君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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「ふむ、なるほど…。初めて来たはずの場所なのになぜか良い位置を知っていたり、初対面の人に懐かしさを覚えたり…。」
「それだけだったらいいんだけど、これから起きるかどうかもわからないことについて『気を付けて。』って友人に言いかけちゃったんですよね…。なんか、こう…上手く言えないけど、ただの既視感が現実にも介入してきている感じがして、少し気味が悪いというか…。」
「既視感なぁ…。あ、これ新作らしいんだ。遠慮せず食べて食べて。」
「あ、ありがとうございます。」そう言って机の上に置かれているジャムクッキーを手に取る。これはマーマレードか?


 今日はおいしいお菓子が手に入ったということでシャーマール先生に呼ばれ研究室にお邪魔している。お互いに甘いものが好きだと発覚して以来、親睦を深めるという理由だけでなく、今日みたいにお菓子をもらったから食べに来ないかとか、逆に僕がもらったからおすそ分けしに行ったりで研究室に行くことが増えた。シャーマール先生曰くエドガー先生以外で共通の話題で盛り上がることができる人ができて嬉しいらしい。僕も僕とて先生の研究の話とかリカードさんの話とかいろいろ聞くことができるし、食べたお菓子の感想を言い合えるしで研究室に行くことが楽しみになってきている。

「初めての経験のはずなのに、したことある気がするもしくは見たことある気がするっているのはやっぱり既視感だとは思うんだがな…。ただ、その現実と混在しかけている点が気になるな…。」
「今までは『あ、これ見たことあるな…。なんか、知ってるな…。』みたいな感じだったけど、今回は『そういえば、こんなこと起こるんだっけ』って先のことに対して既視感を感じるっていうか…。とにかく今まで感じていたものとなんだか違う気がするんです。」
「そうだな…。予知夢とはまた違うのか?」
「はい、その…見ていたというよりか実際にその場にいて一部始終を経験していた?って感じで。」
「ほうほう、経験していた、か…ちなみにその先に対しての既視感って具体的にどういうものだったのか聞いてもいいか?」
「えっと…実はそれが何だったのか思い出せないんですよね…。『夏祭り』っていう単語を聞いた瞬間それが起きたから、きっと夏祭りに関連するものだと思うんですけど…。」
「まぁ通常既視感は今その時にやっていることに対して起こる現象だしな…。とはいえ、こういったことは俺よりもエドガーのほうが詳しいと思うからちょっと聞いてみるな。すまない、力になれなくて。」
「いえ、お話を聞いてくれてありがとうございました。」
 そう言ってシャーマール先生はイチゴのジャムを僕はオレンジのジャムがのっているジャムクッキーをそれぞれ頬張り、お互い親指を立てて美味しさをかみしめた。


「ところで、満月が近づいているが、今体調は大丈夫なのか?」
「えぇ、前回と同様落ち着いてます。変なしびれとかもないし。まぁ、お昼だからっていうのもあると思うんですけど。」
「そうだな、顔色もいいし、魔力も安定してる…。不思議だな…入学した当初はあんなに乱れてたのに…。」
「学校生活に慣れてきたからかな。前回も当日ほんとに満月かなって思うくらいに安定してたんですよ。」
「まぁ、体調崩さないに限るよな。ていうか、試験と満月の日って被るんじゃないのか?」
 シャーマール先生が部屋にあるカレンダーを確認しながら言う。日付の隣にその日の月の形が描かれているものだ。
「あ、もろに被ります。」たしか今日って試験まで一週間ないよな…。
「だよな。それってどうなるんだ…。」
「体調とかで僕がどうしても受けることができない科目だけ日をずらしてもらうことになったんです。両親としては全部ずらしたかったらしいけど、それは返却とか成績とかいろんな人に迷惑がかかると思って。あれ、聞いてませんか?」
「なんかそんなことを聞いた気もするな…。メモをしないとすぐ忘れるからな…。」

 先生なのにしっかりしろよ~と心の中でつっこんでおく。この先生結構抜けてるとこあるんだよな~。だからエドガー先生がいつも付き添ってるんだろうな…。

「うるさいぞ。先生とはいえ人の子だ。忘れることだってある!それにな、エドガーがいつもついてきてるのはあいつが…。」
「え?」
「え?」

 あれ、今僕声に出て…?
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