全てを諦めた公爵令息の開き直り

key

文字の大きさ
上 下
311 / 368
続編2 手放してしまった公爵令息はもう一度恋をする

27話 殺し文句 ※

しおりを挟む
「前世での事、未だに引きずってしまっているんなら、僕も正直に言うよ。……あの時ね。貴方に初めて触れられて、僕も衝撃を受けたんだ。将来どころか生きる希望も失ったあの暗闇の中で、僕は自分の家族以外の誰かを愛する事なんて、想像すら出来なかった。それなのに、あんな愛おしむ様に触れられて、恥ずかしくて仕方なかったけど、全身で貴方に好きだと訴えかけられている様で、泣きたくなった。身も心も堕とされるって、こんな感じなのかと身をもって知って。でも、そんな貴方に応えられなかった僕は……」
「シリル…」
「手のひらを返した様に手荒くされて……暴かれたよね。そんな中で思ったんだよ。『あぁ、完全に失望させてしまったんだ…』って。貴方に告白した時にも言ったでしょう?受けた行為より、貴方を失望させてしまった事の方が辛かったと。だから、『もういっそ、壊してくれたらいいのに。』とすら思った。貴方自身の手で好きに殺して、そうして残った亡骸さえも好きにしてくれればいいって。そんな事しか出来ないのだと……」
「シリル!何言って……っ」

ギュッと抱きしめて来る彼の腕は燃え滾る様に熱く、それでも、優しく愛おしんでくれる。

「貴方は僕に『恨んでも、殺してくれても構わない。』と言ったけれど。それは僕も同じなんだ。確かに思った。貴方になら、殺されても構わない。それくらい、僕の心を揺さぶらせ、貴方を欲する気持ちをくれた。ただの比喩とかなんかじゃない。本当の本当に、全身全霊で応えたいんだ。貴方にとっては無茶に見えても、僕にとっては必要な事なんだよ。……だから。」

“貴方が浅ましいと嘆く衝動も、その全てが愛おしいよ。”

煽るなといつも叱られるけど。
殺し文句だって分かっていても、言わずにはいられなかった。
彼のその耳元で、囁く様に口にして。

貴方の心の奥底にある、昏く渦巻く欲望を。
醜いものだと抑え込まないであげて。
要らないものなんかじゃない。
だって、それもまた、僕を愛おしいと求めてくれるが故の欲じゃないか。

僕は死に戻って、再び貴方と出逢って。
何を想ったと思う?
貴方が欲しいと気付いてしまって。
心が得られないのなら、体だけでもいいと望み。
そんな浅ましい自分に絶望した。
でも、そんな自分すら、今なら愛おしいと思えるよ。

あの気持ちが、衝動がなければ、今こうして、二人で此処には居られなかったから。
あの時感じた、絶望も浅ましいと思った自分も。
その全てが報われたんだ。
体だけでなく、心だけでもなく。
全て僕にくれてから。
僕も全てをあげたいんだ。

その気持ちを態度で示すべく、僕は涙を零した彼の目尻にキスを贈り。
そして、その頬を掴み、僕の方から唇にキスをした。

そうしたら、もう後は。

「ふ。んぅぅ……は、はぁ。」
「ん。……シリル、貴方……なんて事を思って…」

舌を絡めた濃厚なキスをして。
再び僕を見つめるサフィルは。
熱に浮かされながらも、また泣きそうな顔で見つめて来る。

「ありがとう、正直に話してくれて。嬉しい。そんなサフィルが好き。大好き。……あぁ、好きなんて言葉じゃ足りないくらい、愛おしくて。嬉しくて。」

また彼に腕を伸ばし、今度はギュッと抱き付いた。
嬉しくて、心が震える。
もう、どうなってもいいとすら思えた。

「はぁ…。嬉しい……私も。こんなにも想ってもらえて。未だに、夢みたい。」
「夢なんかじゃないって。」
「本当に?本当に、好きにしていいの?」
「うん。」

頷く僕に、もうサフィルは聞き返してくる事は無く。
僕の首筋に再び喰らい付いて、今度は甘く吸い上げられる。
また胸に沢山の痕を刻まれて。

「あ。サフィル…ッあぁっ!」

改めて彼に解された後孔には、いつになく滾った剛直が宛がわれ、貫かれて。
苦しいと思ったのは最初だけで、後はただただ善かった。

「あ“っ!ひ…っあぁっ!好き、サフィルぅ!」
「は。あ、シリル!シリルッ!」

気持ちイイ。
快感の波に呑まれたまま、ただ愛しい彼に掴まって、一つになる。

好き。
大好き。

滅茶苦茶に突き上げられるのに、それが嬉しくて仕方がない。
奥の奥まで貫かれていく。

「あぁっ……ふかいっ…ふがい“ぃっ……あぅっ…いっでるっ…いっで……ひぃっ…いぐのぉっおわんないぃ~~~~んぁぁっ」
「あぁ、中が絡みついてっ……もう完全に私の形、覚えてしまったね。はっ……気持ちイイ?シリル…」
「あひっ……うん…うんっ…!気持ちイイ、からっ!!」

ドロドロに溶かされていく。
心も体も。
結合部からはひっきりなしにぐちゅぐちゅと卑猥な音がする。
もう気持ちイイしか考えられない。

馬鹿になった頭で視線を下ろすと、今になって、ソレに気付いた。

「は…あっ、わ。すごっ……ここ、サフィルの入って、お腹ぽこってなってるぅ!」

彼に最奥を貫かれて、腹の表面から見ても分かるくらい、彼の剛直が中から突き上げて出っ張っているのが分かって。
自分の中に彼のモノが確かな質量を持って、そこに存在しているのが目に見えて確認出来る。
それが嬉しくなって、外から膨れた腹を撫で付けたら。

「ま、またそうやって煽って!あーもう、なんて可愛いんです。シリル、好き!愛してるっ……—…———…——…」

もう、半分意識が飛んでしまっているサフィルは、媚薬による興奮と愛し過ぎる相手の痴態に煽られてか、うわ言の様に口にして。

熱に浮かされているのは分かっていた。
ただでさえ歯止めが効かない状態の彼を煽ってしまって、正気を失わせてしまっていたのも、理解していた。

しかし。
それでも、その言葉を耳にした僕は。

「……っ!!…そ、それは……あぁっ!」

最高潮に昂り、浮上しきった心地から、底の無い奈落へと。
悪意のないまま、彼の意図しないまま。
僕の心は、どん底に突き落とされたのだった————…。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。

イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。 力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。 だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。 イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる? 頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい? 俺、男と結婚するのか?

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

伯爵家のいらない息子は、黒竜様の花嫁になる

ハルアキ
BL
伯爵家で虐げられていた青年と、洞窟で暮らす守護竜の異類婚姻譚。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

【BL】こんな恋、したくなかった

のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】  人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。  ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。 ※ご都合主義、ハッピーエンド

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

処理中です...