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11:キャンパーの真実
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オアシスの村を出発したのは日暮れ前。
「真っ直ぐ北へ向かうより、東寄りに北上するのがお勧めよ」
「真っ直ぐだと何かあるのか?」
「逆。何もないのよ。北東に町があるの。私も一度しか行ったことないんだけど、結構大きな町よ」
おぉ! 砂漠の町かぁ。
「持って来た素材も、そこで買取して貰えば路銀になるわ」
「なるほど。んじゃ進路を北東に向けて出発!」
「三日かかるけどね」
さ、砂漠デカすぎ。
涼しいうちにある程度歩いて、冷え込みが厳しくなりはじめたらテントを広げて夜食を作る。
今夜は野菜炒めとカップラーメンにするかな。
「あ、これはお湯を注いで三分経つまで食べちゃダメだからね」
「三分? わ、分かったわ」
「我は百個所望する」
「無茶言うな。水はいくらでも出せるが、沸かすのに時間掛かるんだぞ」
「なら我のブレスで──」
「おいおいおいおい! ペットボトルが溶けてしまうだろっ」
沸かす以前の問題だ。
「三つで我慢しろ。ハムやるからさ」
「しょーゆ炙りを所望する」
注文が多いなぁ。
「はい、アイラのフォーク」
「う、うん。ありがとう。これ村から持って来たの?」
「そ。食器類は俺の分しかなかったからね」
オアシスの村でアイラ用の食器を譲って貰った。
クッカーやメスティンで調理する場合、そのまま食器として使えば荒い物も少なくて済む。
ただソロキャンプならいいが、二人だと皿を共有することになる。
そうしないために、お皿は必須だった。
ドラゴンにも大きめの平皿と深い皿とを貰った。
カップラーメンは深い方にどばどば入れて、あと子供が使うようなフォークを持たせれば上手に麺をすすり出す。
「んー、美味い! お湯を注いだだけだというのに、なかなかいい出汁が出ているではないか」
「ほんと。色も付いてるし、どうしてなの?」
「あー、容器の中に最初からスープの素になる粉末が入っているんだよ。お湯を注ぐことでそれが溶けて、味が付く仕組みだ」
「へぇ~、便利なものね」
アルミホイルをあるだけ伸ばして地面に敷く。
その上に適当な厚みに切ったハムを並べて、醤油を垂らしていった。
そこまでやればドラゴンがかるーくブレスで炙り、もしゃもしゃと食べ始めた。
俺とアイラの分も横から取っていく。
「む、我のハムだぞ」
「いやいや、俺のだから。ほら、新しいの出してやるから」
「ならば許そう」
追加のハムを並べ、それには醤油じゃなくてマヨネーズを乗せてみた。
ブレスで炙られると、表面に焦げ目が薄っすらとついて香ばしい香りを漂わせる。
「ほぉ、これは新しい調味料だな。ん!! これも美味いっ」
「マヨネーズだ。これも一枚もーらおっと。アイラ、半分食べるか?」
「え、あの……うん」
半分をアイラに。自分の分は割り箸にぶっ刺してかぶりつく。
あぁ、うめぇ。マヨネーズ万能だよなぁ。
「いつも思うんだけど、かぐらのそれってどうなってるの? どうして少量がどんどん出てくるのよ」
「どうなってるのか、かぁ」
「ふっ。娘よ、それはな、我が与えしマジックアイテムだ」
あ、なんかまたドラゴンが勝手なこと言いだした。
「我が古の時代に神から与えられた、無限にアイテムが補充される荷車でな。ただ条件が合って、最初に用意されていたものしか補充はされぬ」
あ、もっともらしいっていうか、ほぼそのままのことを話してるな。
でもこのまま適当に誤魔化し続けてていいものか。
途中までとはいえ、暫く旅を一緒にする訳だし。何かするたびに嘘をついていたら、そのうちボロが出そうだ。
異世界人であること、隠したほうがいいのは確かだ。
なにより神様の加護が付与されたカートやテントのこともな。
悪い奴に知られて盗まれでもしたら大変だ。
アイラはいい人間だと思う。
話すなら今だ。
町に到着してからだと、どこで誰に聞かれるかも分からないからな。
「あの、アイラ。実はさ──」
お茶を一口すすってから、俺はこの世界に来てからのことをアイラに伝えた。
「いせ……かい人」
「うん、そうなんだ。なんか俺みたいな人間のことを『迷い人』って言うらしい。アイラは知ってた?」
彼女は顔を左右に振る。
「当たり前だ。まぁ賢者と呼ばれるような者なら知っていようがな」
「でも『迷い人』って呼ばれてるってことは、他にも異世界人がいるってことよね?」
そう、言われてみると……そうか。迷い人って何も俺が初めてじゃないのかもな。
いや、むしろ結構いたり?
ドラゴンに視線を向けると──
「直接会ったことなどないが、知っているだけでも両手の指で数えられるぐらいはいただろう。この大陸だけでな」
「その人数だと、数百年にひとりとか、そんなレベルだろうなぁ」
「ぐははは。まぁそうだろうなぁ」
もっと多いのかなって思ったが、割と少なかった。
「私にそれを話したってのは、信じてくれているから?」
「うん。まぁそれもあるし、この先もずっと嘘をつき続けるのは面倒くさいなって思ってね。嘘に嘘を塗り重ねて、どっかで矛盾すること言いだしそうな気もするし」
「じゃ、じゃあ、あんたが話してくれた旅の話も全部嘘なの!?」
「あ……あれはその……ごめん。この世界を旅していたっていうより、旅を始めたばかりなんだ。あの時話したのは、俺の世界の景色だよ」
「あんたの……世界の景色……」
彼女は呟き、暫く何かを考えた後俺をじっと見つめた。
「じゃあかぐらも私と同じで、外の世界──魔瘴の森と砂漠以外を知らないのね」
「あ、そうなるな。うん、知らないね、俺も」
そう答えると、彼女は満面の笑みを浮かべた。
「誰にも言わない。絶対に。言えばかぐらが悪人に捕まっちゃうかもしれないもの。この世界の住人として、かぐらはちゃーんと守ってあげるわ」
「守って、か。あぁ、よろしく頼むよアイラ」
「我もおるんだがの」
「はいはい、よろしく頼むよドラゴン」
満天の星空の下、俺たちはこれから向かう新たな世界に思いを馳せた。
「真っ直ぐ北へ向かうより、東寄りに北上するのがお勧めよ」
「真っ直ぐだと何かあるのか?」
「逆。何もないのよ。北東に町があるの。私も一度しか行ったことないんだけど、結構大きな町よ」
おぉ! 砂漠の町かぁ。
「持って来た素材も、そこで買取して貰えば路銀になるわ」
「なるほど。んじゃ進路を北東に向けて出発!」
「三日かかるけどね」
さ、砂漠デカすぎ。
涼しいうちにある程度歩いて、冷え込みが厳しくなりはじめたらテントを広げて夜食を作る。
今夜は野菜炒めとカップラーメンにするかな。
「あ、これはお湯を注いで三分経つまで食べちゃダメだからね」
「三分? わ、分かったわ」
「我は百個所望する」
「無茶言うな。水はいくらでも出せるが、沸かすのに時間掛かるんだぞ」
「なら我のブレスで──」
「おいおいおいおい! ペットボトルが溶けてしまうだろっ」
沸かす以前の問題だ。
「三つで我慢しろ。ハムやるからさ」
「しょーゆ炙りを所望する」
注文が多いなぁ。
「はい、アイラのフォーク」
「う、うん。ありがとう。これ村から持って来たの?」
「そ。食器類は俺の分しかなかったからね」
オアシスの村でアイラ用の食器を譲って貰った。
クッカーやメスティンで調理する場合、そのまま食器として使えば荒い物も少なくて済む。
ただソロキャンプならいいが、二人だと皿を共有することになる。
そうしないために、お皿は必須だった。
ドラゴンにも大きめの平皿と深い皿とを貰った。
カップラーメンは深い方にどばどば入れて、あと子供が使うようなフォークを持たせれば上手に麺をすすり出す。
「んー、美味い! お湯を注いだだけだというのに、なかなかいい出汁が出ているではないか」
「ほんと。色も付いてるし、どうしてなの?」
「あー、容器の中に最初からスープの素になる粉末が入っているんだよ。お湯を注ぐことでそれが溶けて、味が付く仕組みだ」
「へぇ~、便利なものね」
アルミホイルをあるだけ伸ばして地面に敷く。
その上に適当な厚みに切ったハムを並べて、醤油を垂らしていった。
そこまでやればドラゴンがかるーくブレスで炙り、もしゃもしゃと食べ始めた。
俺とアイラの分も横から取っていく。
「む、我のハムだぞ」
「いやいや、俺のだから。ほら、新しいの出してやるから」
「ならば許そう」
追加のハムを並べ、それには醤油じゃなくてマヨネーズを乗せてみた。
ブレスで炙られると、表面に焦げ目が薄っすらとついて香ばしい香りを漂わせる。
「ほぉ、これは新しい調味料だな。ん!! これも美味いっ」
「マヨネーズだ。これも一枚もーらおっと。アイラ、半分食べるか?」
「え、あの……うん」
半分をアイラに。自分の分は割り箸にぶっ刺してかぶりつく。
あぁ、うめぇ。マヨネーズ万能だよなぁ。
「いつも思うんだけど、かぐらのそれってどうなってるの? どうして少量がどんどん出てくるのよ」
「どうなってるのか、かぁ」
「ふっ。娘よ、それはな、我が与えしマジックアイテムだ」
あ、なんかまたドラゴンが勝手なこと言いだした。
「我が古の時代に神から与えられた、無限にアイテムが補充される荷車でな。ただ条件が合って、最初に用意されていたものしか補充はされぬ」
あ、もっともらしいっていうか、ほぼそのままのことを話してるな。
でもこのまま適当に誤魔化し続けてていいものか。
途中までとはいえ、暫く旅を一緒にする訳だし。何かするたびに嘘をついていたら、そのうちボロが出そうだ。
異世界人であること、隠したほうがいいのは確かだ。
なにより神様の加護が付与されたカートやテントのこともな。
悪い奴に知られて盗まれでもしたら大変だ。
アイラはいい人間だと思う。
話すなら今だ。
町に到着してからだと、どこで誰に聞かれるかも分からないからな。
「あの、アイラ。実はさ──」
お茶を一口すすってから、俺はこの世界に来てからのことをアイラに伝えた。
「いせ……かい人」
「うん、そうなんだ。なんか俺みたいな人間のことを『迷い人』って言うらしい。アイラは知ってた?」
彼女は顔を左右に振る。
「当たり前だ。まぁ賢者と呼ばれるような者なら知っていようがな」
「でも『迷い人』って呼ばれてるってことは、他にも異世界人がいるってことよね?」
そう、言われてみると……そうか。迷い人って何も俺が初めてじゃないのかもな。
いや、むしろ結構いたり?
ドラゴンに視線を向けると──
「直接会ったことなどないが、知っているだけでも両手の指で数えられるぐらいはいただろう。この大陸だけでな」
「その人数だと、数百年にひとりとか、そんなレベルだろうなぁ」
「ぐははは。まぁそうだろうなぁ」
もっと多いのかなって思ったが、割と少なかった。
「私にそれを話したってのは、信じてくれているから?」
「うん。まぁそれもあるし、この先もずっと嘘をつき続けるのは面倒くさいなって思ってね。嘘に嘘を塗り重ねて、どっかで矛盾すること言いだしそうな気もするし」
「じゃ、じゃあ、あんたが話してくれた旅の話も全部嘘なの!?」
「あ……あれはその……ごめん。この世界を旅していたっていうより、旅を始めたばかりなんだ。あの時話したのは、俺の世界の景色だよ」
「あんたの……世界の景色……」
彼女は呟き、暫く何かを考えた後俺をじっと見つめた。
「じゃあかぐらも私と同じで、外の世界──魔瘴の森と砂漠以外を知らないのね」
「あ、そうなるな。うん、知らないね、俺も」
そう答えると、彼女は満面の笑みを浮かべた。
「誰にも言わない。絶対に。言えばかぐらが悪人に捕まっちゃうかもしれないもの。この世界の住人として、かぐらはちゃーんと守ってあげるわ」
「守って、か。あぁ、よろしく頼むよアイラ」
「我もおるんだがの」
「はいはい、よろしく頼むよドラゴン」
満天の星空の下、俺たちはこれから向かう新たな世界に思いを馳せた。
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