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31 彼岸より至る邪なる蛇
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「あんなのがいるって、聞いてなかったんですが」
「すごいなあ、アレ」
「あたしはワクワクしてきたけど」
三者三様とはよく言ったものだと思う。
でも、わたしの反応が普通の人の感覚だと信じたい。
なぜなら、今まさに目撃しているソレがこの世の産物とはとても思えないからだ。
この世ならざる生き物と言った方がいい。
ソレはとても大きい。
はっきりとした大きさは分からないけど、以前見た連結バスと同じくらいか、それよりも長さがある。
多分、大蛇なんだと思う。
思うとしか言えないのは胴体や尾は確かに蛇ぽいのに頭があまりにも異様だからだ。
本来、ヘビの頭がある部分にありえないものがくっついている。
人間の頭としか思えないものだった。
ただ、それも人間とは思えない大きさをしている。
巨人の頭と言われても信じてしまう大きさだ。
それが複数個くっついて、それぞれが下卑た笑みを浮かべていた。
気味が悪いのはいくつかの顔が、損傷していて、腐臭が漂う錯覚を受けることだった。
腐り落ち、焼け爛れた顔はとても恨めしい表情を浮かべているようにさえ見えた。
ソレはわたし達が倒し、放置していたシー・マンティスの死体を見て、舌なめずりをするとバリバリと耳障りな音を立てて、食べ始めたのだ……。
ユーくんがシー・マンティスを無事に討ち果たして、見事三匹のシャコもどきの討伐に成功した。
ポイントはそれなりに貰えた。
少なくともムービング・デッドとは比べ物にならない多さだった。
ただ、危険性を考えると割に合わない。
あれだけ強い相手だし、楽勝とは言い難いからだ。
それでも風光明媚な観光地なのが大きい。
景観を楽しんだり、お土産も地元にはなさそうな珍しい物があるから、期待していた。
どちらかというとそっちが目当てだ。
だから、ある程度のシャコもどきを狩ったら、お開きとなるはずだった。
そうならなかった……。
区切りもいいので十匹目で帰ろうと決めた時、あの気持ち悪い蛇の化け物が現れた。
「バルディエル。アレって、聞いて分かるもの?」
『最低Bランクのプレイヤー複数人が必要ってことくらいだよ』
「つまり、相当どころではなく、やばいってことだね。どうするって、聞くまでもないと思うけど」
絶対にやばい。
手を出したら、いけないのだって肌で感じている。
鳥肌が立って、止まらないのだ。
間違いなく、やばい。
まだ、気付かれていないようだから、逃げるのが最善だと思う。
問題は残り二人の意見だ。
「さすがにやばいよね、アレ。今のうちに逃げた方がいいと思う」
メルキセデクが助言したのか、ユーくんは無謀な結論を出さなかった。
良かったと胸を撫で下ろす。
冒険好きな彼のことだから、試しにちょっと戦ってみようとか言い出すかと思って、冷や冷やした。
さて、残り一人は……。
「あたしもアレと戦ったら、まずいって分かる。分かるけど……アレを野放しにしていいのかが分からないんだぁ」
そういうことなのね。
脳筋なラバーさんでも戦ったら、危ない相手は見極められるし、それを選択するほど無謀じゃない。
でも、もしも、あんな化け物が市街地の方へと移動したら……。
想像するのさえ、憚られる悲惨な町の様子が目に浮かんできた。
かといって、どうにか対処できるかと言われたら、無理の一言だ。
離れていても感じる圧倒的な威圧感と得体の知れない恐怖。
どう考えてもどうにかできるとは思えなかった。
「あたしに考えがあるんだ。あんた達は先に逃げな。あたしも後から行くから……」
それはあまりに危険すぎると止めても、ラバーさんは頑として受け付けなかった。
何か、あった時の為に連絡先を交換する。
それくらいしか、できることがない。
「そんな顔しないでよ。考えがあるって言ったでしょ」
「無理はしないでください」
彼女は努めて明るく、振る舞っているように見えて、名残惜しい。
でも、彼女の考えでは、わたしとユーくんが先に逃げるのが前提条件なのだ。
後ろ髪を引かれる思いでまだ、名残惜しそうにしているユーくんの手を引いて、一路先を急いだ……。
「すごいなあ、アレ」
「あたしはワクワクしてきたけど」
三者三様とはよく言ったものだと思う。
でも、わたしの反応が普通の人の感覚だと信じたい。
なぜなら、今まさに目撃しているソレがこの世の産物とはとても思えないからだ。
この世ならざる生き物と言った方がいい。
ソレはとても大きい。
はっきりとした大きさは分からないけど、以前見た連結バスと同じくらいか、それよりも長さがある。
多分、大蛇なんだと思う。
思うとしか言えないのは胴体や尾は確かに蛇ぽいのに頭があまりにも異様だからだ。
本来、ヘビの頭がある部分にありえないものがくっついている。
人間の頭としか思えないものだった。
ただ、それも人間とは思えない大きさをしている。
巨人の頭と言われても信じてしまう大きさだ。
それが複数個くっついて、それぞれが下卑た笑みを浮かべていた。
気味が悪いのはいくつかの顔が、損傷していて、腐臭が漂う錯覚を受けることだった。
腐り落ち、焼け爛れた顔はとても恨めしい表情を浮かべているようにさえ見えた。
ソレはわたし達が倒し、放置していたシー・マンティスの死体を見て、舌なめずりをするとバリバリと耳障りな音を立てて、食べ始めたのだ……。
ユーくんがシー・マンティスを無事に討ち果たして、見事三匹のシャコもどきの討伐に成功した。
ポイントはそれなりに貰えた。
少なくともムービング・デッドとは比べ物にならない多さだった。
ただ、危険性を考えると割に合わない。
あれだけ強い相手だし、楽勝とは言い難いからだ。
それでも風光明媚な観光地なのが大きい。
景観を楽しんだり、お土産も地元にはなさそうな珍しい物があるから、期待していた。
どちらかというとそっちが目当てだ。
だから、ある程度のシャコもどきを狩ったら、お開きとなるはずだった。
そうならなかった……。
区切りもいいので十匹目で帰ろうと決めた時、あの気持ち悪い蛇の化け物が現れた。
「バルディエル。アレって、聞いて分かるもの?」
『最低Bランクのプレイヤー複数人が必要ってことくらいだよ』
「つまり、相当どころではなく、やばいってことだね。どうするって、聞くまでもないと思うけど」
絶対にやばい。
手を出したら、いけないのだって肌で感じている。
鳥肌が立って、止まらないのだ。
間違いなく、やばい。
まだ、気付かれていないようだから、逃げるのが最善だと思う。
問題は残り二人の意見だ。
「さすがにやばいよね、アレ。今のうちに逃げた方がいいと思う」
メルキセデクが助言したのか、ユーくんは無謀な結論を出さなかった。
良かったと胸を撫で下ろす。
冒険好きな彼のことだから、試しにちょっと戦ってみようとか言い出すかと思って、冷や冷やした。
さて、残り一人は……。
「あたしもアレと戦ったら、まずいって分かる。分かるけど……アレを野放しにしていいのかが分からないんだぁ」
そういうことなのね。
脳筋なラバーさんでも戦ったら、危ない相手は見極められるし、それを選択するほど無謀じゃない。
でも、もしも、あんな化け物が市街地の方へと移動したら……。
想像するのさえ、憚られる悲惨な町の様子が目に浮かんできた。
かといって、どうにか対処できるかと言われたら、無理の一言だ。
離れていても感じる圧倒的な威圧感と得体の知れない恐怖。
どう考えてもどうにかできるとは思えなかった。
「あたしに考えがあるんだ。あんた達は先に逃げな。あたしも後から行くから……」
それはあまりに危険すぎると止めても、ラバーさんは頑として受け付けなかった。
何か、あった時の為に連絡先を交換する。
それくらいしか、できることがない。
「そんな顔しないでよ。考えがあるって言ったでしょ」
「無理はしないでください」
彼女は努めて明るく、振る舞っているように見えて、名残惜しい。
でも、彼女の考えでは、わたしとユーくんが先に逃げるのが前提条件なのだ。
後ろ髪を引かれる思いでまだ、名残惜しそうにしているユーくんの手を引いて、一路先を急いだ……。
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