女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -発起編-

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『あー…ちょっとごめんね。また2人の真ん中に入れさせて』


春華さんがトイレから戻ってきた。また同じように僕の膝の上を跨ぎ越えて、跨ぎついでに僕の頭を撫でながら僕と詩織の間にきゅうっと強引に割り込む。


『春華さん!ちょっとこれ見てくださいよ!なんか凄く気になりません!?』


春華さんは座り直して『どれどれ…?』と、ノートパソコンの画面を覗き込んだ。


『おぉー♪詩織ちゃんと金魚ちゃんのツーショット写真じゃない!さっすがね。2人とも可愛いから盗撮されちゃったのね!凄い凄いっ♪』


…僕はまた黙って、2人のやり取りを静かに見ていた。



『春華さん違うってば!写真じゃなくて、こっちの書き込み!』


『えぇ?どれ?』
『…?』


『ここ!信じられない!』


『……。』
『……。』



書き込み文の一部を指差す詩織。
一瞬…僕も春華さんも言葉を失ってしまった…。





『なんで冒頭にいきなり【この写真の右の子、めっちゃ可愛くない?】なのよ!!』


『…。』
『…。』


『確かに、金魚が可愛いのは私も認めてる…』


『うん、まぁね。可愛いもんね。金魚ちゃん』
『……。』


『だけど、せめて書き始めぐらい気を遣って【左の子だってもちろん可愛いよ。だけど…】って書いてくれたっていいじゃない…!』


『……。』
『……。』




えっ?…き、気になるって…そこ!?
春華さんが、この冷ややかな空気を変えようと、会話の続きを切り出した。


『で…でさぁ、詩織ちゃん…それに対する他の書き込みとかは?ないの?』

『あ…そうですね。えぇっと…』


詩織は大きくまるくなった目を、もう一度ノートパソコンに戻し、そのスレッドの書き込みページを下へとスクロールさせて確認する…。



【あーほんとだーかわいいー】

【この右の子の服めっちゃ可愛い!この服のブランド?とかどこで買えるのかとかも情報あったら知りたいでぇす☆】

【右の子も可愛いとは思うけど、私は左の子のほうが可愛いって思うなぁ。私はどちらかって言えば左の子派】



情報…というより写真の見た目の、各個人の感想というか、有り難いことに《可愛い》という書き込みが多い。
しかし、書き込みを確認しながら読み下っていくと…ちらほらと《より確実な情報》も出てくる。



【この二人が今月の第一土曜日に、新井早瀬駅の駅前通りを並んで歩いてるのを見たわ。すぐに見て見ぬフリしたけど…】

【私もみた。よしくみ嘉久見大通りで。ふたりとも目立ってかわいかった。なんか二人の歩くすがたがドラマのワンシーン見たいにすっごくキレイだったからよく覚えてる】



結構よく見られてる…。って当たり前か。瀬ヶ池は他の子のお洒落に目を光らせる女の子たちの集まる街なんだから。
やっぱり《駅前通り》と《嘉久見大通り》を歩いていたという、その目撃情報が特に多い。


『ねぇ金魚、春華さん。この書き込みも…ほら。見て!』

『…ん?』





















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