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第3章
134話 憂鬱
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その日は、いつにも増して寒さが厳しく、雪がチラチラと降り始めていた。
学院での授業を終えた後、カイトとカレンは共に馴染みの孤児院に顔を出しに行くと言っていたので、校門前で別れた。
彼らが乗る馬車を見送ってから、僕はぼんやりとした顔で、テオの待つ馬車へと乗り込む。
あれから、結局何の進展も無いまま。
季節は秋から冬へと変わってしまい。
もう年の瀬が迫りつつあった。
僕はと言えば、このどんよりとした鈍色の空の様に、鬱々としている日々だ。
秋が深まるにつれ、どこか遠くを眺めたままぼんやりする事が多くなっていた僕に、巫子達は気晴らしも兼ねて、ちょっと遠めの領地への救済に一緒にどう?と、誘ってくれた事もあったが。
僕は動く気になれなくて、外出する様な事はことごとく断った。
この日も、一緒に孤児院に遊びに行かないかと誘ってくれたが、賑やかな場所に行く気になれなくて、気分が優れない事を理由にして、やっぱり断ってしまって。
とても残念そうな顔をした二人だったが、僕が謝ると、困った様に笑んでくれたのだった。
「お帰りなさいませ、シリル様。」
相変わらず優しい笑みで馬車から迎えてくれるテオに、僕は軽く笑みを浮かべた。
その顔を見てテオはホッとしたような顔を見せたが、馬車に乗った途端、頬杖をついて窓の外をぼんやり眺める僕を目にし、テオは徐々に視線を落とした。
「シリル様、大丈夫ですか?ずっと、元気が無い様にお見受けしますが…」
「……うん…何だか、最近凄く…眠いんだ……」
窓の外へ視線を向けたまま、僕は瞼が重くなっていくのを感じながら、呟いた。
「え?夜、眠れていないのですか?」
「……いや、寝れてる…。夢を見る事も……少ないし。でも……何でかな……凄く、眠い。」
今にも瞼が閉じそう。
うつらうつらとしながら、なんとかテオにそう答えるのが、精一杯だった。
テオはと言えば、とても怪訝な顔をして、僕の方を見ているのが視線で分かっていたが。
眠くて頭が回らなくて、彼を見やる気力も無く。
もういっそ横になろうかと思うくらいの眠気に襲われたが、不意に。
僕はパッと目を覚ました。
何故なら。
まだかろうじて外に視線をやっていた僕に、意外な光景が目に飛び込んで来たからだった。
学院での授業を終えた後、カイトとカレンは共に馴染みの孤児院に顔を出しに行くと言っていたので、校門前で別れた。
彼らが乗る馬車を見送ってから、僕はぼんやりとした顔で、テオの待つ馬車へと乗り込む。
あれから、結局何の進展も無いまま。
季節は秋から冬へと変わってしまい。
もう年の瀬が迫りつつあった。
僕はと言えば、このどんよりとした鈍色の空の様に、鬱々としている日々だ。
秋が深まるにつれ、どこか遠くを眺めたままぼんやりする事が多くなっていた僕に、巫子達は気晴らしも兼ねて、ちょっと遠めの領地への救済に一緒にどう?と、誘ってくれた事もあったが。
僕は動く気になれなくて、外出する様な事はことごとく断った。
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とても残念そうな顔をした二人だったが、僕が謝ると、困った様に笑んでくれたのだった。
「お帰りなさいませ、シリル様。」
相変わらず優しい笑みで馬車から迎えてくれるテオに、僕は軽く笑みを浮かべた。
その顔を見てテオはホッとしたような顔を見せたが、馬車に乗った途端、頬杖をついて窓の外をぼんやり眺める僕を目にし、テオは徐々に視線を落とした。
「シリル様、大丈夫ですか?ずっと、元気が無い様にお見受けしますが…」
「……うん…何だか、最近凄く…眠いんだ……」
窓の外へ視線を向けたまま、僕は瞼が重くなっていくのを感じながら、呟いた。
「え?夜、眠れていないのですか?」
「……いや、寝れてる…。夢を見る事も……少ないし。でも……何でかな……凄く、眠い。」
今にも瞼が閉じそう。
うつらうつらとしながら、なんとかテオにそう答えるのが、精一杯だった。
テオはと言えば、とても怪訝な顔をして、僕の方を見ているのが視線で分かっていたが。
眠くて頭が回らなくて、彼を見やる気力も無く。
もういっそ横になろうかと思うくらいの眠気に襲われたが、不意に。
僕はパッと目を覚ました。
何故なら。
まだかろうじて外に視線をやっていた僕に、意外な光景が目に飛び込んで来たからだった。
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