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女装と復讐 -躍動編-
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僕はトイレの個室の壁に掛けていた白ワンピと折り畳みハンガーを取り、両方とも丁寧に畳んでボストンバッグの中へ入れた。
『よいしょ…と』
そしてバッグを左手に下げる。履いてきたブーツはバッグに入れると汚れるから、個室のドアロックを解除してから右手で摘むようにして持った。
コツコツコツ…。
黒い革靴のヒールの音を響かせながら一旦、洗面台の鏡壁の前に立ち、その姿を確認する。
…結構、雰囲気がガラッと変わったな。
開いた襟元…そこにチラリと見えるシルバーのチェーンネックレス…緩く締めた細い黒のネクタイ…捲ったシャツの右袖…そして黒のリストバンド…。
この髪型…ウルフレイヤーのミディアムショートが相まって、なんかほんとにカッコいいな。顔は可愛い女の子のそのままに、少しやんちゃぽく男装した金魚…。
だけど、僕の左耳にぶら下がる、僕の大切なお守り…赤姫と黒助くん。この2匹だけは何も変わってない。
ブーツを足元のタイル床に下ろし、右手の薬指で優しく触れてあげる。
「きゃあ~っ!!」
「えーっ!!?」
『!!?』
僕が慌てて振り向くと、僕の隣に…さっきは居なかった、初めて見る制服姿の3人の女の子たち。
『可愛いお姉さんの超イケメンコスプレ…凄くカッコいい!!』
『待って!つか…この可愛いイケメンお姉さん、あの超有名な金魚ちゃんだってば!!』
『うわぁ!ほんとだぁ!左耳に金魚のピアス…ほ、本物の金魚さんだぁ!!』
…え?…なにが…今…?
キャッキャと黄色い声援で、跳ねたり抱き合ったりしてる制服の子たち…。
『どこかのバンドのボーカルやってるんですかぁ!?』
『いやもぅ…どぉしよぉ!金魚さんがめっちゃカッコ良すぎて困るー♪』
『ちさと!どこかのボーカル?って、んなのこの格好見れば解るじゃん♪』
個室から出てきて…いきなりガンガン女の子に絡まれてる金魚…。
『ごめん…あのさ…まず静かにしてっ!』
『…。』
『…。』
『…。』
…え?黙って僕を見詰めてる3人の女の子。
意外と素直に聞いてくれた…良かった。
『あ…えっと…男装、カッコいいって褒めてくれて…ありがとう』
『きゃ~♪』
『お礼言われちゃった~♪』
『素敵すぎ~♪』
『……。』
この制服の女の子たち…脚をバタバタさせたり、抑えた声で小さく叫んで喜んだりして、勝手に盛り上がってる…。
ロックオン・ギブソン・ガールズ
『私たち、女の子4人でコスプレバンドやってるんです!ちなみに現役の高校2年生です!』
『あ!だけど、この制服はウチの学校の制服じゃなくて《ロック・オン・ガールズ!》っていうバンド女子漫画に出てくる女の子たちが着…』
『金魚さんは《ロック・オン・ガールズ!》って少女漫画知ってますか!?』
あー!もう!
この子たち3人が一度に話すと、誰がなに言ってんのか分かんないって!
『あの…私、みんなを待たせてるから。ごめんね…』
僕はまたブーツを右手で摘んで、急いでトイレを出た。
僕だって薄々、歌わされるんじゃ…ってのは予測してる。だけどそれを直接聞いたわけじゃない。まだ確定じゃないし。
だから今「ボーカルやってるんですか!?」なんて訊かれても僕、はっきりと答えられないって。
『よいしょ…と』
そしてバッグを左手に下げる。履いてきたブーツはバッグに入れると汚れるから、個室のドアロックを解除してから右手で摘むようにして持った。
コツコツコツ…。
黒い革靴のヒールの音を響かせながら一旦、洗面台の鏡壁の前に立ち、その姿を確認する。
…結構、雰囲気がガラッと変わったな。
開いた襟元…そこにチラリと見えるシルバーのチェーンネックレス…緩く締めた細い黒のネクタイ…捲ったシャツの右袖…そして黒のリストバンド…。
この髪型…ウルフレイヤーのミディアムショートが相まって、なんかほんとにカッコいいな。顔は可愛い女の子のそのままに、少しやんちゃぽく男装した金魚…。
だけど、僕の左耳にぶら下がる、僕の大切なお守り…赤姫と黒助くん。この2匹だけは何も変わってない。
ブーツを足元のタイル床に下ろし、右手の薬指で優しく触れてあげる。
「きゃあ~っ!!」
「えーっ!!?」
『!!?』
僕が慌てて振り向くと、僕の隣に…さっきは居なかった、初めて見る制服姿の3人の女の子たち。
『可愛いお姉さんの超イケメンコスプレ…凄くカッコいい!!』
『待って!つか…この可愛いイケメンお姉さん、あの超有名な金魚ちゃんだってば!!』
『うわぁ!ほんとだぁ!左耳に金魚のピアス…ほ、本物の金魚さんだぁ!!』
…え?…なにが…今…?
キャッキャと黄色い声援で、跳ねたり抱き合ったりしてる制服の子たち…。
『どこかのバンドのボーカルやってるんですかぁ!?』
『いやもぅ…どぉしよぉ!金魚さんがめっちゃカッコ良すぎて困るー♪』
『ちさと!どこかのボーカル?って、んなのこの格好見れば解るじゃん♪』
個室から出てきて…いきなりガンガン女の子に絡まれてる金魚…。
『ごめん…あのさ…まず静かにしてっ!』
『…。』
『…。』
『…。』
…え?黙って僕を見詰めてる3人の女の子。
意外と素直に聞いてくれた…良かった。
『あ…えっと…男装、カッコいいって褒めてくれて…ありがとう』
『きゃ~♪』
『お礼言われちゃった~♪』
『素敵すぎ~♪』
『……。』
この制服の女の子たち…脚をバタバタさせたり、抑えた声で小さく叫んで喜んだりして、勝手に盛り上がってる…。
ロックオン・ギブソン・ガールズ
『私たち、女の子4人でコスプレバンドやってるんです!ちなみに現役の高校2年生です!』
『あ!だけど、この制服はウチの学校の制服じゃなくて《ロック・オン・ガールズ!》っていうバンド女子漫画に出てくる女の子たちが着…』
『金魚さんは《ロック・オン・ガールズ!》って少女漫画知ってますか!?』
あー!もう!
この子たち3人が一度に話すと、誰がなに言ってんのか分かんないって!
『あの…私、みんなを待たせてるから。ごめんね…』
僕はまたブーツを右手で摘んで、急いでトイレを出た。
僕だって薄々、歌わされるんじゃ…ってのは予測してる。だけどそれを直接聞いたわけじゃない。まだ確定じゃないし。
だから今「ボーカルやってるんですか!?」なんて訊かれても僕、はっきりと答えられないって。
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