上 下
189 / 352
第5章

189話 やめないで※

しおりを挟む
「んっ」

僕が彼の耳元で囁いた途端、明らかに抑えていた箍が外れたのか。
殊更性急な動きとなって、彼は僕の服を剥いでいく。
僕も恐る恐る彼の服のボタンに手を掛けるが、彼と違って上手く出来なくて。
もたもたしている内に、彼は自分で服の袖から腕を抜き、バサッと床に脱ぎ捨ててしまった。

月明かりに映る彼の胸板はしっかりとしていて厚く、あぁ、今からこの男に抱かれるのかと思うと、今更ながらにドキリと心臓が跳ねるが。

「シリル…」

僕に覆い被さって、その耳元で囁く彼の声音が切なさでいっぱいで。
目が合うと、もう。

彼は急に切羽詰まった様な焦燥感を滲ませながら、僕の首筋から胸へと、キスの雨が降り注がれる。
そして。
胸の突起をしゃぶられ、舌先で弄ばれる。

「んあぁっ!」

ま、また。
駄目だ、それ!
背中にぞわぞわとした感覚が駆け上がって。
腰が揺れてじっとしていられなくなる。

すると、彼の手がするすると下がっていき、僕の陰茎をズボン越しに掠めた。

「ひぅっ」

思わずビクッと震えてしまう僕に、サフィルは心配げな顔で見つめて来るが。

「や、その…びっくりしただけだからっ」

嫌がっている訳じゃないんだ。
ただ、その…どうすればいいのか分からなくて。
与えられる快感に、どう対処すればいいのか分からない。
今まで殆ど感じた事の無いこの快感は、僕には刺激が強すぎて、まだ恐怖心の方が勝ってしまう。

でも。

「お願い、やめないで。今度こそ最後までしたいんだ。」

少し震えてしまう両の手は、シーツをギュッと握り締めて。
僕は彼に懇願した。

すると。
彼が、硬く握られた僕の右手に触れたから。
フッと手の力を抜いたら。
彼はその僕の手を取り、自身の唇に持っていき、優しく触れるキスをくれる。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

処理中です...