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女装と復讐 -発起編-
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そんなふうに、僕が秋良さんを尊敬の眼差しで見ていた時だ。
秋良さんが屈んでいた腰を慌ててピンと伸ばし、ジーパンのポケットからiPhoneを取り出した。
『あ…もしもし。アンナさん?あ、はい。秋良です…』
アンナさんから電話…?
『…じゃあ、ちょっと訊いてみますね』
秋良さんが、勝手に楽しんでる僕らのほうを見た。
『今、アンナさんからの電話なんだけどさ、もうすぐ詩織の撮影の順番なんだって。見学しに来るか?って。春華、金魚、どうする?行くか?』
へぇ…撮影風景の見学に行くか?行かないか?と訊かれれば、もちろん…。
午後2時53分…秋良さんの車は、早瀬ヶ池から見て南東方面に位置する、藤浦市尾久保区内の某所にある《笹川ビルディング》という屋上看板が掲げられた、見た感じあまり大きくない建物の地下駐車場へと滑り込んだ。
『このビルの3階が《藤浦市商業開発広告製作委員会》の撮影編集スタジオ兼、運営事務所らしいな』
藤浦市…商業…なんとか云々委員会?
なんか、難しい長い名前を今聞いた…何って?
『早瀬ヶ池の冊子なのに、作ってるのは別の区内なんですね』
『あぁ。ここは藤浦市から資金援助を貰っていろんな商業広告とか冊子を作って、それで運営してるらしいぜ』
…へぇ。
僕らは車から降り、コツコツと靴音を反響させながら、地下駐車場のエレベーターへと急ぎ乗り込み、春華さんが3階のスイッチを押した。
《3階です。ドアが開きます》
ピンポーン…。
ありきたりなアナウンスとともに、静かにエレベーターのドアが開く。
『!!』
その目の前の光景に、僕は一瞬後退った。
真っ直ぐに延びる狭い廊下。その両壁面に、ずうっと奥まで長椅子が向かい合うように置いてあり、そこにぎっしりと小綺麗な女の子たちが座っている。
誰が何の会話をしているのか判らないくらい、わーわーきゃーきゃーと、女の子たちのお喋り声が騒がしく飛び交っている。
『ちょっと!ねぇ見て!…あの子誰!?』
『えっ!?誰?』
『あんな子初めて見たー』
『え?私も見たことないし』
『知らなーい。私もー』
騒がしかった廊下が徐々に鎮まりはじめる。彼女たち全員の、刺さるような視線が僕らに集中してる…。
『こりゃまた、小生意気そうな娘らが集まっ…』
『しっ!秋良くん!彼女たちの目の前で、それ絶対に口にしないで!』
『…けっ』
秋良さんが女の子たちに目もくれず、さっさと歩き出す…続くように春華さん。
僕はやや下を向き、その後ろをそろそろと付いていく…。
『あぁーっ!!思い出した…あの子!《カラフル》で今噂の子じゃない!?』
『あっ!ほんとだー!確かに!』
『もうすぐ詩織ちゃんの撮影の番だし、間違いないよ!あの子、噂の子だぁ!』
『!!』
…うわぁ…女の子たちが、食い入るように見てたのは僕らじゃない…。
僕だ…。
秋良さんが屈んでいた腰を慌ててピンと伸ばし、ジーパンのポケットからiPhoneを取り出した。
『あ…もしもし。アンナさん?あ、はい。秋良です…』
アンナさんから電話…?
『…じゃあ、ちょっと訊いてみますね』
秋良さんが、勝手に楽しんでる僕らのほうを見た。
『今、アンナさんからの電話なんだけどさ、もうすぐ詩織の撮影の順番なんだって。見学しに来るか?って。春華、金魚、どうする?行くか?』
へぇ…撮影風景の見学に行くか?行かないか?と訊かれれば、もちろん…。
午後2時53分…秋良さんの車は、早瀬ヶ池から見て南東方面に位置する、藤浦市尾久保区内の某所にある《笹川ビルディング》という屋上看板が掲げられた、見た感じあまり大きくない建物の地下駐車場へと滑り込んだ。
『このビルの3階が《藤浦市商業開発広告製作委員会》の撮影編集スタジオ兼、運営事務所らしいな』
藤浦市…商業…なんとか云々委員会?
なんか、難しい長い名前を今聞いた…何って?
『早瀬ヶ池の冊子なのに、作ってるのは別の区内なんですね』
『あぁ。ここは藤浦市から資金援助を貰っていろんな商業広告とか冊子を作って、それで運営してるらしいぜ』
…へぇ。
僕らは車から降り、コツコツと靴音を反響させながら、地下駐車場のエレベーターへと急ぎ乗り込み、春華さんが3階のスイッチを押した。
《3階です。ドアが開きます》
ピンポーン…。
ありきたりなアナウンスとともに、静かにエレベーターのドアが開く。
『!!』
その目の前の光景に、僕は一瞬後退った。
真っ直ぐに延びる狭い廊下。その両壁面に、ずうっと奥まで長椅子が向かい合うように置いてあり、そこにぎっしりと小綺麗な女の子たちが座っている。
誰が何の会話をしているのか判らないくらい、わーわーきゃーきゃーと、女の子たちのお喋り声が騒がしく飛び交っている。
『ちょっと!ねぇ見て!…あの子誰!?』
『えっ!?誰?』
『あんな子初めて見たー』
『え?私も見たことないし』
『知らなーい。私もー』
騒がしかった廊下が徐々に鎮まりはじめる。彼女たち全員の、刺さるような視線が僕らに集中してる…。
『こりゃまた、小生意気そうな娘らが集まっ…』
『しっ!秋良くん!彼女たちの目の前で、それ絶対に口にしないで!』
『…けっ』
秋良さんが女の子たちに目もくれず、さっさと歩き出す…続くように春華さん。
僕はやや下を向き、その後ろをそろそろと付いていく…。
『あぁーっ!!思い出した…あの子!《カラフル》で今噂の子じゃない!?』
『あっ!ほんとだー!確かに!』
『もうすぐ詩織ちゃんの撮影の番だし、間違いないよ!あの子、噂の子だぁ!』
『!!』
…うわぁ…女の子たちが、食い入るように見てたのは僕らじゃない…。
僕だ…。
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