生まれ変わっても変わらず好きでいてくださいね

ななな

文字の大きさ
1 / 14

会いたい人はお前以外いない

しおりを挟む
最初の人生では告白は俺からだった。
いや、告白ではなかった。

「お前以外は会いたくない」

自分でも何言ってるのか分からなかったけど、あいつは分かったようで

「僕も愛してるよ」

と言った。
嬉しかったのに素直になれず、甘い言葉の一つも吐けず、

「ふーん」

と言って終わらせてしまった。
それでも、俺が死ぬまで一緒にいてくれた。愛してるとか好きだとか毎日言ってくれて嬉しかった。うまく返せなかったけど本当に好きだと思ってた。
あいつが寝てるときににしか、好きって言えなくて、キスだってそうだ。
いっそ起きてくれればよかった。
そしたら、素直に好きって言えたかな。
もう、遅いけど。
今はあいつを待っている。
なるべく遅く来てね。
早く会いたいけど、長生きして欲しい。
そう思って、毎日あいつを見てる。
でも、俺が死んでからずっと元気がない。
もう死んでから五年も経っているのに、一向に俺を思って夜は必ず泣いている。
一途すぎて泣けちゃうよ。
あいつが泣いてるのに、慰めてあげれない。
もう忘れていいよ。
そう言いたいのに、言えない。
余命が分かってたのに死ぬまでに他の人と幸せになってだなんていくらでも言えたのに言えなかった。
素直に言えば、今ごろ笑って過ごしてたかなぁ。
余命宣告がされた時に別れるつもりだった。

「そんなこと言わないでよ」

見透かされたように言われた。
まだ、名前を呼んだだけなのに、俺への理解度が高すぎる。
それから、毎日、病院に来てくれた。
ありがとうって言えばよかった。
大好きだってずっと思ってるのに、伝えられなかった。
ある日、あいつは病院には似合わない花束を持ってきた。

「来世でも、一緒にいて」

その日はもう俺が治らないと知らされた日だった。
死んだ後に知ったけど、治る確率は元々、数パーセントだったけど、それがゼロに等しくなってしまった事を先生に伝えられていたらしい。

出来るだけ側にいてあげてください。

そう言われたあいつはどう思ったんだろう。
来世の分まで約束してくれた。
それだけで充分で泣きそうだった。
もう死んでもいいって思った。不謹慎だけど。
それなのに、素直になれなくて

「覚えてたらね」

たった一言、うんって言えなかった。
それだけなのに、俺は馬鹿だ。
でも、覚えてなくても、きっと、俺は変わらず好きになる。だから、またそう言って欲しい。

「優雨は絶対覚えてるよ」

好きだと思った。今更だけど、好きだなって。
胸がいっぱいで、好きで頭が埋め尽くされている。
死ぬ前ですら、言葉にできない。もう残された時間は少ないのに。

死ぬ数日前に熱がでた。
その日も、もちろんあいつはいてくれて、酷く安心した。
家に帰ってしまう時間になったとき、いつもは絶対に言えないのに熱が素直にしてくれた。

「葉月、行かないで」

熱でうまく喋れなかったけど、聞こえたみたいで目を今までにないくらい大きくあけて、驚いた顔が見えた。
あんな顔は二度と見れない気がする。
そのまま、すぐ寝てしまったけど、朝起きたら手を握ってくれていて嬉しかった。帰っても良かったのに俺は幸せものだ。

「好き、大好き。幸せにしてくれてありがとう。来世でも一緒にいてね」

寝ている時にしか言えないから、久しぶりに言えて泣きそうになった。最近は涙脆い。
多分、素直なったのはそれが最後だ。
俺が死ぬ時、ずっと一緒にいてくれたのも結局あいつ一人だ。
心臓が止まる前ですら素直になれなかった。
ワイシャツの袖口を握るのが俺に出来る最大限の甘え方だった。
それすらも分かったようで

「好きだよ。愛してる」

そう言って、キスをしてくれた。

「俺も嫌いじゃない」
好きって愛してるって言いたいのに。

「うん。僕のこと覚えててね。優雨」

忘れないよ。
言いたかった言葉は空気が抜けて、もう言えない。

心臓が止まる音が真っ白な部屋に響いた。

最後の最後まで、好きとは言えなかったけど、葉月がいたから一番幸せに死ねたよ。
来世は好きって言いたいなぁ。
待ってるから、ゆっくり来てね。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

【本編完結】死に戻りに疲れた美貌の傾国王子、生存ルートを模索する

とうこ
BL
その美しさで知られた母に似て美貌の第三王子ツェーレンは、王弟に嫁いだ隣国で不貞を疑われ哀れ極刑に……と思ったら逆行!? しかもまだ夫選びの前。訳が分からないが、同じ道は絶対に御免だ。 「隣国以外でお願いします!」 死を回避する為に選んだ先々でもバラエティ豊かにkillされ続け、巻き戻り続けるツェーレン。これが最後と十二回目の夫となったのは、有名特殊な一族の三男、天才魔術師アレスター。 彼は婚姻を拒絶するが、ツェーレンが呪いを受けていると言い解呪を約束する。 いじられ体質の情けない末っ子天才魔術師×素直前向きな呪われ美形王子。 転移日本人を祖に持つグレイシア三兄弟、三男アレスターの物語。 小説家になろう様にも掲載しております。  ※本編完結。ぼちぼち番外編を投稿していきます。

イケメンな先輩に猫のようだと可愛がられています。

ゆう
BL
八代秋(10月12日) 高校一年生 15歳 美術部 真面目な方 感情が乏しい 普通 独特な絵 短い癖っ毛の黒髪に黒目 七星礼矢(1月1日) 高校三年生 17歳 帰宅部 チャラい イケメン 広く浅く 主人公に対してストーカー気質 サラサラの黒髪に黒目

【完結済】どんな姿でも、あなたを愛している。

キノア9g
BL
かつて世界を救った英雄は、なぜその輝きを失ったのか。そして、ただ一人、彼を探し続けた王子の、ひたむきな愛が、その閉ざされた心に光を灯す。 声は届かず、触れることもできない。意識だけが深い闇に囚われ、絶望に沈む英雄の前に現れたのは、かつて彼が命を救った幼い王子だった。成長した王子は、すべてを捨て、十五年もの歳月をかけて英雄を探し続けていたのだ。 「あなたを死なせないことしか、できなかった……非力な私を……許してください……」 ひたすらに寄り添い続ける王子の深い愛情が、英雄の心を少しずつ、しかし確かに温めていく。それは、常識では測れない、静かで確かな繋がりだった。 失われた時間、そして失われた光。これは、英雄が再びこの世界で、愛する人と共に未来を紡ぐ物語。 全8話

俺がモテない理由

秋元智也
BL
平凡な大学生活を送っていた桜井陸。 彼には仲のいい幼馴染の友人がいた。 友人の名は森田誠治という。 周りからもチヤホヤされるほどに顔も良く性格もいい。 困っている人がいると放かってはおけない世話焼きな 性格なのだった。 そんな二人が、いきなり異世界へと来た理由。 それは魔王を倒して欲しいという身勝手な王様の願い だった。 気づいたら異世界に落とされ、帰りかたもわからない という。 勇者となった友人、森田誠治と一緒に旅を続けやっと 終わりを迎えたのだった。 そして長い旅の末、魔王を倒した勇者一行。 途中で仲間になった聖女のレイネ。 戦士のモンド・リオールと共に、ゆっくりとした生活 を続けていたのだった。 そこへ、皇帝からの打診があった。 勇者と皇女の結婚の話だった。 どこに行ってもモテまくる友人に呆れるように陸は離 れようとしたのだったが……。

処理中です...