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第3章

133話 会えない

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……それから。

日を空けてまた図書室に行ってみたが。
もう、彼が其処で作業をしている様子は無かった。
論文は大詰めに差し掛かっていた様だから、もう文献を探す作業も終わったのかな。

この前の本来の目的だった魔術や呪術、そして、救世の巫子に関する記述が載っている本を片っ端から調べてみたが、前の2つはチラホラあっても、救世の巫子に関する事は、なかなか見当たらない。

見当たらないから、かなりの時間を図書室で過ごしたが。
もうサフィルと出くわす事は無かった。

秋は瞬く間に過ぎて行き、気が付くと木枯らしが吹き始めていた。

僕は、時々遠くにサフィルを見かけたけれど、それだけだった。
向こうから声を掛けられる事も無いし、こちらから掛ける機会も無い。

時折テオに言われた事を思い出していた。

『まず、卿に想いを伝えてみてはどうでしょうか?』
『少しでも卿に好きだとアピールして、想いを伝えてみられた方が良いかと思いますよ。』

…と。

だけど、テオ。
君には不思議に感じるかもしれないが。
同じ学び舎に居る筈なのに、これがなかなか遭遇しないんだ。
想いを伝えるどころか、アピールすらも、出来る機会が無いだなんて。
思った以上にハードルが高かった。

このまま、悶々としている内に、お別れになってしまいそう。
でも、そうなった方が……結局いいのだろうか?

いざとなれば、動けないのが僕という人間だ。
実際に別れの場に出くわせば、手を伸ばす事も無く、お元気で、と手を振っている自分が大いに想像出来る。
家も国も飛び出して、彼の元へ駆けていくなんて、そんな無謀な事、どう頑張っても出来る気がしない。

でも、その方が……きっと彼の負担にはならないから、いいのかな?
そんな事ばかり、一人になると考えてしまう。
テオが心配する様に、先走る事は無いと思うが、代わりに自ら一歩踏み出すという事が…出来ない。
というか、どうすればいいのか、分からない。

せめて手紙を出し合える程の友人関係に発展していたのなら、秋の祭りに誘う事も出来ただろうが。
そんな関係にすら、至れていないのだから、嗤うしかない。
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