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29 シー・マンティスとの激戦
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「ふむふむ。いい感じよね」
『ミレイユ。高みの見物とはいい御身分ですね』
「それ、君が言うかな?」
事実、高みの見物なので否定はできない。
でも、わたしの肩の上にいるバルディエルも同罪だと思う。
それにちゃんとサポート系としての役割を果たしているつもり。
まず、ユーくん目掛けて、『アーバレスト』で魔法の矢を撃った。
これでもうお仕事ちゃんと、やり終えた感。
勿論、支援だから切らさないように続けないといけないので実際には、終わってないけど!
できるサポーターはこの管理をしっかりとしていてこそ、だったりするし……。
今回、戦うシャコぽい姿の魔物。
バルディエルがどういうのかって、教えてくれた。
サポートのサポートって、つまりそういうことなのだ。
正式な学名というか、ギルドで名付けられた名はシー・マンティス。
直訳すると海のカマキリってことらしいけど、ここは地上だから、色々と矛盾しているよね?
そのせいか、プレイヤーの間では丘シャコや陸シャコみたいな愛称で呼ばれているらしい。
でも、名前がちょっとアレだけであって、危ないモンスターのようだ。
まず、動きが機敏で外殻がそこそこ堅い。
一番、注意すべきは捕脚と呼ばれている人間でいうところの腕に相当する部位。
冗談ではなく、本当に音速を超えるマッハパンチを出せるらしい。
もはや生物として、おかしい気がするけど、モンスターだから何でもありなんだろう。
だいたいがこの世界、もうどこか狂ってしまったんじゃないかと思う時すら、あるんだから……。
おっと、いけない。
集中しないとね。
ユーくんはそのシー・マンティスへと得物の片手剣と円盾を構えて、一直線に進んだ。
だから、狙いを外すこともなく、ちゃんと支援の矢を当てた。
この辺りは『リトリー・オンライン』で遊んでいる時から、それなりに長くやっているお陰だと思う。
阿吽の呼吸といってもいい。
ぱっと見で受ける前よりもユーくんの動きは格段に良くなっている。
決して、自身の支援が優れているとか、うぬぼれている訳ではない。
これまで何度もこういう前衛と後衛に分かれて、ペア狩りをしている。
直接、感想を聞いて体感が違うと聞いた。
気のせいではなく、確かに違うらしいのだ。
だから、それなりに効果があるのは分かっている。
それにスライム狩りでいい装備を手に入れられたのも大きい。
スライムは捕食した相手を溶かして、養分として吸収する生き物だけど、養分にならない無機質の金属などはいらない物として吐き出すらしい。
だから、あのスライム狩りの際、散乱しているのは白骨だけではなかった。
いわゆる遺品もあったのだ。
ただ、遺品に関する取り決めはギルドのルールではっきりと決められていて、勝手な私物化は許されない。
グリゴリがいるので、その辺りはしっかりと管理されている。
事故記録をメモリーした端末から入念な調査が行われて、後ほど晴れて遺品への入札権利を得られるという寸法なのだ。
勿論、今回の場合、わたし達は正当なレイドだったし、証人もいる。
そこは問題なかった。
遺品は思った以上に多岐にわたるジャンルの物品があったけど、予算の関係もあるから、本当に入用の物だけに入札を留めた。
優先権があって、安価で買えるチャンスでもある。
予算が許せば、もっと色々な物も買えたんだけど……。
まぁ、それでユーくんはメインの武器ではなく、サブ武器として使うロングソードとラウンドシールドを手に入れたって訳。
どうもネームド品でかなり、いい代物だったみたい。
でも、彼はあの体格で両手持ちの大型武器を使うのが好きなのだ。
本当はそっちの系統の武器が欲しかったんだけど、今回はなかった。
わたしは『アーバレスト』で事足りる。
近接戦はしないし、できないことは自分でも分かっている。
身を守る為にガントレットとグリーブ、これだけでやめておいた。
でも、単なる防具として購入したのではない。
有用性の付加効果が付いていたから、迷わず入札した。
ただ、それだけのことなのだ。
また、話が脱線した。
ともかく、ユーくんはわたしからの身体能力を強化する支援効果と新しい装備のお陰もあって、危なげなくシー・マンティスと対峙している。
彼が得意とするのは両手持ちの大型武器で一気に攻めることであって、片手剣と盾で攻防こなしながら戦うのは本来、不得手。
それなのに余裕が感じられるということは調子がいいってことだし。
「ラバーさんの方もいい動きよね。わたしの支援なくても凄かったし」
『彼女はかなり出来る人です』
「みたいね。しかも察しも良くて、助かる!」
ラバーさんは得物を持たないまさかの無手。
音速の拳を持つシー・マンティス相手に格闘戦を挑んだ。
勇気があるというより無謀なだけなのかと心配したけど、どうやら杞憂だったみたい。
ヤツラは二匹いたから、仕方なく一匹を担当する為にそうしたのではなく、最初からそのつもりでそれだけの実力の持ち主だったから。
正直、あんな動きにくそうなワンピースで信じられない動きをしていた。
同じ人間とはとても思えない。
そんな彼女はユーくんの動きがわたしの支援で変わったのをすぐに察したのだ。
器用なことにシー・マンティスの激しいパンチを避けながら、こちらに向けてジェスチャーで「こっちにも!」とやってきた。
結果は一目瞭然。
支援を受けたラバーさんはこれまた、信じられないことにシー・マンティスを完全に圧倒している。
もう彼女の拳も音速を超えているんじゃない?
『ミレイユ。高みの見物とはいい御身分ですね』
「それ、君が言うかな?」
事実、高みの見物なので否定はできない。
でも、わたしの肩の上にいるバルディエルも同罪だと思う。
それにちゃんとサポート系としての役割を果たしているつもり。
まず、ユーくん目掛けて、『アーバレスト』で魔法の矢を撃った。
これでもうお仕事ちゃんと、やり終えた感。
勿論、支援だから切らさないように続けないといけないので実際には、終わってないけど!
できるサポーターはこの管理をしっかりとしていてこそ、だったりするし……。
今回、戦うシャコぽい姿の魔物。
バルディエルがどういうのかって、教えてくれた。
サポートのサポートって、つまりそういうことなのだ。
正式な学名というか、ギルドで名付けられた名はシー・マンティス。
直訳すると海のカマキリってことらしいけど、ここは地上だから、色々と矛盾しているよね?
そのせいか、プレイヤーの間では丘シャコや陸シャコみたいな愛称で呼ばれているらしい。
でも、名前がちょっとアレだけであって、危ないモンスターのようだ。
まず、動きが機敏で外殻がそこそこ堅い。
一番、注意すべきは捕脚と呼ばれている人間でいうところの腕に相当する部位。
冗談ではなく、本当に音速を超えるマッハパンチを出せるらしい。
もはや生物として、おかしい気がするけど、モンスターだから何でもありなんだろう。
だいたいがこの世界、もうどこか狂ってしまったんじゃないかと思う時すら、あるんだから……。
おっと、いけない。
集中しないとね。
ユーくんはそのシー・マンティスへと得物の片手剣と円盾を構えて、一直線に進んだ。
だから、狙いを外すこともなく、ちゃんと支援の矢を当てた。
この辺りは『リトリー・オンライン』で遊んでいる時から、それなりに長くやっているお陰だと思う。
阿吽の呼吸といってもいい。
ぱっと見で受ける前よりもユーくんの動きは格段に良くなっている。
決して、自身の支援が優れているとか、うぬぼれている訳ではない。
これまで何度もこういう前衛と後衛に分かれて、ペア狩りをしている。
直接、感想を聞いて体感が違うと聞いた。
気のせいではなく、確かに違うらしいのだ。
だから、それなりに効果があるのは分かっている。
それにスライム狩りでいい装備を手に入れられたのも大きい。
スライムは捕食した相手を溶かして、養分として吸収する生き物だけど、養分にならない無機質の金属などはいらない物として吐き出すらしい。
だから、あのスライム狩りの際、散乱しているのは白骨だけではなかった。
いわゆる遺品もあったのだ。
ただ、遺品に関する取り決めはギルドのルールではっきりと決められていて、勝手な私物化は許されない。
グリゴリがいるので、その辺りはしっかりと管理されている。
事故記録をメモリーした端末から入念な調査が行われて、後ほど晴れて遺品への入札権利を得られるという寸法なのだ。
勿論、今回の場合、わたし達は正当なレイドだったし、証人もいる。
そこは問題なかった。
遺品は思った以上に多岐にわたるジャンルの物品があったけど、予算の関係もあるから、本当に入用の物だけに入札を留めた。
優先権があって、安価で買えるチャンスでもある。
予算が許せば、もっと色々な物も買えたんだけど……。
まぁ、それでユーくんはメインの武器ではなく、サブ武器として使うロングソードとラウンドシールドを手に入れたって訳。
どうもネームド品でかなり、いい代物だったみたい。
でも、彼はあの体格で両手持ちの大型武器を使うのが好きなのだ。
本当はそっちの系統の武器が欲しかったんだけど、今回はなかった。
わたしは『アーバレスト』で事足りる。
近接戦はしないし、できないことは自分でも分かっている。
身を守る為にガントレットとグリーブ、これだけでやめておいた。
でも、単なる防具として購入したのではない。
有用性の付加効果が付いていたから、迷わず入札した。
ただ、それだけのことなのだ。
また、話が脱線した。
ともかく、ユーくんはわたしからの身体能力を強化する支援効果と新しい装備のお陰もあって、危なげなくシー・マンティスと対峙している。
彼が得意とするのは両手持ちの大型武器で一気に攻めることであって、片手剣と盾で攻防こなしながら戦うのは本来、不得手。
それなのに余裕が感じられるということは調子がいいってことだし。
「ラバーさんの方もいい動きよね。わたしの支援なくても凄かったし」
『彼女はかなり出来る人です』
「みたいね。しかも察しも良くて、助かる!」
ラバーさんは得物を持たないまさかの無手。
音速の拳を持つシー・マンティス相手に格闘戦を挑んだ。
勇気があるというより無謀なだけなのかと心配したけど、どうやら杞憂だったみたい。
ヤツラは二匹いたから、仕方なく一匹を担当する為にそうしたのではなく、最初からそのつもりでそれだけの実力の持ち主だったから。
正直、あんな動きにくそうなワンピースで信じられない動きをしていた。
同じ人間とはとても思えない。
そんな彼女はユーくんの動きがわたしの支援で変わったのをすぐに察したのだ。
器用なことにシー・マンティスの激しいパンチを避けながら、こちらに向けてジェスチャーで「こっちにも!」とやってきた。
結果は一目瞭然。
支援を受けたラバーさんはこれまた、信じられないことにシー・マンティスを完全に圧倒している。
もう彼女の拳も音速を超えているんじゃない?
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