星の堕ちた世界で~終末世界のエルフ~

黒幸

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30 成長するカエル

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「おりゃー!」

 あら、お見事。
 
 ラバーさんのパンチが!
 キックが!
 鋼鉄のようとも言われるシー・マンティスの外殻を難なく、破壊していた。

 ラバーさんはサポートしなくても一人で余裕だったとは思うのよね。
 何しろ、シー・マンティスの動きを完全に見切っているのか、完璧に避けているんだから。
 蝶のように舞い、蜂のように刺す。
 これを的確に再現しているとしか思えないきれいな戦い方だった。

 シー・マンティスの繰り出すパンチを躱し、それ以上のパンチをお見舞いする。
 華麗ではないかもしれない圧倒的な差というものを見せられた気がする。

 そこにサポートが加わった。
 身体能力が上積みされるのだから、余裕そのものになるのよね。
 だから、一匹は割とすんなりと片付けられた。

 問題はユーくんと戦っているもう一匹の方だ。
 彼は苦戦とまではいかないけど、手こずっているのが分かる。
 あまり慣れていない片手剣と盾での戦いだから、思うようにはいかないんだろう。

 それでも手に入れたばかりの剣とわたしのかけたサポートが効果的に働いてるようだ。
 慣れない手つきながらも徐々に自分のペースを取り戻しつつあるように見えた。

「もうちょいかな?」
『そうですね。彼はいいセンスをしているようです』
「そうなんだ?」
『はい。ミレイユと違って、運動神経がいいのでしょう』

 はいはい。
 どうせ、わたしは運動神経が切れてますよ。
 それが分かっているから、邪魔にならないところから、サポートすることに徹しているんだけど。
 
 相手がせめて、もう少し大型のモンスターだったら、援護射撃をしていた。
 ユーくんが戦いやすいように狙撃して、障害を取り除くことができたと思うし……。

 でも、シー・マンティスはせいぜい人間の大人と同じ程度の大きさだ。
 これで味方に当てないように狙い撃つのは至難の業になる。
 少なくともわたしがどの状態でも狙えるかと言えば、答えはノー。
 万全の状態ならば、いけるかもしれないけど厳しい。
 まず、無理と思った方がいいだろう。

 だから、サポートに徹する。
 幸いなことにユーくんはこの戦いでかなり、成長したと思う。
 序盤はもろにパンチを盾で受けていて、見ているだけでも痛々しかった。
 心配なので癒しの矢を慌てて、撃ったけど……。

 正直なところ、単なる応急処置に近いものがあるのだ。
 何しろ、本格的に癒しの術を身に付けている訳じゃない。
 見よう見まね。
 イメージだけでやっているから、応急処置にしかならない。

「誰でもあんなにできるもんなの?」
『だから、彼はセンスがいいのです』
「そっか」

 彼は盾で相手の力をうまく受け流すコツを覚えたらしい。
 戦っている中で身に付けるのは天賦の才みたいなもんだろうか。
 盾で受け流して、体勢を崩したところで効果的な一撃を与えてさえいる。
 今やペースは完全にユーくんが握っていると言っても過言じゃない。

「じゃあ、あの邪魔になりそうなのを排除しておこうかな?」
『それはいいアイデアです』
「何が効果的なの?」
『ピカッゴロゴロでしょうか』
「あぁ、なるほど。そういうのね」

 素直に雷って教えてくれないところがバルディエルらしいというか。
 それを個性として、普通に受け入れたわたしが変なのかもしれないけど、中々どうして憎めない子なのだ。
 馬鹿な子ほどかわいい?
 そんなことを言ったら、特大の爆弾を放り投げてきそうなので言わない。

 そっか、雷ね。
 まずはあのピカッと光っている稲妻みたいなのをイメージしよう。
 そして、硬い物を貫通して、破砕するのをイメージするのだ。
 うん。
 何か、思い浮かんだ。
 青白く発光する魔法の矢を『アーバレスト』に装填して、まだ視認もできない距離にいる三匹目の頭を撃ち抜いた。

 正直、何で貫通するイメージだけにしておかなかったのかと後悔している。
 破砕するイメージを付け加えたせいでエビっぽいものの頭がパーンとなる見たくもないグロ映像を見る羽目になったんだから……。
 まぁ、いいのよ。
 わたしの乙女な心という尊い犠牲でさらなる危険を避けられるんだから、こんなに嬉しいことはない。
 そう思っておかないと辛いし!
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