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隙間空いちゃったから
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数十年が経ったけど、結局葉月は誰とも一緒にならずに最後を迎えた。
嬉しいのか分からなかった。だって、もし俺が別の人と幸せになってって言っていたらこうならなかったかもしれないのに。
葉月が得るはずの幸せを奪ってしまったかもしれない罪悪感があった。
死んでからここに来るまで一ヶ月。
一ヶ月間のうちに言いたいことを考えて言えるようににしないと!
最後まで俺を選んでくれたんだから、好きって伝えたい。
一ヶ月間、練習しよう。ここには他にも待ってる人がいるから、練習に付き合ってもらおう。
いつも、葉月との惚気を聞いてくれる島橋さんに付き合ってもらおう。
島橋さんも年下の彼氏を残して亡くなってしまったらしい。年下の彼氏はイケメンで優しくて、かっこいいらしい。
いつも惚気を聞かされる。まあ、俺も葉月の話してるから同じようなものだけど。
「島橋さん。あの、彼氏に好きって言う練習したくて」
「いいよ!ずっと伝えたいって言ってたもんね!頑張ろ!」
「ありがとう」
「じゃあ、早速、練習しちゃおうか!」
「一ヶ月間よろしくお願いします」
「僕を彼氏さんだと思って!」
「はづき、すき」
「言えてるじゃん!」
「でも、本番は分かんないんだよね」
「そうだよね。本当に極限ツンデレだもんね」
「葉月の前だけなんだよね」
「ツンデレは可愛いって思ってたけど、ここまで拗らせてると行き過ぎだよね」
「本当だよね。でも、次会ったら言うって決めてるから大丈夫だと思いたい」
「好き。愛してる」
「おぉー!愛してるも言えたじゃん。来るのって明日だよね」
「うん。じゃあ、最後にもう一回、お願いします」
「うん!」
「すき、愛してる」
「は?」
聞いたことのある声、ずっと聞きたかった声。会いたかった声だ。やっぱり、好きだ。こんなにも、まだ好きだ。何十年経っても変わらないよ。
「葉月?」
声は震えていて、涙がでそうだった。
ゆっくり振り向くと、怒った顔をしている。
「僕がいない間にこんな所で浮気?待っててくれたんじゃないの?」
「待ってなんかないし!」
やっと、会えたのに、嬉しいのに素直になれない。
「それは置いといて浮気の事は?」
「してないし」
「僕にでさえ言ってくれなかったのに、そいつには言うんだ」
「あの、ごめんなさい。これは谷より海より、深い事情があって」
「部外者は黙ってください」
「葉月、あのね、練習したくて」
「何を?」
怒ってる。この怒りかたはやばい。
早く言わないと。葉月が一番好きだって。
「葉月に言いたくて」
「そういうこと?」
「そういうことです!浮気なんて滅相もない!大体、僕、彼氏いますし!」
「よかった」
「何を勘違いしたんだか知らないけど、別に俺が言いたくて言ったわけじゃないから!島橋さんに言えって言われただけだから」
「えぇ、僕のせい?でも、彼氏さん、安心してください。優雨くん、毎日、ずーっと彼氏さんのこと見てたし、話すのは彼氏さんのことだけでしたから!」
なんて事を言うんだ!
島橋さんのせいにした僕が百、悪いけどそれをバラすのは違うじゃん。
「そうなの?優雨」
「他に見る人なんていなかっただけだし」
「そっか。ごめんね。島橋さん」
「いえ、じゃあ僕はこれで」
島橋さんはすごい速さでどこかに行ってしまった。
「ごめんね。遅くて、寂しくなかった?」
「全然、もっと遅くてもよかった」
十分、長生きしてたけど俺はどんなに遅くてもよかった。
「そっか。葉月、約束覚えてる?」
「ほとんど忘れちゃった」
嘘だよ。ずっと一緒にいるよ。
「でも、守ってくれるよね」
「覚えてる限りはね」
全然覚えてるし、破る気はないし、破れる気がしない。
「なら、大丈夫だね」
好きって言いたい。今なら、言えるかな。
「は、はづき、あのね」
「うん」
「すき間が空いたから」
何を言ってるんだ俺は、隙間が空いたってなんだよ。周りくどい。
「うん」
「何話していいか分からない」
分からなくないでしょ。好きって言うだけでいいのに。愛してるって言えばいいのに。
「じゃあ僕が言いたいこと言うね。
待っててくれて、ありがとう。優雨、来世もよろしくね」
うんって言え、俺!ここで言わなかったらいつ言うんだよ。
「うん」
言えた。やっと素直になれた。
涙が止まらない。だって、凄く待たせてしまった。それなのに好きでいてくれて、愛してくれて、来世も約束してくれた。
好きも大好きも言いたい。
「優雨、泣かないで。ずっと一緒にいれるんだから」
「泣いてない。泣いてるのは葉月じゃん。俺こそ待たせてごめん」
俺だけを選んでくれて、ありがとう。
本当は嬉しいよ。
「愛してるよ。優雨、言ってくれてありがとうね」
泣くほど言って欲しかったのかなぁ。
やっぱり、死ぬ前に一度でいいから言えば良かった。うんって言えば良かったなぁ。そしたら、葉月が毎晩泣くこともなかったかもしれないのに。こんなに愛してくれてるのに、俺はまだ何も返せてないよ。だって、うんって言っただけで伝えられてない。
だから、言えるまで待っててね。
絶対に言うから、来世もよろしくね。
「待っててね」
「うん。いつまでも」
嬉しいのか分からなかった。だって、もし俺が別の人と幸せになってって言っていたらこうならなかったかもしれないのに。
葉月が得るはずの幸せを奪ってしまったかもしれない罪悪感があった。
死んでからここに来るまで一ヶ月。
一ヶ月間のうちに言いたいことを考えて言えるようににしないと!
最後まで俺を選んでくれたんだから、好きって伝えたい。
一ヶ月間、練習しよう。ここには他にも待ってる人がいるから、練習に付き合ってもらおう。
いつも、葉月との惚気を聞いてくれる島橋さんに付き合ってもらおう。
島橋さんも年下の彼氏を残して亡くなってしまったらしい。年下の彼氏はイケメンで優しくて、かっこいいらしい。
いつも惚気を聞かされる。まあ、俺も葉月の話してるから同じようなものだけど。
「島橋さん。あの、彼氏に好きって言う練習したくて」
「いいよ!ずっと伝えたいって言ってたもんね!頑張ろ!」
「ありがとう」
「じゃあ、早速、練習しちゃおうか!」
「一ヶ月間よろしくお願いします」
「僕を彼氏さんだと思って!」
「はづき、すき」
「言えてるじゃん!」
「でも、本番は分かんないんだよね」
「そうだよね。本当に極限ツンデレだもんね」
「葉月の前だけなんだよね」
「ツンデレは可愛いって思ってたけど、ここまで拗らせてると行き過ぎだよね」
「本当だよね。でも、次会ったら言うって決めてるから大丈夫だと思いたい」
「好き。愛してる」
「おぉー!愛してるも言えたじゃん。来るのって明日だよね」
「うん。じゃあ、最後にもう一回、お願いします」
「うん!」
「すき、愛してる」
「は?」
聞いたことのある声、ずっと聞きたかった声。会いたかった声だ。やっぱり、好きだ。こんなにも、まだ好きだ。何十年経っても変わらないよ。
「葉月?」
声は震えていて、涙がでそうだった。
ゆっくり振り向くと、怒った顔をしている。
「僕がいない間にこんな所で浮気?待っててくれたんじゃないの?」
「待ってなんかないし!」
やっと、会えたのに、嬉しいのに素直になれない。
「それは置いといて浮気の事は?」
「してないし」
「僕にでさえ言ってくれなかったのに、そいつには言うんだ」
「あの、ごめんなさい。これは谷より海より、深い事情があって」
「部外者は黙ってください」
「葉月、あのね、練習したくて」
「何を?」
怒ってる。この怒りかたはやばい。
早く言わないと。葉月が一番好きだって。
「葉月に言いたくて」
「そういうこと?」
「そういうことです!浮気なんて滅相もない!大体、僕、彼氏いますし!」
「よかった」
「何を勘違いしたんだか知らないけど、別に俺が言いたくて言ったわけじゃないから!島橋さんに言えって言われただけだから」
「えぇ、僕のせい?でも、彼氏さん、安心してください。優雨くん、毎日、ずーっと彼氏さんのこと見てたし、話すのは彼氏さんのことだけでしたから!」
なんて事を言うんだ!
島橋さんのせいにした僕が百、悪いけどそれをバラすのは違うじゃん。
「そうなの?優雨」
「他に見る人なんていなかっただけだし」
「そっか。ごめんね。島橋さん」
「いえ、じゃあ僕はこれで」
島橋さんはすごい速さでどこかに行ってしまった。
「ごめんね。遅くて、寂しくなかった?」
「全然、もっと遅くてもよかった」
十分、長生きしてたけど俺はどんなに遅くてもよかった。
「そっか。葉月、約束覚えてる?」
「ほとんど忘れちゃった」
嘘だよ。ずっと一緒にいるよ。
「でも、守ってくれるよね」
「覚えてる限りはね」
全然覚えてるし、破る気はないし、破れる気がしない。
「なら、大丈夫だね」
好きって言いたい。今なら、言えるかな。
「は、はづき、あのね」
「うん」
「すき間が空いたから」
何を言ってるんだ俺は、隙間が空いたってなんだよ。周りくどい。
「うん」
「何話していいか分からない」
分からなくないでしょ。好きって言うだけでいいのに。愛してるって言えばいいのに。
「じゃあ僕が言いたいこと言うね。
待っててくれて、ありがとう。優雨、来世もよろしくね」
うんって言え、俺!ここで言わなかったらいつ言うんだよ。
「うん」
言えた。やっと素直になれた。
涙が止まらない。だって、凄く待たせてしまった。それなのに好きでいてくれて、愛してくれて、来世も約束してくれた。
好きも大好きも言いたい。
「優雨、泣かないで。ずっと一緒にいれるんだから」
「泣いてない。泣いてるのは葉月じゃん。俺こそ待たせてごめん」
俺だけを選んでくれて、ありがとう。
本当は嬉しいよ。
「愛してるよ。優雨、言ってくれてありがとうね」
泣くほど言って欲しかったのかなぁ。
やっぱり、死ぬ前に一度でいいから言えば良かった。うんって言えば良かったなぁ。そしたら、葉月が毎晩泣くこともなかったかもしれないのに。こんなに愛してくれてるのに、俺はまだ何も返せてないよ。だって、うんって言っただけで伝えられてない。
だから、言えるまで待っててね。
絶対に言うから、来世もよろしくね。
「待っててね」
「うん。いつまでも」
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