに戸惑い、そしてまた黙り込んだ。


『…あなたは毎週毎週、来る日も来る日もずっとここに立って、ずっとずっと声掛けを頑張ってきたんだよね。努力したんだよね…』


ドジョウは驚きながら、大きくウンと頷いた。


『けどね…こんなこと言ってごめんね…』


僕は彼から視線を外し、俯いた…。


『…あなたの思ってた、その《努力》というのは、女の子たちからしたら…努力でもなんでもないの…』

『えぇぇ？』

『…女の子たちに、努力だって認めてはもらえない…』


彼の表情が強張って、またドジョウは怒りはじめた。


『誰が何と言おうと努力だろぉ！！僕は雨の日以外はずぅぅっと、ここに立ってきたんだぁ！！』


僕は…《瀬ヶ池のメダカ》はね…雨の日だって立っていたよ。ここに…。




僕らの周りに集まった瀬ヶ池の女の子たちは、今も僕らのそのやり取りを黙って見守ってくれてた…。

そして僕は、彼の怒りが収まるのを待たず、このまま語り続けた。


『もし、明日も…明後日もまた、ここに立って声掛けをするっていうのなら…』


僕は彼にニコッと笑顔を見せてあげた。


『…その時間を使って書店へ行って、好みの男性ファッション誌を買って研究したり…PARCOやアンプリエ内のメンズウェアのお店を訪ね回って、ディスプレイされているカッコいい男性服を見付けて購入したり…。そのほうが時間の使い方は凄く有効だって思うの…』


僕は詩織を見た。


『…ね？そうだよね。詩織』

『うん。そうね』


詩織も優しく柔らかく笑ってくれた。

僕らを囲む周りの女の子たちも、僕の意見にウンウンと頷いてくれてる。