女装と復讐は街の華

女装と復讐 -躍動編-

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うーん。鈴ちゃんの言いたいことが、解ったような…まだ解らないような…僕も詩織も、そんな複雑な表情。


『…ごめんね。金魚ちゃんも詩織ちゃんも、私が何を言ってるか理解に苦しむでしょ…？』


『いえいえ…そんな…』
『なんとなく解ったぁ…た、たぶん…』


そして鈴ちゃんの語りは続く。


『彩はね…子どもの頃は今のように、色んな人の注目を集めるような子じゃなかったの。あまり目立たなくて、大人しい子だった…』


『なのに、全て私が原因なの…』そう言った鈴ちゃん…？
ますます話が難しく、そして複雑に…。


『あ…ごめんなさい。こんな話、つまらないよね…』

『ううん。私もっと聞きたい。彩乃ちゃんのこと』


詩織のその言葉に同意。僕も頷いた。
それで鈴ちゃんは少し静かに、黙ってしまったけど…意を決したかのように、自然とまた話しはじめた…。


『…私が《G.F.》デビューしたのは16歳のとき。そして芸能事務所《冴島プロダクション》にスカウトされ、加入所属したのは《G.F.》デビューから１年後くらい。そのときは彩は13歳…まだ中学一年生だった…』


鈴ちゃんが17歳のとき、妹の彩乃が13歳…ってことは、僕と詩織は鈴ちゃんよりも5歳年下だから…彩乃は僕らよりも１つ歳上。


『…彩は周りから《お姉ちゃん芸能人になったの！？》《お姉ちゃん凄いね！》《お姉ちゃん可愛いものね！》って、お姉ちゃんのことばかり言われるの…ってその頃は、彩がよく私に電話してきてた…』


なんだか本当に…語る鈴ちゃんの横顔が悲し気に見える…。


『…そして彩は、自分は人との関わりも消極的だし、姉の鈴と比べたら地味で、目立たない子なんだ…って、そんなことばかり気にし始めて…あの頃から彩は明るく積極的な子に自分自身を変えていった…。それを最初は《良かった》って、私も喜んだんだけど…』


人の輪の中で脚光を浴び、注目され目立った姉。対して人の輪の外で、人との関わりも消極的で地味だった妹。そんな妹が姉の影響で変わってゆく…って、なんかよくある話かも。


『彩は一言二言目には《私は伊藤鈴の妹よ！》《私はお姉ちゃんみたいな芸能人になるの！》って…瀬ヶ池の女の子たちの前で、遠慮なく豪語するようになったの…』


そして、鈴ちゃんは呟くように言った。


『私…その頃から彩には《人前では抑えて慎ましく、お淑やかでいなさい》って。そう懇々と言い聞かせてきたのに…』