女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -街華編-

page.289

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常識的に考えて『あなたの妹を追い詰めたいので、私たちに協力してください』なんて言って『はい。協力しましょう』って答える姉なんているだろうか?

普通はいないと思う。

それに『なぜ私の妹を追い詰めるの?』『追い詰めたい…追い詰めなければならない…って、その理由はなに?』と逆に訊かれたら、場合によっては僕の《復讐計画》や《金魚は実は女装した男だった》ってことも…全てを説明しなければならなくなる。

それが切っ掛けで、親友とも言えるほどの仲になってきた、鈴ちゃんと僕らとの友好関係に、二度と修復できないくらいの大きな亀裂が生じる危険性だって十分ある。

嫌だ…鈴ちゃんとそうなるのだけは…。




芸能人である姉・伊藤鈴ちゃんの《七光り》の恩恵を得て、鼻高々になっている丹羽彩乃。

彼女から、もしその《七光り》を奪い去ることができれば、僕らにとってかなり有利な展開を得ることができるはずなんだけど…。




《今、彩乃を追い詰められない理由》…それはもう1つあった。


『…それで、もう彼女とのLINEとかDMとかでのやり取りは、できるようになったの?』


今アンナさんが言った《彼女》っていうのは…樋口絵里佳のことだ。


『いえ、あの…すみません。まだです…』

『絵里佳ちゃん、あなたと同じ大学の同級生なんでしょ?だったら簡単にコンタクトとれるんじゃないの?彼女のために早くしてあげなさい』

『はい…頑張ります…』


アンナさんは樋口の《身の安全確保》のことまで考え、配慮していた。

今の現状のまま、僕らが彩乃を追い詰めれば、もちろん彩乃だって心身に苛立ちが溜まるはず。
その捌け口…というか、矛先というか八つ当たりというか…。樋口がそれの対象にされてしまうことは十分に考えられる。

何故なのか樋口は、彩乃のことを相当酷く恐れてる。しかも、重要な情報の全てを僕に教えてくれたのは、紛れもなく樋口だ。
そんなことを彩乃が知ったら、逆上して樋口に何を仕出かすか…想像さえもつかない。

僕も詩織も、どちらかと正直に言えば…樋口のことは嫌いだ。

でも、だからといって僕らの復讐のために《樋口1人を犠牲に晒したっていいじゃない》なんて考えだったら…僕らも、酷い彩乃と何も変わらない。

嫌いだけど…見捨てたり、見殺しにするのはまた違う。

彩乃への復讐を果たす前に、まず樋口の身の安全確保を…それがアンナさんの考え。


『…金魚』

『詩織。んもう分かった。分かったから』

『じゃあ、来週お願い…絵里佳ちゃんとのLINE交換』

『はぃ…』


























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