泡沫の欠片

ちーすけ

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踏み躙られてこそ花は香る

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指定時間13分過ぎて駆け込んできた駆郎君は、真っ青な顔で汗だくで、3歳児拓斗にメロメロな希更を見て、崩れ落ちた。
「あ、駆郎君。大丈夫?」
今現在も、希更は駆郎君の焦りは何のその。
結構な重量のある拓斗を抱き上げたまま、崩れ落ちた駆郎君に近づき、しゃがもうとしてしゃがめず、立ったまま見降ろして、そして思い出したかのように謝る。
「あの、ごめんなさい。心配かけたんだよね? あの、カエちゃんが大丈夫って言ってたんだけど?」
希更の咎めてくる視線には、笑うしかない。
「絶対に間に合わない指定時間で呼び出しただけ。思っていた以上に早かったね」
そう、こっちの渋滞事情考えれば車では間に合わない。
だからって、公共機関使い慣れてない駆郎君では猶更ドツボ。
まあ、間違いなく、メール見て慌てて車飛び乗って、イライラしながら来ただろう事は間違いない。
事故らなくてなによりです。
駆郎君は、相当必至だったみたいなので、ご愁傷様だけど。
だって、指定時間までに来なければ「姉の元に強制送還」と「今後接触禁止」で「希更がそれを理解するまで泣かせる」と送ったのだから。
案の定、希更が大好き駆郎君は、メールを見て誰かに相談する云々頭からすっぽ抜け、とにかく希更を一刻も早く助けねばで、真っ直ぐ突進してきた訳だ。
そして来てみれば、希更は幼児にメロメロふやけていたと。
そこに、私がいて先生がいて、タテのいる姿に力尽きている。
「拓斗、おいで」
「あい」
拓斗も大概人見知りしない上に、タテの息子だった。
構い倒されるのが大好きで、そして私のおっぱいが好き。
抱っこを言えば、メロメロな希更より私を取る。
希更、薄いからな。
希更から幼児を引き取り、手ぶらになった自分に一瞬寂しそうな顔をした希更だけど、項垂れて動かない駆郎君の前に一緒に座って背中を撫でる。
「ごめんね。心配かけたんだよね? びっくりしたんだよね? 本当にごめんね?」
「いや、希更ちゃんは、絶対に、悪くないよね」
ひっくい、声っすね。
怒ってます?
まあ、そうだろうね。
「駆郎君。早速、解放交渉と行こうじゃないか」
「今すぐ清牙呼びます」
「希更!」
慌てて言えば、希更は「ごめんね」と言いながら、駆郎君からスマホを奪う。
「あのね。心配かけて、迷惑かけてごめんね。でも、カエちゃん達のお話も聞いてあげて? 聞いてあげて、ダメだったらそれで良いから。それ以上は、私も、カエちゃんの事、本気で怒るから。聞くだけはお願い」
駆郎君から奪ったスマホを胸に抱いて、涙目で一生懸命なおネダリ希更に、駆郎君が早々に項垂れた。
「うん。聞くだけはするね。ここまで来たし」
最後、声、掠れてましたよ?
貴方、全然納得出来てないっすよね?
でも、希更がこれだけ一生懸命お願いしてる事を、無下にも出来ない、と。
「うん。じゃあ、飲み物用意するね。コーヒー飲む? それともお水とかの方が良い?」
「希更、取り敢えず駆郎君座らせて」
そこでニヤニヤ笑っているタテに拓斗を戻し、にこやかに見守っているようにも見えなくはない先生を見てから、用意されているポットからコーヒーとお水をそれぞれに置いてから座る。
駆郎君と希更の並び、反対側に、先生を真ん中にした私と拓斗inタテの席順で。
「駆郎君、久しぶり」
そう切り出した長谷監督に、駆郎君の対応は冷たかった。
「そう云うの良いんで、話して下さい。って云うか、要件はもう、理解出来ました」
流石、である。
まあ、このメンツ見れば、状況考えれば、それしかないよね。
「取り合えず、今あるラッシュ見てから、話聞いてほしいな」
「それ、話通り越してませんか?」
「うん。だけど、見て貰わないと、納得出来ないと、思うんだよね。口では説明出来ない。だから、曲が重要なんだし」
先生の笑顔で強引な言葉に、逃げ道はないと諦めたのか、座った時点で、ある程度は受け入れる予定だったのか、差し出されたパソコンを大人しく見る駆郎君。
「あ、それ、私も見たい」
タテ、お前は良いが、膝のは良くない。
「拓斗は預かる」
「流石に意味分かんないってば」
意味が分かったら怖いわ。
だが、許さん。
取り敢えず立ち上がったタテから拓斗を取り上げたら、胸元に顔押し付けてゴゾゴゾ動き始めた。
「希更に構われ過ぎて疲れたみたい」
「これですね」
そう言って先生は、何を聞かれるでもなく、ホイホイ、タテの荷物からタオルケットを持ってきてくれる。
優しいんだよ、基本。
偉ぶってないし、身軽だし、話も出来る。
なのに、作品への拘りと云うか、なんか、変人、なのだ。
そこが極まり過ぎて、無茶苦茶怖いし。
「つまり、そう云う話なんですね」
駆郎君、そう云うの良いから、黙って見て。
いや、黙られると自分の声とか聞こえてくるから、喋ってくれてても良いんだけどね。
先生の差し出す台本とラッシュ映像を交互に見ながら時間が過ぎていく。
拓斗は完全に寝てしまったので、プスプス寝息が可愛いなと、私は何をするでもなく水を飲む。
ぶっちゃけ、編集してない繋げただけの映像って、色々足りないので、やたら間延びして長い時間だけ無駄に食うんだけど、かなり静か。
これ見て音楽作らなければならない駆郎君も、この世界を歌わなければならないタテも真剣なのは分かる。
分かるんだけど、希更まで真剣に見ているのは何なのか?
ラッシュ映像って、実際もたついてて、見ていて楽しいもんじゃないんだけどな?
その上、内容が内容なので、希更には向かないと思われる。
なにしろ、私の旦那をミーが奪おうとして、私がブチ切れてミーを殺すような話な訳で。
とにかく長い。
映画よりはマシなんだけど、撮れてる部分だけなんだけど、見て、静かな時間が流れる中、なぜか、駆郎君は隣にいる希更に台本を渡した。
渡された希更はそれを受け取って、ゆっくり読み始める。
ナンナの、この空気?
「そして、コレなんですけどね」
そう言って出したのは一枚の紙。
先生がこねくりだした歌詞っぽい何か。
それをしばらく眺め、そしてそれはタテへと流す。
「どうですかね?」
にこやかな先生の言葉に、駆郎君は大きく溜息を吐いてから水を一気飲みして立ち上がる。
「トイレ行ってきます」
まあ、長かったしね。
「私も行く」
タテの言葉に、駆郎君は嫌そうに口を開いて、なぜか私まで睨むし。
「別に、清牙や事務所に連絡取ったりはしませんが?」
そんな指示まで、タテに出してないよ?
そこまでは疑っていないし。
席に着いた時点で、交渉開始。
後はお互いの境界線見極めでしょ?
「そう云う心配じゃなくて、私もしたいの。無駄にドキドキして、お水飲み過ぎたの」
そう言って連れだって出ていく2人を見送り、重くなった拓斗を抱えなおす。
その間にも、希更は黙って台本を読んでいる。
希更にとって、それの何が楽しいのか、理解出来ない。
希更にはそれ、面白いもんだとは思えないんだけどね?
「先生、どう思います?」
「あれは、もう落ちてます」
は?
あんなに嫌そうだったのに?
「楓君は分かってないんですよねぇ」
なにが?
そう思っていたら、流し読んでいたらしい希更が、台本をぱたんと閉じた。
そしてほーっと息を吐いて、冷たくなった、甘ったるいコーヒーを飲んでいる。
「希更君どうだった?」
優しい先生の声にハッと我に返ったのか、私を見て首を傾げる。
「カエちゃんが、可愛かった」
何が?
「そうなんだよね。僕もね、最初はそのつもりじゃなかったんだけど、楓君絶不調でね。もう、これしかないなって、なったんだよ」
本当に申し訳ありません。
撮影一回飛ばしましたしね。
その前から、ちょっとな部分でギリギリだったのではないかと思われます。
「でも、最後のアレはやっぱ怖い」
「ああ、そこは前の話のを無理やり繋いでるので、完成作品はもっと違いますよ」
「うん? どういうこと?」
「これは3部作なので、同じ役の人達を視点を変えて、3通りの話で完結させます。愛人を殺すところは前の話のモノを繋げてるので、妻が前半とは違う人だと思って下さい」
「ああ、そっか。じゃあ…あれ? どうなるの? カエちゃんがミーに殺されちゃう?」
「いや、そこは私がやっぱり殺す」
「こんな可愛いのに?」
「可愛くても、痴情の縺れは起きてしまえば、まあ、怖いですよね」
「希更ちゃんに余計なことは吹き込まないで下さい」
「ああ、だから、カエちゃん、二重人格っぽい事になってたんだ」
散々な意見を言いながら戻ってきた駆郎君とタテの2人は、席に座る。
駆郎君はやっぱり立ち上がってノートパソコンを避けてから、コーヒーポッドでコーヒーのお代わりを注いでからテーブルの真ん中に置き、思い出したようにミルクと砂糖を持ってきて、希更のカップに注いでミルクと砂糖まで入れてかき混ぜている。
それ以降は無視だけど。
自分の事は自分でやれと?
普通は、ここで一番偉い先生に気を遣うもんだと思うんだけど、ここに来るまでの経緯を考えれば致し方なく?
そして今度は、それに気付いた希更が立ち上がってコーヒーを注いで回り、にっこり笑って駆郎君を見て頭を撫でられている。
安定のイチャイチャぶりに、タテが口を開いた。
「駆郎って、ロリコンなの?」
「歌う以外は黙ってて下さい」
歌う以外を全否定されているタテ。
でも、駆郎君の中でも、タテの歌だけは評価されているって、事でもある。
それに不貞腐れて希更を見るタテは、相変わらず。
「きーちゃんには、拓斗あげようと思ったのに」
「いりません」
そこで駆郎君が答えるのは、何か違うんだけどね?
駆郎君は希更に差し出された紙を見てから、溜息を吐く。
「ちょっと言い回しと文字行と文字数流れが、アレですね」
「手直しは幾らでもどうぞ」
「俺は、歌詞、さっぱりなんですけど」
「舞人君に相談する?」
希更の言葉に、私の顔が引きつる。
「これ以上、清牙に漏れそうな危険は冒したくないかなぁ」
「セイちゃんに素直に言って、手伝って貰おうよ」
「無理」
「無理でしょうねぇ」
「奪われるからヤダ」
上から駆郎君に先生、タテの言葉である。
「駆郎君」
「清牙に黙っているのは、無理です」
「そこは何とか出来ない? ほら、聞かれない限り知らんふりするとかね」
「聞かれない限り答えないくらいなら、しても良いですけど、毎日のように、どこかの誰かが連絡返してこなくてイラついて、抜け出して誘拐する気満々ですが?」
清牙?
あんた、私好き過ぎないか?
「ちゃんと、メールは返してるよ」
「通話も食事も一切拒否してるから、相当怪しんでますよ」
だよねぇ。
そこまですれば、誰でも、なんかあると思うよね?
思うだろうけど、それ以上は無理!
「怪しんでいると云うかね。自分以外の誰に曲を頼んだと、怒ってるんだよね、清牙君」
穏やかに、結構物騒な事を言ってくる先生も、先生だと思うんですよ。
そう云う情報は早く下さい。
って言うか、やっぱ、そこまで勘付いていたか。
「次から楓君使わせないって、激オコでね」
先生、可愛い言葉使ってもダメですからね?
穏やかな口調で、貴方結構なアレですから。
「それで、カエちゃんぶちゅっといって、ブラ見せ半裸。結構Hな感じになってるよね。びっくり。カエちゃん、ここまでするんだって」
タテ、言葉はもっと取り繕え。
お前の年、考えろ?
お子様も居るからな。
「カエちゃんっぽくなくて、アレだけど、カエちゃんだからって思うと、ちょっと恥ずかしい?」
希更が恥ずかしがるところじゃないと思う。
普通、恥ずかしいのは私。
「それで、カエちゃんの旦那様役の人、今ミーが好きで、カエちゃん写真「希更!」」
慌てて遮ったがもう遅い。
目をキラキラさせたタテが素早く抱き着いてきた。
え?
瞬間移動?
「何ナニ? 写真って何がどうなってんの? 相手役と良い感じになっちゃた? とうとう、蜘蛛の巣破っちゃったの!?」
「ああ、それはまあ、誤解と云うかですね。事実無根ではないですが、違う話としてですね」
穏やかに先生がタテを落ち着かせようと余計な口を開き、唸る声が響いた。
「楓さん?」
うわぁ、駆郎君の目が、表情が氷です。
「ナニ、やったんですか?」
いや、ほら?
「私もイイ大人な訳でね」
「清牙にそんな話が通ると?」
ですよねぇ。
「ナニナニ? やっぱ修羅場っちゃうの!? 清牙と、相手誰?」
タテ。
お前、歌う以外、関心なさ過ぎ。
ドラマもっと見て感慨思え。
「疾風壮太さん」
希更の言葉に、タテの目から光が薄れる。
「うん? ソレ、壮太、なの?」
そして、今頃気付くか?
今までのラッシュ、普通に出てただろうに。
夫役でがっつりと。
「カエちゃんの事、散々ドブスだ鬼婆だって悪態ついてた、空き歯の壮太?」
「それだよ、それ」
「それと犯っちゃたの?」
「やってねぇ。ベロちゅーされただけ」
「ああ、撮影でもしてたじゃん。外でも、盛り上がっちゃった? なのに、貫通はさせなかったの? 勿体つけちゃダメでしょ」
「そう云うんじゃねぇってば」
「なのに、お外でベロちゅー。えっちぃ」
「違う」
「違わないですよね。写真撮られたんですよね?」
駆郎君の冷たい突込みに、居たたまれない。
「だから「言い訳は良いです」」
ぶった切られた。
「ただでさえ、曲の依頼はしない。契約超えている映像内容。加えての、スキャンダル写真。清牙が絶対にブチ切れる案件を、俺に押し付けて、どうしろと?」
えっと、その通りなんですけど、もっとこう…。
「駆郎君、やっぱダメ?」
希更が悲しそうに駆郎君を見て、駆郎君が一瞬怯む。
「あのね。カエちゃんが色々しちゃってごめんなさい。だけど、ミーも凄く頑張ってるし、カエちゃんのコレも、ちょっと、アレな内容でびっくりしたけど、カエちゃん可愛くて、頑張ってると思う。そこにね、知らない人が音楽付けるの、ちょっとヤダな。駆郎君の曲がイイ。これね、セイちゃんの曲じゃ、ないと思うんだよね」
「希更ちゃん」
「生意気な事言ってごめんなさい。でも、セイちゃんの曲ってこう…」
エロいしガチャガチャして叩き込んでる感が強い上に、歌詞も上から目線と云うかオラオラだからねぇ。
タテの声には合わんのだよ。
楽曲チャレンジで、無理を承知でタテ引っ張り出して歌わせた私が、言う事じゃないけどさぁ。
「可愛いカエちゃんのコレを、マユちゃんの声で歌うなら、駆郎君がイイ」
涙目の希更の言葉に、駆郎君が大きく溜息を吐いてから髪をかき混ぜて、先生の書いてきた紙を折りたたむ。
「希更ちゃん、手伝ってくれる?」
「うん!」
にこやかな希更の姿に、小さく笑って大きく溜息を吐いてから、ジト目で先生を見る駆郎君。
「歌詞も、このままじゃアレなんで、手を入れます。イイですね?」
「勿論。任せるよ」
受けた先生は、変わらずにこやかだ。
本当に、駆郎君がここまですんなり受けると、どの時点で思っていたのか謎なほど、落ち着いていらせられる。
嫌そうに、駆郎君は台本もデイバックに押し込む。
「何か指定は?」
「スローバラードが良いなぁ」
タテのニヤニヤ笑いに、駆郎君が眉間の皺を濃くする。
「あのね! オルゴールみたいな出だしがイイ!」
キラキラした希更の言葉には、駆郎君も笑顔だ。
「そっか。可愛いね。そうしようか」
「あとね、マユちゃん、本当に声、すんごく高いの! だから、綺麗に歌わせてあげて!」
「サビは上げ下げ難易度上げて行こうね」
その笑いはアレだね。
タテも不穏な空気を感じ取ったのか、顔が引きつっている。
「いや、下げなくてもイイから」
「カエちゃんの可愛いドラマの為ですよ」
黒い。
駆郎君が黒いけど、この話、引き受けてくれるのは、間違いないらしい。
「念の為にもう一度言いますが、清牙に聞かれたら答えますし、言い訳もしません。後はそちらでなんとかして下さい」
きっぱりはっきり言い切られた内容こそが、難題である。
「じゃあ、希更ちゃん帰ろうね」
そして当たり前に、希更を連れ帰ろうとしてる駆郎君に溜息が出る。
「いや、ここは良いからお仕事行って下さい」
打ち合せでも、音合わせでも。
「希更ちゃんをこれ以上、こんな危険区域に置いてはおけません」
どう云う意味、なんでしょうねぇ?
「美咲ちゃんが迎えに来てくれるから大丈夫」
「俺が大丈夫じゃないね。このまま戻ったら、清牙にある事ない事言っちゃいそう」
おいおい。
「希更ちゃん、一緒に帰って、このまま、曲作るの手伝ってくれるよね?」
「私は良いけど…」
そう言って私を見て、不安そうな希更の姿に項垂れた。
糞っ、ここで、競り負けるとは。
「希更、また、近い内に呼び出すから」
どうせ、曲の詰めとか色々確認出てくるだろうしな。
その後の、レコーディングもある訳で。
駆郎君への交渉事は、希更がいた方が話が早いし。
「うん。またね。マユちゃんも、監督さんも、またね」
にこやかに手を振ってから、思い出したようにこっちに来てから、眠る拓斗を見て頭を撫でる。
「忘れないでね。また会おうね」
それはもう嬉しそうな、だけど寂しそうな、お姉さんの姿に、オバチャンは成長を感じて感激ですよ。
「希更ちゃん、それも男だからね」
なんか言ってる、怪しい人がいるけど。
「たっ君が男の子なのは、知ってるよ」
「うん。帰ろう」
そう言って、希更を抱き上げるのは如何なものか。
「ちょっ、駆郎君!」
「ちょっとね、色々あり過ぎて、希更ちゃんを歩かせるのが、不安で仕方ないんだよ」
「意味が分かんない!」
「うん。俺も意味が分からないから、このまま帰ろうね」
そこまでの甘々な声が豹変。
「失礼します。出来たら、監督に連絡しますんで」
そのまま氷の表情で出て行ってしまわれた。
「駆郎君、良い顔するようになりましたねぇ」
監督が怖い事言ってます。
監督、清牙だけでなく駆郎君迄狙ってる模様。
私は知らない。
「真性だったら面白かったんだけど、アレ、無自覚だよね?」
マユラ?
ニヤニヤすんな?
「つつくなよ」
「子供同士ならともかく、相手が大人じゃ、シャレになんないじゃん」
お前の発言も大概、シャレになってないからな。
「先生、駆郎君に頼むのって、どのあたりから考えてたんですか?」
「最初からですよ」
すげぇ。
「希更の後押しがあったとはいえ、断られなくて良かったですね」
「まあ、別口も用意してたんですが、断られる事はないと、思っていましたので」
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「ですから、最初からです。楓君に立山さんのことお願いしようとした時、ですかねぇ」
本当の本当に、最初からじゃね?
「これで後は、楓君がこれ以上調子を崩さないでくれる事をお願いしたいですね」
そしてここで、ブーメランが来た。
「はい。鋭意努力いたします」
「清牙が邪魔しないとイイネ」
タテ、不吉な事を言うでない。
そんな私の心配が現実とならないよう、後は神頼みくらいしか思いつかない。
早く終わってくれないかな、この仕事。
色々が、面倒臭いんですけど?
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