泡沫の欠片

ちーすけ

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怒涛の催事

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清牙だけでなく、皆着替えさせてからの、本日は3人揃ってのインタビュー。
雑誌とケーブルの方での取材があったらしい。
私らは隅っこで邪魔にならないようにそれらを大人しく眺め、チラチラ見られつつ、清牙が終わった途端、自分らのスタッフ以外さっさと追い出すし。
時々、出演者が挨拶に来るのを、舞人君が捌く。
清牙はなんでか、ウクレレを持って、眉間に皺を寄せている。
駆郎君は、安定のギター弄り。
その横には乙女希更が張り付いているが。
ミーと二人、隅っこでswitchで遊んでいたら、清牙が喚いた。
「ああああ、無理!!」
ウクレレ投げんなよと、舞人君が拾い上げ、歩いてきた清牙に抱き着かれる。
「暑いんだけど」
「柔い」
胸は揉むなと、手を叩き落してから頭を撫でる。
「どったの?」
「さっぱり浮かばねぇ」
ん?
「清牙さん、曲、作ってたんですか?」
まさか、こんなところで今?
そうミーが驚いた顔で言って見れば、耳元ででっかい溜息を吐かれた。
「だから、嫌だったんだよ」
珍しい。
嫌だって思ってる仕事、わざわざ受けたんだ…と見ていれば、舞人君が笑う。
「こいつが小学生の時? 出てたドラマでお世話になってたとかの監督に、頼まれたんだよ。ホラー映画の主題歌」
それって、結構でかい仕事なのでは?
「お目出度い?」
「ねぇよ。先生が拘り過ぎて、ラッシュも出来てねぇから、全然浮かばねぇ」
「年末上映予定なのにな」
ケラケラ笑う舞人君が軽過ぎる。
それ、大丈夫なの?
「ラッシュ終わってないって、撮影終わってないって事だよね? ホラーだと、CG組み合わせとか、間に合わないんじゃ?」
「ほぼほぼ終わってんのに、冒頭が気に入らねぇらしい」
それはまあ、拘るよね。
ホラーだし。
最初でこけたら、白けるだけだ。
見る気も失せる。
下手したら、その時点で見切り付けて、帰る客だって出てくる。
地上波で流す時はもう、最悪な結果にしかならないだろう。
誰も見ないだろう深夜枠で、一応録画はしてみたけれど、ものの5分と見ずにやっぱな…と削除されそうな作品にだけは、なりたくないだろうし。
ホラーの場合は特に、冒頭で、ナニカ引っ掛けなければ、お話にならない。
「一応、出来てるとこのラッシュは見てんだろ?」
舞人君の言葉にやっと剥がれた清牙が、パイプ椅子に座ってギシギシ言わせる。
「見たけど、なんか、全然、ホラーっぽくない」
「そらラッシュだし」
そこに、ちょんちょんと腕を掴んでくるミー。
「ラッシュってナニ?」
ああ、そうですよね。
「撮った映像をとりあえず繋げただけの奴。それを後で細かくカットしたり付け足したり、CGとか入れたり音入れして完成させんのよ。これが出来てないと映画にならない」
ホラーなら当然、CG有気なので、半年は前に終わってないと話にならない気がするんだけど?
それでも遅くない?
CGに2・3年かける映画だって、まあ、今は…だけど、無きにしも非ず?
「好きに作ってイイとか言われても、全く浮かばねぇ」
あらあら。
「主演の曽根桐矢、下手過ぎんだよっ」
こらこら、風評被害が出ちゃうでしょうが。
あんた、その主演の映画、歌うのよ?
なんとかしてもらわにゃイカン、応援する立場でしょうが。
実際、どうしようもなくても。
受けた以上はやっぱり、色々関係してくるし。
「それって『コソリ』ですよね? この間、映画館で紹介出てましたけど? あれ? まだ撮影終わってないんですか?」
素人ミーでも不安になる撮影具合。
ディザート出来てればねぇ。
普通は、ほぼほぼ完成してると、思うよね?
時々、勢いのソコだけは取り合えずって、結構、あるんだけど…。
本当に、期間、押し押しなんだねぇ。
最悪、何とかするとは思うんだけど…。
「清牙様も一応は焦らないと不味いよねぇ」
当然、映画公開前に、曲のPVまで上げてしまわなければならないし。
映画ないで前面に鳴らすなら、元音、絶対、必要だし。
まあ、PVだけなら、映画映像挟み込んでこいつら歌ってるの前面に出しとけば、体裁は取れるんだろうけど。
曲が出来なきゃ話にならん訳で。
「ホント、楓って上手かったんだな」
何が、だよ。
そう笑いながら、清牙の頭を撫でる。
「あの、本当に、大丈夫なんですか?」
ミーの心配げな顔に、舞人君が笑う。
「大丈夫大丈夫。出来てしまえば、うちは、自己完結で早いからな」
「アレンジャーとか、プロデューサー入れないの?」
「入れたら、清牙と駆郎がうるせぇのよ。余計長くなる」
「俺らは元々、自分達でやってきたんだよ。他はいらねぇ」
まあ、大手から睨まれてレコード会社から切られての、復活だからね。
復活までは、本当に、自分達で全てを何とかするしかなかった訳で。
自己完結していたからの強みなのか、弊害なのか。
自分達で、普通に完結出来てしまえる。
「基本は清牙で、駆郎がアレンジだな。俺は、此奴らの我の張り合いを宥めるのが仕事」
「後、清牙のぶっ壊れた日本語も修復してるよ」
そこで、混ざってきた駆郎君に、清牙が顔を顰める。
「日本語ムズカシイ」
突っ伏しながら、清牙が唸る。
「どっちか降りてこいってっ」
切実だわな。
曲か歌詞のキーポイントね。
それさえあれば…って状況なのは、分かるけど、ねぇ。
相当煮詰まってる。
「取り合えず、希更とゲーム対戦でもして、頭空っぽにしたら?」
「えぇぇ。私、駆郎君が良い」
「そっか。じゃあ、遊ぼうか」
駆郎君。
孫に激甘のお爺ちゃん化、してるよ?
「糞ッ、デレデレイチャイチャすんな!!」
あ、清牙逆切れ。
「なっ、違うもん! なにっ、なっ!」
あ、希更も切れた。
「セイちゃんのばかあああああ!!」
ぽかぽか清牙を殴りに行くあたり、怖いもの知らずが加速している模様。
そんな煮詰まった状態では何しても無駄と、皆でゲーム対戦。
まあ、私は見てるだけ。
そこに、やっと戻ってきたお世話係。
本日も、黒服引き連れて大量食料を運んできました。
買い出し行って、責任者行方不明?
止めて。
お世話係は清牙に張り付いていればイイと思う…と見つめれば、爽やかににっこり。
「清牙が、楓さんが食べないと心配してたんです。あの、清牙が」
清牙は確かに唯我独尊ではあるが、細かい…優しいのよ?
小言が煩いとも云うけど。
まあ、それ以上に、ウチの娘さん達が煩いんだけど。
「野菜デリあります」
「肉は?」
「当然あります」
次々に広げられる食料に、ああ、時間かかるな、コレ…と分かる。
種類が多い。
そして今回は、ジャンクではない模様。
どっかの有名店の特別テイクアウトっぽい感じ。
大食漢の我が儘猪王子がキレ散らかさないように、モチベーション維持の為にも、食事には気を遣っているらしい。
「希更ちゃん、このハンバーグ美味しそうだよね」
「駆郎君も食べる?」
「一緒に食べようか」
「うん」
安定のイチャイチャである。
「なんか寂しいんで、ミー。俺と、このステーキ分けようぜ」
「じゃあ、私、こっちの赤身の焼肉っぽいの食べますから、半分こします?」
そしてなぜか、舞人君とミーも仲良し。
いや、なぜかも何もないよね?
「では、私は他に仕事がありますので」
「だからっ、私に清牙の世話、押し付けるの止めませんか?」
皆で皆して、図った様に…それ以外なく、押し付けてるよね?
「楓さんだと、基本大人しいので、宜しくお願いします」
宜しくされたくないと唸るより先に、腰に伸びてくる手が上がるのを叩き落す。
「自分で食べろ」
今は、衣装じゃないじゃん。
汚れたら、普通に着替えろ。
「曲が浮かびそうな、気がしてきた」
絶対嘘だ。
「あーん」
どこの、でっかい子供だ?
そもそもが、育ち過ぎだろ!
そんな呆れている間に、腰をがっつり確保されている間に、お世話係代表が消えてしまう。
「胸揉みしだくぞ」
「清牙さん最低」
「セイちゃんのバカあっ!!」
吐き捨てて叫んぶ娘さん達に、お仲間が面倒臭いから、さっさと世話焼いてくれと無言の圧。
なぜに…と思わないでもないが…。
「本気で剥く」
恐ろしい断言に、溜息しか出てこない。
「大人しく座って下さい。お願いします」
力では到底敵わない以上、最終的には清牙の我が儘を聞くしかないのであった、まる。
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