異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒

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第5部

第89話

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 夕方近くになり、ようやくハイロとノネコが帰宅した。

「ふたりとも、おかえりなさい!」

「ただいま、リョウスケくん。いいにおいだね。今夜は、きいろ豆のスープかな」

 ちょうど、鍋の火を消したところだった亮介は、「うん、なかなかうまくできたよ」といって明るい表情になった。キールとコリスも空腹につき、率先して食器を用意したり、スプーンをならべたりと、夕食の準備を手伝っている。基本的に食事を必要としないミュオンは、隠し部屋へ姿を消したまま、顔を見せることはなかった。

 長方形のテーブルに料理がそろうと、それぞれ空いた席にすわり、あたたかいスープを口へ運んだ。

「それで、どうだったよ?」

 イタチのキールは、スプーンをくわえたまま質問した。精霊を見つけることができたのかどうか、亮介も気になっていた。地の精霊ジェミャと遭遇したのはハイロだけにつき、となりにすわるノネコも詳しい説明を目で訴えた。しかし、黙々と食事をとるハイロは、べつの考えにとらわれていた。

 ジェミャを外的に満足させることができれば、ミュオンについて情報を提供するという交換条件を持ちだされたハイロは、ほんの一瞬、血迷った。ジェミャは、いったいなにを知っているのか。相手のほうが(いくらか気持ちが)油断しているため、少しでも情報を引きだすべきだったとやまれた。もっとも、それにはミュオンを裏切る行為におよぶ必要があった。

「なあ、おっさん。聞いてる?」

 キールが念を押すと、ハイロは微かに眉をひそめ、天井をちらッと見た。隠し部屋にいるミュオンは、いっさい物音を立てず、やけに静かである。ハイロとの性交渉について、決心をにぶらせるわけにはいかない。半獣属と精霊の血を引く子どもは、亮介に新たな出逢いと運命をつむがせるために必要な存在だ。ハイロは、こばむミュオンに儀式的な過程だと言いきかせ、見栄みえと意地を捨てさせることに成功している。互いに、あとへは引けない関係となった今、やるべきことはひとつである。

「満月の夜、実行する」

 ハイロの短いことばが、なにをさしているのかを聞き返すほど、亮介は鈍感ではなかった。いっぽうキールは、ふしぎそうに首をかしげた。会話の内容よりもスープを食べることに集中しているコリスは、頬袋がパンパンにふくらんでいた。

(……次の満月って、あさってくらいだっけ)

 亮介は、窓の外の夕闇を見つめた。


★つづく
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