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踏み躙られてこそ花は香る
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しおりを挟む本日はメンタル削られる、美凉華滅多刺しの日。
いや、まあ、濡れ場よりはマシなんですけどね。
あれ、ホント精神殺られる云々より、身が削られる気がしてならんし。
出来ればやりたくはないと云うか、本当に合わない。
今回は仕方がないと云うか、どうしようもない自業自得だった。
次は無いったら無い。
監督に無茶振りされない限り多分。
ここ迄無茶振りしてくるの、先生ぐらいだから大丈夫だ…と思いたい。
スタジオに入り、準備前に一通り挨拶しようとして、感じる視線に違和感がたっぷり。
「メグさん」
「昨日、ネットに一瞬上がって消えたみたいだね」
うわぁ。
やっぱ出たか。
つーかですね。
私と壮太の記事なんて、誰得なんですか?
「社長がコメントも出してたわよ」
「え?」
私、全く以って、聞いておりませんが?
私何もしないし、ほっとけって言ったよね?
え?
何かの意向とかあった訳?
「内容はまあ、場所が不適切だったかもしれないけど、お互い大人で、プライベートの事だし、そっとしておいて…みたいなものだったわよ」
それをわざわざ正式コメントにする、意味ってナニ?
「それねぇ、その後に、写真を百万で携帯毎買い叩かれたって騒いでる馬鹿が出て、被害届出す為の前振りらしいわ。今、また、その後の記事上がってるわよ」
聞き覚えのある声が聞こえ、スマホを振っている、間違いなく長身なのに、その華奢な立ち姿に目眩がする。
「ドレス着て、何するの?」
真っ青なイブニングドレスにブーツの、確りメイクのギナちゃんの芸能人オーラが半端ない。
今すぐステージ上がって歌うとか?
どこにステージが?
「今日は見学させていただきにまいりましたの」
それ、どこ口調?
いや、見学?
「え? 私これから、愛人滅多刺しにするんだけど?」
「うん。血しぶき躍るのかしら? 楽しみ」
いや、撮ってる間は色々工程とかあるし、只管の繰り返しになるし、楽しくないと思うよ?
出来上がり見た方が、断然楽しいと思うよ?
「狙ってきた?」
「どうせなら、刺激が欲しいでしょ。私の担当は、泥沼だし」
うん。
それ、ギナちゃんとこの得意分野だよね。
間違いなく、タテとの曲の対比が、どうしようもないレベルで襲い掛かる奴。
話題には持ってこいの煽りって、奴ですねぇ。
「今回とは、3章とは雰囲気変わってくるんだけど?」
「いいのよ。なんか、それ終わってからじゃ間に合いそうにないみたいだし? 私、これでも、ドラマ主題歌は、初めてなんですけど?」
あれ?
「アニメはねぇ。原作読めで大抵、終わるのよ」
ああ、まあ、そんなもんだよね。
「それで作った後に、この単語入れろとか、ぶっ飛ばしたくなるわよねぇ」
ああ、まあ、色々ありますわな。
「序に言うと、私、次の章に、初の、ドラマ出演なのよね。宜しく、ママ」
え?
ギナちゃん出てきたら、私も壮太も霞むんじゃね?
圧倒的に、画力で負けると思う。
ギナちゃんの圧倒的な華やかさに。
ドラマでは厚化粧は出来ないので、壮太も私も、どっこいどっこいで地味だし。
「聞いてない? 私、間男やるのよ」
間男って??
「お前の濡れ場があまりにもお粗末だから、数で補うんだよ」
ちょっと待てや!
「台本に、そう云う証言は合ったけど、カットはなかったよね?」
「今、渡された」
「先生!!」
いきなり参戦壮太の存在忘れて、先生に突進しようとして止まる。
先生の先に、ジト目の美凉華がいた。
「あら、ヤダ、面白い」
「うわぁ、アレは愛人だな」
男2人、面白がってねぇで助け…なくて良いから、ちょっと引け。
そう思っていたら、美凉華は私から後ろ…間違いなく壮太に視線を流し、ふにゃりと顔を緩め、そしてハッとなって、後ろにいた御園さんから台本をひったくっている。
「あ、美凉華に戻った」
「なに? あの子、バタバタ面白い事、1人でやってるんだけど?」
役者じゃないギナちゃんには、不思議な光景かもしれない。
まあ、あそこまで初心者で嵌まり込んで自分が振り回されているのは、結構珍しい方なんだろうけど。
「ちょいと、美凉華の機嫌とってくるわ」
そう言って壮太が歩いて行き、壮太に気が付いた美凉華の顔が豹変。
蕩けるように嬉しそうに頬を染め、そして頭を撫でる壮太の手にくにゃくにゃになっている。
「なんか、すんごい恋する乙女がいるわね」
「恋すると云うか、役に振り回されているド素人が、右往左往してるのを、面白がっている悪い男?」
「それとベロちゅーして、姪を煽ってるママも大概だけど?」
「あれは、そんなんじゃないって言うかですね」
「清牙と、明日会うんだけど、私ちょっと楽しみ」
ギナちゃん?
「私が死なない程度に頼みます」
それを聞いた以上、私は放映されるまで逃げ回るしかないし。
「やぁよ。こんな面白い事、早々ないじゃない。煽るに決まってるでしょ」
本当に私の周り、自己主張強過ぎる、勝手な人多過ぎない?
まあ、良いんだけど。
「ああ、それより、ママってELseedのファンなのよね?」
「うん」
「明後日、シークレットあるんだけど、行く?」
「マジで?」
嘘?
あの人達でもシークレットとかするの?
え?
「あら、良い反応。ついでだから、おめかしして行きましょうよ」
「いや、それはどうだろう?」
思わずメグさんを見れば、首を振られた。
「今日化粧して、明後日まですると、次の撮影でメイクが厳しいからダメよ」
「それ、なんだけどね。来週、撮影、飛ぶらしいわよ」
何で私の撮影飛ぶ話を、見学のギナちゃんが持ってくるのか?
「さっき、助監督さん? が、話してたんだけど、SPHYの事務所が今回の記事についてと、その脅迫についてで、契約の再確認がどうのとかで、止めに来たみたい」
うわぁぁあ。
「メグさん?」
「私は何も聞いてないわよ?」
いや、メグさんの所為だとか、そう云うつもりはないんですけど…。
何か仕掛けてる?
それも、健吾君までグルで?
「清牙が、なんかしてくると思います?」
「今はまだ、なんとも? 私も、最近あなたにつきっきりだもの」
ですよねぇ。
あれ?
「SPHYのメイクって今、どうなってるんです?」
フェスとかテレビとかあるよね?
私の撮影の時以外は、メグさんだろうけど、私の撮影と被ってる時は?
まあ、清牙は自分でやるし、駆郎君はメイクしない。
舞人君も、テレビ撮影の時以外はしない。
してもファンデくらいなので、清牙と同じく自分でやってしまう。
勿論メグさんがいれば、舞人君は素直に大人しく、やって貰っているんだけど。
「まあ、居なくても良いんだけど、一応ウチの子、行かせる様にしてるわ。その所為で、清牙がブチ切れ寸前らしいけど」
うわぁ。
そのメイクさんが、単純に可哀想。
お仕事だからメイクしなきゃいけないのに、来るな触るなって…ただでさえ今、清牙、絶好調で、不機嫌真っただ中だろうに。
「まあ、大丈夫よ。腕よりも、メンタル強いの選んどいたから」
それもどうなの?
腕無いのって、それこそ、清牙ブチ切れじゃね?
あいつ、使えないの、存在、全否定するじゃん。
「それそれ。なんか、清牙、この前のフェスの時、女の子に追い掛け回されて、ブチ切れて、帳に喧嘩売りに行って、そっちの社長があっちこっち走り回ってたわよ」
皆揃って、ナニやってんの?
「あの子には、清牙の事はほっとけって言ったんだけどねぇ。メンタル強過ぎるのよね」
それはどうなんです?
不機嫌清牙にグイグイ行くとか、勇者通り越して、メンヘラなのでは?
って言うか、ただでさえ機嫌最悪な清牙に追い打ちとか、恐ろし過ぎる。
不機嫌通り越して絶好調な、ご機嫌の悪さって、コト、だよね?
「私、本気で清牙に会いたくない。会えない? と、思うんですよ」
色々な、総合的な事由総決算で。
「まあ、撮影終わるまで逃げ回るのが正解よね」
後、1か月はかかると思うんだけど、大丈夫なのか?
そんな私に、にこやかに歩いてくる先生の笑顔が薄ら寒い。
「楓君。申し訳ありませんが、来週無くなりそうです。代替えで伸ばすにも、期限が迫ってるんですよ。今日も巻いて、3章にも入りますから。はい、コレ、手直し後の台本」
今ですか!?
今渡して今日、これからなんですか?
「ごめん、ギナちゃん。話相手は他の誰か見つけて。先生、出番まで集中しますんで、美凉華と壮太がやらかしても、私は関知不能です」
「ああ、まあ、取り敢えず、楓君の場面さえなんとかなれば、後は、撮り直しもしやすいので」
つまり、私にミスるなと?
無茶振りである。
慌てて楽屋に戻った私は悪くない。
そしてなんでか、私は、ELseedのシークレットライブ行きが、私不在で決定していたのは、私の所為じゃないと強く言いたい。
いや、まあ、本望だけどな!!
これだけ拗れていれば、清牙の怒りの油成分が増える事は、気にしても無駄なのである。
もう、開き直るしかないのです!
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