50 / 99
幕開け
47
しおりを挟む「ねぇねぇ、ソーン君この問題なんだけど…。」
「うん?どれどれ…。」
リーンがソーン君に質問をしている。ちょっと気になって僕ものぞいてみる。あれ、このグラフって…。
「先生が試験勉強用でくれたやつなんだけど、この降雨量のグラフだと『寒冷期に多くなる。』に合わなくない?」
「ああ!それはね…「そもそも載ってるグラフが違う…。」そう!……ん…え?」……あれ…?
「アルって…この授業取ってたっけ…?」…あれれ…。
「ぁ…いや!えっと…取ってない!取ってないけど!なんか、その……そう!自習室でそう言ってる人を見たんだよ!」
「なんだ、そうだったのね…。」
「…。」
なんで、僕プリントに載ってるグラフが先生のミスで違うものになってるって知ってたんだろう…。
…最近こういうの増えてきたな…。初めて行く教室のはずなのに空調が効きすぎない席を知っていたり、初めて話す人なのにどこか懐かしさを覚えたり…。終いには経験したことのない記憶みたいなものが断片的に浮かんでくる始末…。疲れている、のか…?
「疲れたー!!」
「でも、今日すごく捗った気がするわ!テオ君があんなに教えるの上手だなんて…。やっぱり先生が二人もいると違うわね…。」
「そうだね。」
勉強も終わり、僕たちは寮の自室へと帰っている。テオ君は少し用事があるとか言ってどこかに行っちゃったけど、大丈夫かな…?
「捗ったとはいえ、やっぱ勉強はやだな…。あと少しすれば試験も始まっちまうし…。」
「まぁ、でも試験が終わったら夏祭りって考えたらちょっとは頑張れそうじゃない?」
「それは一理あるかも。」
「あ、夏祭りといえばさ、ソーン君気を付けないとだね。」
「気を付けるってどういうこと?」
「え、だってソーン君夏祭りに…あれ…。」...僕なんて言おうと…?
「まぁ、夏祭りは人が多いからね…。実家に帰るにしても大変そうよね。特に今回はリリーシュ殿下の誕生日のこともあるし。」
「確かにな。あ、じゃあ俺たちはこっちだから!じゃあなリーン!」
「えぇ、じゃあね。」
「ばいばい!」
ソーンside
部屋に入り電気をつける。持って行った荷物を机に置き、ベッドに寝転がる。
………驚いたな、まさか覚えているのかと思っちゃった…。
———僕が夏祭りの最中誘拐されちゃうことを。
僕はこの楽しい楽しい夏祭りで誘拐されてしまう。これはどんな選択をとっても、どんなに行動を変えたとしても絶対に起こってしまうことだった。それほどこの世界の中で影響力をもっている。この出来事を得て、物語は大きく進んでいく、
はずなんだけど…。
今回は起こりそうにないよな。だってそもそもその原因がないんだもん。植物だって種をまかないと生えてこないし。そもそもその種すらないんだもんな…。
それにしても、今回は何もかもが変わっちゃったな…。
まさか、魔術が使えないとはね…。それに前提条件の月とも仲が悪いと来た。なんなら”呪い”っていうオプション付いちゃったし。ただ闇との親和性はまだ健在のようだけど…、本人気づいてないしな…。どうしたものか…。
今回の世界って僕からしたら、外来種によってそれまでの生態系が崩れて別のものを再構築してるって感じなんだよね。外来種っていうのは言わずもがな僕がしちゃったことなんだけど…。再構築中だから結末がいいものになるのかそれとも再構築されないままになってしまうのかわからないし…。未来が読めないのって意外と厄介だな…。
もしかして!これが!前途多難ってやつか…!いや、確かにねちょっと世界変わらないかな~とかロマンチックにできないかな~みたいなノリで歴史を少し変えちゃったのはあるけど、変わりすぎちゃったしロマンチックもくそも無かったよね。僕あの後どうなったか正直知らないし…。
でも、これだけは言える。後悔はしてない。だって、今、僕自身の人生を送れているって感じれるし。今まではどんなに抗ったとしても、強制力には勝てなかったし、結局たどる道は同じだったもん。最後がどうなるかなんて知ってたし、僕の選択なんてあってないようなものだった。生きてるっていうより生かされてるって感じだった。けど、今回は選択がちゃんと反映されているし、それのせいで僕はこの先何が起こるか分からない。だからこそ、今、最高に生きてるって感じがする。うん、後悔はしてない。ただ、後悔はしてないけど変えすぎたことに申し訳なさは感じてる。そのせいで彼の人生というか本質までも変わってしまって、彼がすごく苦労していることにも。でもね!安心して!僕は彼の本質を取り戻す方法を知っている。今までの経験のおかげだね。今は僕にその術が備わってないからどうしようもないけど、その術を手に入れたら彼に返すつもりでいる。だから、それまでは彼がこれ以上苦しまないように僕がサポートしなくちゃ…。せめてもの贖罪の意を込めて。
1
お気に入りに追加
184
あなたにおすすめの小説
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
片桐くんはただの幼馴染
ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。
藤白侑希
バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。
右成夕陽
バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。
片桐秀司
バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。
佐伯浩平
こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
僕が幸せを見つけるまで
Moon🌙.*·̩͙
BL
僕には5歳までの記憶が無い
僕は何で産まれてきたんだろう
誰も幸せになんてならないのに、
これは愛を知らずに生きてきた少年の話
これからこの少年は誰と出会い何を思うのか
この少年に幸せが訪れますように
(BのLのお話なので嫌いな方はUターンしてください)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる