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怒涛の催事
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しおりを挟む最終日ともなれば、朝一だろうが、熱気は凄い。
今日が見納めはっちゃけようぜと、最初から野太いコールの激しい事。
お約束とも言える程、開場には野郎しかいない。
私達女3人が目立つ目立つ。
始まる前から大騒ぎ。
流石に開始5分前はなかったが、結局は10分前くらいだった為、やっぱり会場最後尾。
前にいたオッサンやお兄さんが場所を開けようとしていたのを断り、本日は頭からの大鑑賞会。
清牙がご機嫌で最初からオラオラだったとか、駆郎君が珍しく、清牙押しのけて前のめりだったとか、いつもは2人を抑える筈の舞人君が走って、途中駆郎君が慌てて聞き慣れないアレンジ入れたとか、全部、下僕情報です。
終わってすぐ、会場駆け出していく若干名を覗き、リストバンドの兄ちゃん達が、なぜか大声で色々話しながら、会場をゆったりと移動しております。
その際に、妙な空間に守られたような囲いのような何かは、拘束移動ではないと信じたい。
そのまま会場出て直ぐに、黒服のお迎えがいましたが。
あなた方、朝一とは言え、炎天下、熱くないですか?
熱中症、大丈夫ですか?
そのままドナドナ問答無用。
私達を見慣れたスタッフが増えてきたのか、驚愕のイワクつきの視線はなく、チラリと見ただけでスルーされ、奴らのバックヤードに強制連行。
炎天下ってだけでなく、ぐっしょりずぶ濡れの清牙が、壮絶に、炭酸水ペットボトル舐めながら、溢れんばかりの色気で笑う。
「惚れたか?」
「特に」
絶対に、言わねぇ。
「ぶっ殺すぞ」
「駆郎君! あのねっ、すっごくね! カッコ良かったの」
乙女希更の全身ピンクの主張に、駆郎君も汗でずぶ濡れのまま笑う。
「ちょっと待って、汗臭いから」
「駆郎君ならいい」
「良くないってば」
笑ながら、近付いてくる希更の頭を撫でる駆郎君を見て、清牙が一言。
「普通、アレだろ?」
「力不足だったな」
舞人君の言葉に、両手ががっつり組み合った取っ組み合いが始まったが知らない。
1ステージ終わったばっかなのに、元気な事で。
「あの、皆さん、凄く…どうしよう。なんか、言葉が…」
言いたい言葉が上手く出てこないくらい興奮したらしいミーは私に抱き着き、それを見て清牙は大きく、わざとらしいまでに溜息を吐いた。
「ガキ共が可愛い」
「悪かったな。可愛げのない年増で」
そのまま、舞人君と駆郎君はセット関連なのか呼ばれ、楽しそうな清牙がちょいちょいと指で招く。
「楽しかったろ?」
楽しかった?との確認ではないところが、清牙らしい。
「セイちゃん、ライブの時のままのが良いよ」
希更、素直過ぎるな。
「ありがとうございます」
さっきまで、ステージにいた人の姿だからね。
ミーでも、下ネタ我が儘猪唯我独尊王子に、思う所はあったらしい。
顔艶華やか。
「俺は、この為に歌ってんの。あぁ、すっげぇ気持ちいイイ。やるよりいいわ」
椅子に身体預けてギシギシ言わせながら、幸せそうなのは宜しいんですがね?
「全部、台無しですが?」
「セックスかライブか選ぶなら、断然ライブとる」
気持ちは分かるが、言葉を選べ。
さっきまでキラキラ大興奮で、尊敬の眼差しで見ていたミーの目が死んでいる。
序に、一瞬何を言われたか分からなかった希更が、一瞬で真っ赤に。
「セイちゃんのバカああああ!」
ねぇ。
折角カッコ良くて綺麗で色っぽい、芸能人様様だったのにねぇ。
「は? 清牙何言ったの?」
慌てて戻ってきた駆郎君は、確り希更を確保してから…抱き上げてから、スタッフの方に戻っていった。
残された私とミーは、特にミーは、清牙を見て一言。
「清牙さん、歌以外は黙っていた方がカッコイイです」
「おまっ、結構言うな」
だよね。
希更がフレンドリー過ぎて、ミーが人見知り激しく見えるが、別にそこまで酷くはないのだ。
姉の方針なのか、言う時は結構言う。
まあ、完全に清牙に慣れて来たとも言うけど。
「そういう言い方、やっぱ、楓に似てる」
くすくす笑いながら飲料飲む清牙の色艶は壮絶、だけど。
そう、なのかね?
希更は結構、私に似てると常々感じているけど、ミーは見た目、完全姉ちゃんだからなぁ。
性格も、やっぱり、私とはかなり違うので、自己申告しなければ、血縁分かり難いと思う。
身近過ぎて分かり難いのかも、しれないけど。
「でも、おっぱいがなあ」
「最低」
きっぱりきっちり言い切ってから距離を取ったミーに、清牙は溜息。
「その顔で、そのおっぱいなら最高なのに」
本当に最低だな、清牙。
「…本当に、最低」
明らかにブスくれたミーは、舞人君の方へ行ってしまった。
「見事な振られ方だね」
「なんでだろうな? こんなにイイ男なのに、大体、最低って連絡取れなくなる」
お前、本気で言ってるんなら、只の阿保だけど?
「まあ、その後にも、絶対に無理って泣かれて連絡取れなくなるんだけどな」
何の話をしているのか、正直聞きたくねぇよ。
「どっかに、濡れ濡れなおっぱいデカ女落ちてねぇかなぁ」
「健吾君! 清牙がまた発情してる」
どこにいるか分からない、世話係代表を探せば、苦笑い浮かべた舞人君がブスくれたままのミーを連れて戻ってきた。
「トイレは止めとけ。目立つから」
どっこいどっこいな下劣発言に、ミーは私の方へと抱き着いてくる。
「皆、ライブ以外は黙っていた方が良いと思う」
まあ、その通りかもしれないけど、それじゃあ、面白味もない。
ライブで歌って演奏している時は死ぬほどカッコイイ。
人間性は下劣、下品。
そこから産まれる野卑で泥臭い音楽こそが、人にとって分かり易いんだろうし。
良いんじゃね?
視聴者として見ているだけなら。
「清牙、髪乾かして、化粧一旦落として着替えた方が良いよ」
汗でドロドロだし。
「んん。やって」
やるのは構わないんだけどね。
「シャツ脱いで汗拭け」
「見たいんか?」
「そのスケスケシャツに、機能性があるとでも?」
着てても脱いでも変わらんわ。
アホな清牙の頭を引っ張ったき、スタッフからタオルを受け取って顔に投げつければ、清牙が嫌そうに溜息を吐く。
「ここで希更なら、真っ赤なお顔するんだぜ」
そして駆郎君に怒鳴られるんだろうねと、脱いだシャツを受け取って新たなシャツを渡せば、また大きく溜息を吐かれた。
本当にお世話係、仕事して下さい。
私に押し付けないで下さい。
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