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第2章
54話 前々世のカレンとシルヴィア
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学院内は関係者以外立ち入りが厳しく制限されている。
そして、カレンは王宮暮らしをしていて、学院の登下校からお出かけ、救済の仕事にしても、常に厳重な警備体制がひかれていた。
どんなに善い行いをしていても、有名人というのは何かと狙われやすい。
それは仕方の無い事だ。
だから、当時カレンはかなり窮屈に感じていた様だが、それでも拒否はせず受け入れていた。
どんなに凄い能力を持っていても、それは救済に関する事だけで、敵から身を守る防御術や護身術はさっぱりだったからだ。
だから、警備の隙をついてゴロツキ共に攫われた。
でも、直ぐに見つけられ、事無きを得たが。
現行犯で捕縛され、事件は直ぐに解決し、そのまま卒業パーティーへと慌ただしく突入した。
「……そして、卒業パーティーのその日に、当時婚約者だった筈のシルヴィアは、本来なら王太子にエスコートされてパーティーに参加する筈が、何故か巫女のカレンと共に入って来て……王太子はシルヴィアに巫女を虐めた事と彼女の誘拐の疑義を問い、婚約破棄を言い渡したんだ。————断罪された。衆人環視の真ん中で。」
「そんな……」
今思い出しても辛くなる、記憶を思い返して話していると、カイトが悲しい顔で呟いた。
カレンも下を向いている。
「……謝って済む事じゃないけど、私もよく分かってなかったの。エスコートはデビュタントで正式に行うって……聞いてたから。直前に攫われた事もあったから、皆に健在ぶりをアピールしようって殿下に言われて、結局応じちゃったの。私もあの時はてっきり、シルヴィア嬢が誘拐の黒幕だと思ってたし。……でも、やっぱり軽率だった。ごめんなさい……。」
「あぁ、なるほど?それであんな、よく分からない態度だったのか。僕も思い返してもよく分からなかったんだ。王太子のエスコートは受けた癖に、シルヴィアが婚約破棄されたら、慌ててフォローしただろう?……わざと善い人でも装ってたのかと思ってた。」
「私も途中までシルヴィア嬢の事、勘違いしてたから、ちょっとくらい美味しい思いしてもいっか!ってのもあったわ……。でも、本気じゃなかった。本当よ!……だって、ユリウス殿下は確かに素敵なイケメンだけど、もし彼と結ばれてみなさいよ。ただでさえ窮屈!面倒!ってぼやいてた王宮にずっと閉じ込められる事になるのよ?それがしんどくて救済がんばってたトコもあったしね。」
「あ、それなー!わっかるわー!」
……最後に意気投合する、巫女と巫子。
え。
慈悲深い救世の巫女&巫子は、王宮暮らしが嫌過ぎて、外に出まくっていたのか?
窮屈だと不満を漏らしていたのは聞いていたが、そこまで肌に合わなかったとは思わなかった。
唖然とする僕に、テオも同じ様な顔をしていた。
まず、彼女らが救世の巫女&巫子というのも驚いただろうが、その後、主人の僕が前世は女だった事を話されて驚愕し、そして、王太子と婚約していた事や彼にそれを破棄され断罪もされた事。
その理不尽さに、憤った顔をしていたら。
巫女達に、まさか、お城暮らしが嫌過ぎて、救済を頑張ってたって聞かされて。
どんな顔すればいいか分からない……と表情が物語っていた。
「ただ、あの後シルヴィア嬢は会場を出て、帰っちゃったでしょう?それでどうして……その…死んでしまう事になったの?」
カレンに問われ、僕は目を丸めた。
知らなかったのか……。
「カレン……君の誘拐の件は調べ直すと言われたが、巫女に対する嫌がらせ行為は許せないのと、誘拐の嫌疑が晴れるまで修道院で修行して反省しろって言われただろう?」
「すみません、ちょっと待って下さい。……その、殿下が、皆の前で、そんな事言ったんですか?」
混乱しながらも、それまでずっと黙って話を聞いていたテオが、口を開いて聞いて来た。
あ、前もあったな、こんな反応。
「うん。」
テオの問いに僕が頷くと、見る見る表情が険しくなって。
「いや、お前が行って頭冷やせよっ」
吐き捨てる様に殿下への悪態を口にする。
それを目にして、僕は思わず噴き出した。
「フッハハッ!やっぱりテオはテオだな…。あの時も、テオとレイラは殿下への悪口を言いまくっててさ。泣いて事情を話していたシルヴィアを慰めてくれてた叔父様すら、止めに入ったぐらいだったからな。」
「当たり前です!自分の行為は棚に上げて、シリル様……いや、シルヴィア様か。ばかりを攻め立てるなんて、おかしいにも程がありますよ!」
今も昔も変わらず、自分の為に怒ってくれるテオが居てくれて、嬉しく思う。
でも、それを差し引いても、やっぱりそう思うよな…。
僕は当時感じたシルヴィアの感覚が間違ってなかったと思えてホッとした。
「…だよな。当時もそう思って。でも、だからこそ行く事にしたんだ、修道院に。あんな断罪の仕方をされたからな。例え、やっぱり間違っていた…と、婚約破棄を無かった事にすると言われたとしても、もうこちらも状況的に受け入れられそうに無かったし、敢えて王太子の命令に乗る事に決めたんだ。それで自分の無実が証明されれば、地に落ちた自分の心象もいくらか回復出来るし、そもそもあの婚約を取り決めた国王夫妻へある程度賠償してもらおうって算段だったから。」
「さすがです!シリル様」
「んー、まぁ当時はシルヴィアだが。」
ややこしいよな、と僕は苦笑する。
「で、気を取り直して修道院に向かうまでは良かったんだが、道中の崖で馬車が転落して……そうしてシルヴィアとしては死んでしまったんだ。」
「そんな……」
カレンはシルヴィアの最期にショックを受けていた。
でも、それ以上にショックを受けていたのが、テオだった。
「そんなの……あんまりです!……ご両親と同じ亡くなり方だったなんて…。」
テオの言葉に、カレンとカイトが驚いた顔で僕を見やる。
「そうだな……。ギロチンより転落死の方が、僕にとっては怖かった。」
覚悟を決めていた死と、再起をかけて希望を抱いた末での事故死。
やっぱり、僕にとっては後者の方が、よっぽど堪(こた)えた。
……それなのに。
「で、気付いたら……今度は、僕として……シリルとして、また卒業の半年前に意識が戻って、カイト————…君と出逢ったんだ。」
カイトの方を向いてそう告げると、彼もまた、黒い瞳が潤んでいた……。
そして、カレンは王宮暮らしをしていて、学院の登下校からお出かけ、救済の仕事にしても、常に厳重な警備体制がひかれていた。
どんなに善い行いをしていても、有名人というのは何かと狙われやすい。
それは仕方の無い事だ。
だから、当時カレンはかなり窮屈に感じていた様だが、それでも拒否はせず受け入れていた。
どんなに凄い能力を持っていても、それは救済に関する事だけで、敵から身を守る防御術や護身術はさっぱりだったからだ。
だから、警備の隙をついてゴロツキ共に攫われた。
でも、直ぐに見つけられ、事無きを得たが。
現行犯で捕縛され、事件は直ぐに解決し、そのまま卒業パーティーへと慌ただしく突入した。
「……そして、卒業パーティーのその日に、当時婚約者だった筈のシルヴィアは、本来なら王太子にエスコートされてパーティーに参加する筈が、何故か巫女のカレンと共に入って来て……王太子はシルヴィアに巫女を虐めた事と彼女の誘拐の疑義を問い、婚約破棄を言い渡したんだ。————断罪された。衆人環視の真ん中で。」
「そんな……」
今思い出しても辛くなる、記憶を思い返して話していると、カイトが悲しい顔で呟いた。
カレンも下を向いている。
「……謝って済む事じゃないけど、私もよく分かってなかったの。エスコートはデビュタントで正式に行うって……聞いてたから。直前に攫われた事もあったから、皆に健在ぶりをアピールしようって殿下に言われて、結局応じちゃったの。私もあの時はてっきり、シルヴィア嬢が誘拐の黒幕だと思ってたし。……でも、やっぱり軽率だった。ごめんなさい……。」
「あぁ、なるほど?それであんな、よく分からない態度だったのか。僕も思い返してもよく分からなかったんだ。王太子のエスコートは受けた癖に、シルヴィアが婚約破棄されたら、慌ててフォローしただろう?……わざと善い人でも装ってたのかと思ってた。」
「私も途中までシルヴィア嬢の事、勘違いしてたから、ちょっとくらい美味しい思いしてもいっか!ってのもあったわ……。でも、本気じゃなかった。本当よ!……だって、ユリウス殿下は確かに素敵なイケメンだけど、もし彼と結ばれてみなさいよ。ただでさえ窮屈!面倒!ってぼやいてた王宮にずっと閉じ込められる事になるのよ?それがしんどくて救済がんばってたトコもあったしね。」
「あ、それなー!わっかるわー!」
……最後に意気投合する、巫女と巫子。
え。
慈悲深い救世の巫女&巫子は、王宮暮らしが嫌過ぎて、外に出まくっていたのか?
窮屈だと不満を漏らしていたのは聞いていたが、そこまで肌に合わなかったとは思わなかった。
唖然とする僕に、テオも同じ様な顔をしていた。
まず、彼女らが救世の巫女&巫子というのも驚いただろうが、その後、主人の僕が前世は女だった事を話されて驚愕し、そして、王太子と婚約していた事や彼にそれを破棄され断罪もされた事。
その理不尽さに、憤った顔をしていたら。
巫女達に、まさか、お城暮らしが嫌過ぎて、救済を頑張ってたって聞かされて。
どんな顔すればいいか分からない……と表情が物語っていた。
「ただ、あの後シルヴィア嬢は会場を出て、帰っちゃったでしょう?それでどうして……その…死んでしまう事になったの?」
カレンに問われ、僕は目を丸めた。
知らなかったのか……。
「カレン……君の誘拐の件は調べ直すと言われたが、巫女に対する嫌がらせ行為は許せないのと、誘拐の嫌疑が晴れるまで修道院で修行して反省しろって言われただろう?」
「すみません、ちょっと待って下さい。……その、殿下が、皆の前で、そんな事言ったんですか?」
混乱しながらも、それまでずっと黙って話を聞いていたテオが、口を開いて聞いて来た。
あ、前もあったな、こんな反応。
「うん。」
テオの問いに僕が頷くと、見る見る表情が険しくなって。
「いや、お前が行って頭冷やせよっ」
吐き捨てる様に殿下への悪態を口にする。
それを目にして、僕は思わず噴き出した。
「フッハハッ!やっぱりテオはテオだな…。あの時も、テオとレイラは殿下への悪口を言いまくっててさ。泣いて事情を話していたシルヴィアを慰めてくれてた叔父様すら、止めに入ったぐらいだったからな。」
「当たり前です!自分の行為は棚に上げて、シリル様……いや、シルヴィア様か。ばかりを攻め立てるなんて、おかしいにも程がありますよ!」
今も昔も変わらず、自分の為に怒ってくれるテオが居てくれて、嬉しく思う。
でも、それを差し引いても、やっぱりそう思うよな…。
僕は当時感じたシルヴィアの感覚が間違ってなかったと思えてホッとした。
「…だよな。当時もそう思って。でも、だからこそ行く事にしたんだ、修道院に。あんな断罪の仕方をされたからな。例え、やっぱり間違っていた…と、婚約破棄を無かった事にすると言われたとしても、もうこちらも状況的に受け入れられそうに無かったし、敢えて王太子の命令に乗る事に決めたんだ。それで自分の無実が証明されれば、地に落ちた自分の心象もいくらか回復出来るし、そもそもあの婚約を取り決めた国王夫妻へある程度賠償してもらおうって算段だったから。」
「さすがです!シリル様」
「んー、まぁ当時はシルヴィアだが。」
ややこしいよな、と僕は苦笑する。
「で、気を取り直して修道院に向かうまでは良かったんだが、道中の崖で馬車が転落して……そうしてシルヴィアとしては死んでしまったんだ。」
「そんな……」
カレンはシルヴィアの最期にショックを受けていた。
でも、それ以上にショックを受けていたのが、テオだった。
「そんなの……あんまりです!……ご両親と同じ亡くなり方だったなんて…。」
テオの言葉に、カレンとカイトが驚いた顔で僕を見やる。
「そうだな……。ギロチンより転落死の方が、僕にとっては怖かった。」
覚悟を決めていた死と、再起をかけて希望を抱いた末での事故死。
やっぱり、僕にとっては後者の方が、よっぽど堪(こた)えた。
……それなのに。
「で、気付いたら……今度は、僕として……シリルとして、また卒業の半年前に意識が戻って、カイト————…君と出逢ったんだ。」
カイトの方を向いてそう告げると、彼もまた、黒い瞳が潤んでいた……。
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