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女装と復讐 -街華編-
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翌週の月曜日の朝、僕は大学の大受講室の席に座っている。そして大きな窓から見える中庭をぼーっと眺めていた。
ふと気配を感じ、ちらりと振り向いた…居た。樋口絵里佳。
少し離れた席に座ってた樋口も、僕をじーっと見てる。
すると突然、樋口がゆっくりとこちらへと向かって席を移動してきた…?
『何?』
そう訊かれて、僕は少し慌てた。
『えっ!?いや…あの…』
『…。』
樋口はそれ以上何も言わず、ぷいっと僕から視線を外して、さっき座っていた席へとまた戻っていく。
「絵里佳ちゃーん」
その樋口の傍へと駆けてきて、隣に座った佐藤美希ちゃん。僕に『風邪が伝染ると悪いから、今後は話し掛けないで』と言った、この大学で有名な美人女学生のあの子だ。
…樋口は凄く変わった。金魚の初Kissを奪った《あの日》以来…。
今までの樋口なら、受講室内をバタバタと歩き、僕を見付けるなり僕の横に座って、あーだのこーだのと煩く文句を言いまくり、嵐が去ってゆくかのように、またバタバタと離れ去っていってたのに…。
今日の樋口は特に静かに颯爽と歩いてた。僕を見ても隣に座って絡もうともしなかったし、何より…今日は僕が初めて見る《樋口のポニーテール》…意外にも結構似合ってた。
それに、女の子と隣同士座ってる後ろ姿を見るのも初めて。
樋口の仲間っていったら、大学内でもちょっと有名な《ちょい悪男子学生ら》ばっかりだったから。
そういや…樋口が男子学生と連んでる姿も、樋口と斎藤とのツーショットも見ることも少なくなった…ってか、もう全然見てない。
あっ!また違う女の子が来て、樋口の隣に座った!
じゃ…この小さな封筒は、帰りのときにでも樋口に渡そう…。
…まだ空の明るい6月の夕暮れ。
樋口は佐藤美希ちゃんら女学生3人と笑い、お喋りしながら大学の正門を潜って出ていこうとしていた。
『樋口!』
樋口が冷めた表情で、ゆっくりと僕のほうを振り返った…あわわわ。
『…さん。あの…』
樋口と何らかの言葉を交わし、手を振りながら先に正門から出てゆく女学生たち。
『何?岩塚…つか、人前で私のことを気安く呼ぶな!このバカ!』
ひぃぃいぃ…。
正門に背を向け、僕の方へと歩き戻ってくる樋口。
『あ…あの、これ…樋口さんに渡してって…頼まれたから…』
『頼まれた?…って誰から?』
差し出された僕の手から、摘んでいた小さな赤い封筒をさっと取り上げ、開けて中の手紙を取り出して早速、目を通して読みはじめた樋口。
『岩塚…この手紙…ほ、本物!?』
『えっ?…あ、うん』
めちゃくちゃ驚いてる様子の樋口。驚きながらも少し嬉しそうにも見える。
『なんでお前が金魚ひ…金魚ちゃんから私への手紙を預かってきてるんだよ!』
『えぇと…たまたま…あの、新井早瀬駅の構内で…』
ふと気配を感じ、ちらりと振り向いた…居た。樋口絵里佳。
少し離れた席に座ってた樋口も、僕をじーっと見てる。
すると突然、樋口がゆっくりとこちらへと向かって席を移動してきた…?
『何?』
そう訊かれて、僕は少し慌てた。
『えっ!?いや…あの…』
『…。』
樋口はそれ以上何も言わず、ぷいっと僕から視線を外して、さっき座っていた席へとまた戻っていく。
「絵里佳ちゃーん」
その樋口の傍へと駆けてきて、隣に座った佐藤美希ちゃん。僕に『風邪が伝染ると悪いから、今後は話し掛けないで』と言った、この大学で有名な美人女学生のあの子だ。
…樋口は凄く変わった。金魚の初Kissを奪った《あの日》以来…。
今までの樋口なら、受講室内をバタバタと歩き、僕を見付けるなり僕の横に座って、あーだのこーだのと煩く文句を言いまくり、嵐が去ってゆくかのように、またバタバタと離れ去っていってたのに…。
今日の樋口は特に静かに颯爽と歩いてた。僕を見ても隣に座って絡もうともしなかったし、何より…今日は僕が初めて見る《樋口のポニーテール》…意外にも結構似合ってた。
それに、女の子と隣同士座ってる後ろ姿を見るのも初めて。
樋口の仲間っていったら、大学内でもちょっと有名な《ちょい悪男子学生ら》ばっかりだったから。
そういや…樋口が男子学生と連んでる姿も、樋口と斎藤とのツーショットも見ることも少なくなった…ってか、もう全然見てない。
あっ!また違う女の子が来て、樋口の隣に座った!
じゃ…この小さな封筒は、帰りのときにでも樋口に渡そう…。
…まだ空の明るい6月の夕暮れ。
樋口は佐藤美希ちゃんら女学生3人と笑い、お喋りしながら大学の正門を潜って出ていこうとしていた。
『樋口!』
樋口が冷めた表情で、ゆっくりと僕のほうを振り返った…あわわわ。
『…さん。あの…』
樋口と何らかの言葉を交わし、手を振りながら先に正門から出てゆく女学生たち。
『何?岩塚…つか、人前で私のことを気安く呼ぶな!このバカ!』
ひぃぃいぃ…。
正門に背を向け、僕の方へと歩き戻ってくる樋口。
『あ…あの、これ…樋口さんに渡してって…頼まれたから…』
『頼まれた?…って誰から?』
差し出された僕の手から、摘んでいた小さな赤い封筒をさっと取り上げ、開けて中の手紙を取り出して早速、目を通して読みはじめた樋口。
『岩塚…この手紙…ほ、本物!?』
『えっ?…あ、うん』
めちゃくちゃ驚いてる様子の樋口。驚きながらも少し嬉しそうにも見える。
『なんでお前が金魚ひ…金魚ちゃんから私への手紙を預かってきてるんだよ!』
『えぇと…たまたま…あの、新井早瀬駅の構内で…』
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