泡沫の欠片

ちーすけ

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怒涛の催事

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結論として、人気急上昇のSPHYが見慣れない女達を連れている。
小遣い稼ぎのチャーンスと、スマホカメラ向けたお馬鹿さんがいたらしい。
たまたま通りかかったらしい。
SPHYのブーススタッフではなく、フェススタッフが清牙にスマホカメラ向けた瞬間の、見られている感とささやかな音を感覚を、清牙が野生の本能できっちりかっちり聞き取って感じ取って、馬鹿を逃がさない為に瞬時に蹴倒した。
以前、喧嘩で蹴り飛ばしてホテルの壁に大穴な開けて、健吾君にしこたま怒られた経緯がある為、壁ではなく床に蹴り飛ばした清牙を褒めたらしい舞人君。
それ、何かが違うから。
暴力は良くないが、関係者が許可なくカメラを好き勝手に出演者に向けるのは、絶対に良くない。
当然それはダメですよ、刑事告訴賠償金が発生しますよって契約書がある筈なのに、これぐらいなら…ってやっちゃったらしいんだわ。
中には有名人様の使った後の割りばし持ち帰って転売しようとして、懲戒免職後に刑事告訴受けた馬鹿とかもいるらしいしね。
イベントによっては、スマホ全面禁止でトランシーバー限定で動くってのも、当然ある。
スマホ使うには全部登録の台数制限かけて、徹底管理ってのもある。
だけど、今回は地元フェスって事でボランティアも多い為、トランシーバーの数も足らないし、保全保安保証の観点から、徹底管理なんてしてられるかって事で、各自のスマホ登録で動いていたらしい…んだけどね。
やっぱ、各自のスマホ活用だと、どうしても、こういったお馬鹿さんは出てくるのだ。
参加に際しで交わした契約書を、舐めてる奴は結構いる。
見聞きした情報を外部の漏らさない。
許可なく撮影記録を行わない。
物を勝手に持ち出さない。
まあ、日本だから、損害賠償はそんなに高額にはならないだろうけど。
小遣い稼ぎのつもりでやった行為が後にどう響くやら。
まともな就職は出来ないだろうねぇとは、誰も教えてやらなかったのか。
まあ、教えられる前に自分で気付いてほしいものだけど。
雑事増やすなと唸りつつ歩いて行った、憔悴しきったマー君が、あの後寝れたかどうかは知らない。
ただ、関係各所の責任者呼びつけの緊急ミーティングに、ご機嫌斜めの清牙に拍車がかかり、尚且つ、念の為の安全措置とやらで、ブッフェが一時閉鎖。
ブッフェがどうのじゃなくて、ブッフェ会場を関係者ミーティングに使われた為、食事に使うどころじゃなかったらしい。
腹減り清牙の為に大量に差し入れされたジャンクフードの数々。
健吾君ご苦労様である。
そして、安全の為にと良く分からない理由で、SPHYの豪華部屋に拘束された私達。
何かあった時、まとまっていた方が手っ取り早い…その言い分は分かるが、寝室3つあるからって、同部屋はない。
寝る間際まで揉めに揉めた部屋割り。
別に、私ら3人一緒で、そっちで適当に別れなよって話は、なかなか通らなかった。
なぜなら、駆郎君が無駄に荷物が多すぎて、同居が難しかったから。
そして、一つはダブルベッドで、残りがシングル二つ。
その一番広いダブルベッドを独占していたのは駆郎君。
意外や意外、寝るだけならどうでもイイ清牙は、広さに拘りはなかった模様。
それぞれが、男と同衾は嫌だと激しく唸っていたが、どう考えても、ダブルベッドに私ら3人が寝る方が建設的である。
って言うか、それ以外の選択肢は有り得ない。
簡易ベッド入れて貰えば良いだけの話だし。
結果、ダブルベッドを使っていた、荷物が多くて寝相もあまり良くない駆郎君が、誰と一緒になるかで揉めた模様。
結局、清牙と舞人君が同衾…じゃなかった、同室になったらしい。
勿論、簡易ベッドを入れて、だけど。
清牙は最後まで、やる相手でもないし、舞人君は趣味ではないとぼやいていたが。
駆郎君と舞人君2人係で沈められた。
そして朝一、責任者緊急会議で、もう一度契約を見直し徹底指導となり、ました?
こんなバカなことは起こしません?
まあ、昨日の今日だし、もう大丈夫なんじゃね?とばかりに、健吾君の爽やか笑顔に寝ぼけ眼で説明されても、意味が、上手く伝わらない。
まあ、とりあえずは、大丈夫なんじゃないかと、朝も早よから連行です。
朝御飯は普通にブッフェ使えました。
昨日の晩御飯がどうなったかは知らんけど。
清牙水準で用意されていたら…とかは考えたくありません。
そんなこんなで、今日こそは逃がさんと、壮絶に笑う清牙と、にこやかに希更を拘束して…拘束されて嬉しそうな希更をエスコートする駆郎君に、逃げ場はなかった。
流石に、今日逃げる気はないよ?
だがしかし、SPHYは朝一とラストの2回。
その間、私らずっと拘束とか辛過ぎません?
若干一人、ソレでも良さそうな乙女がいるが、私はごめん被りたい。
何よりも、だ。
「ライブは会場でこそ、でしょうが」
「お前、昨日の今日だぞ?」
「絶対に嫌」
関係者ではない…まあ、現状若干、関係者に寄っている感は否めないけれど、ライブ楽しむなら会場真っただ中で、正面からじゃないと、面白くない。
「逃げない、巻き込まれない、保証なんてないでしょ?」
駆郎君が黒い。
っていうか、ウチの下の娘拘束したまま言わないでくれますかね?
猫の子じゃないので、顎下撫でてもゴロゴロは…言ってないよね?
ちょっと怪しい。
「朝一のあんたらのライブ、下僕の黒ミサみたいなもんでしょうが」
大半がSPHY教の熱狂信者なので、あまりおかしなことにはならない筈。
これが他のライブに行くとかなら、私も考えた。
ご機嫌斜めな清牙や駆郎君の宥める方法とか色々、何かしらあっただろう。
ただ、目と鼻の先のブース近くの会場で、隅っこでただ普通に見て聴くだけなら問題あるまい。
例え、身バレしていても。
いや、身バレしているからこそ、下僕達は私達に優しいのである。
不審人物回収して行ったり、お昼の行列の順番譲ってくれたり。
「特等席」
「絶対に嫌」
袖もそうだけど、最前列とか、見にくいのじゃ。
ファン心理何ぞ色々あるだろうが、私は離れた所から俯瞰的に見たい。
実際、顔なら飽きるほど間近で見ているのでな。
近場でどうしても見て聴きたい、熱意も興奮もないし。
「舞台袖の方が近いよ?」
「横から見るより、前から見た方がよく見えるよ。角度によっては顔すら見えんよ」
駆郎君お言葉に被せれば、にこやかに見詰められた。
希更から落とそうなんざ、十年早いわ。
こっちの方が、情報蓄積量は多いのじゃ。
「護衛、付けましょう」
健吾君?
どうしてそうなるのかな?
ただでさえ身バレしてるのに、目立ちまくりじゃないですか?
どうしてくれようかと思っていたら、大欠伸をした清牙が、首をコキコキ鳴らす。
「別に、俺らのライブにいるんなら良いだろ。なにかあれば、とっ捕まえればいいんだし」
ちょっとナニ、怖い事言ってるんですか?
あなた、ライブ中にステージから飛び降りる気ですか?
「まあ、何もなければそのまま終わる訳だし、良いんでねぇの?」
舞人君?
それ、助けになってないよ?
「何も、起こらないと良いですね」
にこやかな駆郎君が怖い。
ここは、色々我慢して、袖に移動かと考えていたら、ミーが声を上げる。
「私、正面から真っ直ぐ、普通に見たいです。今までちゃんと、SPHYの歌、聴いたことなかったし」
大半の人間が、テレビで見るか、アニメやドラマ音楽の流れで聞いたぐらいだと思うよ。
まあ、SPHYの場合、生ライブ自体が、そうそう、ないよね。
いや、話によると、ライブ回数は多い方だ。
だがしかし、歌ってる会場が狭い。
清牙の拘りと云うか、SPHYの拘りで、客席が近いの、大好きだから。
近場で皆でワーワーやるのが楽しいらしい。
レコード会社に切られての、一時期の全国行脚でさえ、チケットが即完売。
今も昔も、下僕達に独占され、なかなか見れなかったって話。
今はまあ有名になったとはいえ、売れ出して1年程。
ライブ大好き清牙もいるので、相変わらず数はそこそこ熟しているが、忙し過ぎて、全国行脚の時程のペースは保てない。
その上、有名になっても、近い方が良いと我が儘こねる3人の為に、さほど大きな会場では歌ってない。
なので、集客人数の関係で、どうしても倍率が鬼。
当然、有名になってしまった現在は、清牙の嫌がる歌以外の仕事割合が無駄に多い。
その合間の移動時間って縛りにより、都心近郊以外でのライブは本当に限られる。
ライブ以外では某スーパーにちょくちょく出現はしているのだが。
どうしても、メディア通さない露出は低い。
テレビもいいけど、やっぱり、ライブが良いしなぁ。
そこに、乙女モード希更の発言。
「昨日、ちょっとしか、見れなかったし、ちゃんと見たいな」
「うん。今日は最初っから最後まで見てね」
駆郎君、どうしてそこで、私を見るの?
いや、まあ、QEENBEのライブ見たかったのは私だけどさぁ。
今日見るから良いじゃん。
「昨日と曲目違うんだけどな」
舞人君、余計な事言わない!
「聴いて溺れろ。他なんざどうでもよくなる」
清牙の鼻高々な言葉に、笑いが出る。
相変わらずな我が儘猪王子様です事。
「ただし、移動は開始5分前だ」
「なにもかも台無しだよ!!」
余裕なさ過ぎである。
瞬間移動でもしろってか?
会場塞がってないか、ソレ?
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投稿は毎週水曜日と土曜日と日曜日になります。
今更ですが、不定期に、予告報告なく、先の話との帳尻合わせで投稿分も改稿します。
現在11章書いてますが、壊変になったらごめんなさい。
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