女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -発起編-

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急に、詩織の表情に真剣みが増す。


『アンナさんに言われたから、これから私、あなたとは仲良くやっていくつもりだけど…』

『うん…けど?』

『一度や二度、私が優しくしたからって、誤解しないでよね』


…誤解?


『私にだって…ちゃんと付き合ってるカッコいい彼氏ぐらい…いるんだから』


…誤解…彼氏…あ!
そういうことか…。

そりゃ詩織に付き合ってる人ぐらいいるだろう…。時々、性格のキツい部分が表れるけど…なんだかんだ言っても、このスタイル…この顔だもんな。
可愛いか、可愛くないかで言ったら…間違いなく《詩織が凄く可愛い》《詩織は異性にモテるタイプ》なんだし…。

でも…そっかぁ。

詩織から出た《彼氏ぐらい》の一言に、僕はびっくりもしたし、少しがっかりもした…複雑。


『2人とも。お待たせ。じゃ、私の車で天郷大通りへ急ぎましょう』


そう言って、アンナさんが自分のクルマへと向かう…その最中も、美容院の駐車場にお客さまの車が1台入ってくる。
それに構わず、駐車場から出てきて一旦停まったアンナさんの車の後部座席に、僕と詩織はさっと乗った。






藤浦市黒羽区の天郷大通り。この大通りには飲食店のビルやその他の店舗雑居ビル、大型病院施設、各市営施設、中層複合ビルなどが立ち並んでいる。
更には《藤浦銀行・天郷本店》、その先には《JR黒羽駅》の駅ビルや《美波県庁》などもある。

黒羽インターチェンジを囲うように、縦横無尽にぐるぐると円を描く高速道路の上下線。そのまま天郷大通りの真ん中を真っ直ぐに、高速道路が延びている。

そんな天郷大通りの広い歩道の脇に、アンナさんはハザードランプを点滅させて車を停めた。


『あなたたち…いい?今日は、ここから真っ直ぐ歩いて…』


アンナさんは広い歩道の向こうを指差す。


『…あの《藤浦銀行・天郷本店》の曲がり角まで歩くの。今日はそれだけ』

『えぇーっ…それだけ?』


詩織が残念そうに言う。


『私、もっと歩きたい!アンナさーん』

『ダメよ。言うこと聞いて。詩織』


詩織が、もう一度大きく『え~っ…』と言ったあと…。


『信吾も、もっと歩きたいよね!』

『……。』


僕は大きく首を横に振った。あまりの緊張に…今にも気を失いそうな気分だった…。


『…じゃ、そういうことだから。2人とも行ってきて』

『仕方ないなぁ。んじゃ行こう。信吾』


詩織は後部座席のドアを開けて、車から降りようとした。


『待って…僕…駄目…行けないかも』

『…えっ!?』


『なんで?どうかしたの?』と詩織は優しく声を掛けながら、降りるのを止めて僕の隣に戻ってきてくれた。
そして後部座席のドアを、優しくパタンともう一度閉めた。


『…こんな短いミニスカートも初めてだし…それで人前を歩くのも初めて…もう、緊張が…』


詩織が僕の顔を覗き込む。


『信吾!…いい?私の目をよーく見て…』


『……うん』


詩織のぱっちりとした目が、どんどん僕の目の前に近づいてきた。互いに視線を合わせ…じっと見詰め合う…。
























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