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幕開け
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「あ!アルいた!!」名前を呼ばれてしばらくの間ボーっとしていたことに気が付く。え、まって今何時!?授業間に合わないかも…!!
「ごめんね、遅くなった~」焦る僕とは裏腹にのんびりとした声のソーン君。
「じゃあ、帰ろっか!今日は月が出ない日だし、ゆっくりできるね!」
…え?まって、帰るって…?
そこで僕はパッと時計を見る。時刻は放課後の時間を示していた。
「あれ…?」
「ん?どうしたの?今日はもう授業ないでしょ?もしかして何か別の用事があった?」
「あ、いや…何もないけど…。」
「じゃ帰ろうよ。二人も待ってるしさ!早く荷物まとめて…」
……あー。もしかして、さっきのリュークさんは放課後になったにも関わらず授業行かなきゃとか言ってる僕につっこもうとしたのかな?でも、「もう授業は終わりだぞ。」とかはっきり言うと、僕が恥ずかしがると思って何も言わなかったのかな…?それで、あの謎の間が...?
うわ、てか、ちょっと待って。もしそうなのだとしたら僕、僕…それはそれでめちゃくちゃ恥ずかしいぞ!!授業の時間終わってるのに授業あるから~ってなんだよほんと!!なのに何かリュークさんの顔じっと見ちゃったりして!なんか僕変に勘違いしちゃったみたい!!ほんとに何してんだろ!!もう!リュークさんにあわせる顔がないよ!!
…頼む、誰かこのまま僕の存在を消してくれぇ…。
「…大丈夫?さっきから顔が赤くなったり青くなったりしてるけど…。」
「へ?あ、ううん!何でもないよ!行こっか!」
…そっか、僕の勘違いか…。
テストまで二週間をきったということで今日は寮の談話室を占領して勉強会を開いている。今日はテオ君も来れるって言っていたからやっと3人に紹介できると思っていたんだけど、遅いな…。
「そういえば、今年でリリーシュ殿下が成人するだろ?それで夏祭りとかが結構派手になるって聞いたんだけどよ…。」課題が一段落したらしいシンが話しかける。
「それ、僕のお母さんが手紙で言ってた!町のみんなもリリーシュ殿下が来るかもっていつもより気合いが入ってるらしいんだ。」ソーン君もその話につられてペンを置いた。
「確か、普段は夏祭りがない地方でも今年は何かしらの祭りをするって言ってたわね。」
「え~そうなんだ!行ってみたいね。あ、でも僕、せっかくならソーン君の地元のほう行ってみたいな!王都からも近いし!」
「おいでおいで!アルの好きなスコーン用意して待ってるよ!」
「ほんと!?」
「でも、アルが外に出るの結構ハードル高くないかしら?遊びに行くとしてもアルのお母さん、お父さん、そしてアランさんの同伴とかになりそうじゃない?」
「うわ、絶対そうだね。」
「今も授業の合間で移動するとき、俺たちが行けなかったらアランさんが行くし、それに加えて防犯用のいっぱい魔術が詰まったペンダント持つよう言われてんだろ?」
「うん、これね。全く...僕一体何歳だと思われてるんだろ…。」
そういって首から下げていたペンダントを見る。このペンダントには水晶がはめられていて、その水晶には僕が危険を感じた時に大きな音が出るような魔術とかペンダントの持ち主がどこにいるか分かるような魔術とかが込められている。他にもいっぱいあるよって言われたけど、正直多すぎてよく覚えていない。ほんと、どんなところでシューベルト家の魔術力使ってるの…。
集中力も切れたし、休憩を取ろうと背伸びをしたら、柱の陰にテオ君がいることに気づいた。
「あれテオ君?よかった来てくれたんだ!!」
「あ、アルス君!ごめん遅れちゃった!」
「ううん、気にしないで!ほら、こっちおいでよ!」
「あら、もしかしてあなたが噂のテオ君?初めまして!私はリーン=アシュレよ。アルから色々話は聞いてるわ。」
「俺はシン。シン=フィンオール。好きなように呼んでくれ!」
「あ、僕はソーン=エンゲルス。よろしくね。」
「はい!みなさんよろしくお願いします。」ぺこりとお辞儀をするテオ君。さすが、きれいなお辞儀だな…。
「テオ君、だっけ…?僕さ、君とどこかで会った気がするんだけど…。」僕とリーンの間の席に座ったテオ君にソーン君が質問する。
「そうですか?もしかしたら同じ授業とってるのかもしれないですね!ソーンさん、何とってますか?」
「え、あ、えっと、元素学とかかな…。」
「それ僕もとってますよ!」
「じゃあ、そこで見かけたのかな…。」
「そうかもしれませんね。あ、今度の授業一緒に受けませんか?ソーンさんがいてくれたら心強いです!」
「え、あ、あぁ、それは…もちろん。」
「ちょっと、二人だけで話しを進めないで頂戴。その授業なら私も取ってるし。」
「そうなんですか?なんで気づかなかったんだろう…。あれ、お二人は取ってないんですか?」とテオ君が僕とシンの方を向く。
「俺はその授業の先生が苦手で取ってない。」
「僕も…元素学って魔術系の授業だからな…。それより、テオ君。ここでは敬語使わなくていいよ。みんなも使ってないし。」
「そうよ。敬語って堅苦しいし、なんか距離感じちゃう。」
「ほんとに…?じゃあ、お言葉に甘えて…。」
「でも、不思議ね。こんなかわいい子がいたら、私知ってるはずなのに。どこ出身なの?」
「仕事で転々としてるから曖昧だけど、ルーツはロウ国だよ。」そう言いテオ君は偶々開いてあった教科書の地図を指し示す。
「ロウ!?またすごい遠いとこだな。ん、じゃあなんでこの学園選んだんだ?遠くねえか?」
「今はこの国を拠点に仕事してるからね。」
「そうなんだ。じゃあもしかしたら他の国の学校に行ってたかもしれないってことか…。あれ、ルーツがロウ国ってことは、もしかしておばあさん…。」
「そう。元々ロウ国の貴族だったんだ。おじいさんもロウ国の人でね、駆け落ちしてほかの国に移って、それで商売を始めて今に至るって感じかな。」
「おぉ…なんというか結構壮絶なんだな…。」
「でも、駆け落ちするくらいにお互いのこと好きだったってことでしょ?素敵だなぁ…。」そんな恋愛してみたい気もする…。
「そうですね。僕もそうだと思います。」
そう言うテオ君の表情は心做しか少し暗かった。
「ごめんね、遅くなった~」焦る僕とは裏腹にのんびりとした声のソーン君。
「じゃあ、帰ろっか!今日は月が出ない日だし、ゆっくりできるね!」
…え?まって、帰るって…?
そこで僕はパッと時計を見る。時刻は放課後の時間を示していた。
「あれ…?」
「ん?どうしたの?今日はもう授業ないでしょ?もしかして何か別の用事があった?」
「あ、いや…何もないけど…。」
「じゃ帰ろうよ。二人も待ってるしさ!早く荷物まとめて…」
……あー。もしかして、さっきのリュークさんは放課後になったにも関わらず授業行かなきゃとか言ってる僕につっこもうとしたのかな?でも、「もう授業は終わりだぞ。」とかはっきり言うと、僕が恥ずかしがると思って何も言わなかったのかな…?それで、あの謎の間が...?
うわ、てか、ちょっと待って。もしそうなのだとしたら僕、僕…それはそれでめちゃくちゃ恥ずかしいぞ!!授業の時間終わってるのに授業あるから~ってなんだよほんと!!なのに何かリュークさんの顔じっと見ちゃったりして!なんか僕変に勘違いしちゃったみたい!!ほんとに何してんだろ!!もう!リュークさんにあわせる顔がないよ!!
…頼む、誰かこのまま僕の存在を消してくれぇ…。
「…大丈夫?さっきから顔が赤くなったり青くなったりしてるけど…。」
「へ?あ、ううん!何でもないよ!行こっか!」
…そっか、僕の勘違いか…。
テストまで二週間をきったということで今日は寮の談話室を占領して勉強会を開いている。今日はテオ君も来れるって言っていたからやっと3人に紹介できると思っていたんだけど、遅いな…。
「そういえば、今年でリリーシュ殿下が成人するだろ?それで夏祭りとかが結構派手になるって聞いたんだけどよ…。」課題が一段落したらしいシンが話しかける。
「それ、僕のお母さんが手紙で言ってた!町のみんなもリリーシュ殿下が来るかもっていつもより気合いが入ってるらしいんだ。」ソーン君もその話につられてペンを置いた。
「確か、普段は夏祭りがない地方でも今年は何かしらの祭りをするって言ってたわね。」
「え~そうなんだ!行ってみたいね。あ、でも僕、せっかくならソーン君の地元のほう行ってみたいな!王都からも近いし!」
「おいでおいで!アルの好きなスコーン用意して待ってるよ!」
「ほんと!?」
「でも、アルが外に出るの結構ハードル高くないかしら?遊びに行くとしてもアルのお母さん、お父さん、そしてアランさんの同伴とかになりそうじゃない?」
「うわ、絶対そうだね。」
「今も授業の合間で移動するとき、俺たちが行けなかったらアランさんが行くし、それに加えて防犯用のいっぱい魔術が詰まったペンダント持つよう言われてんだろ?」
「うん、これね。全く...僕一体何歳だと思われてるんだろ…。」
そういって首から下げていたペンダントを見る。このペンダントには水晶がはめられていて、その水晶には僕が危険を感じた時に大きな音が出るような魔術とかペンダントの持ち主がどこにいるか分かるような魔術とかが込められている。他にもいっぱいあるよって言われたけど、正直多すぎてよく覚えていない。ほんと、どんなところでシューベルト家の魔術力使ってるの…。
集中力も切れたし、休憩を取ろうと背伸びをしたら、柱の陰にテオ君がいることに気づいた。
「あれテオ君?よかった来てくれたんだ!!」
「あ、アルス君!ごめん遅れちゃった!」
「ううん、気にしないで!ほら、こっちおいでよ!」
「あら、もしかしてあなたが噂のテオ君?初めまして!私はリーン=アシュレよ。アルから色々話は聞いてるわ。」
「俺はシン。シン=フィンオール。好きなように呼んでくれ!」
「あ、僕はソーン=エンゲルス。よろしくね。」
「はい!みなさんよろしくお願いします。」ぺこりとお辞儀をするテオ君。さすが、きれいなお辞儀だな…。
「テオ君、だっけ…?僕さ、君とどこかで会った気がするんだけど…。」僕とリーンの間の席に座ったテオ君にソーン君が質問する。
「そうですか?もしかしたら同じ授業とってるのかもしれないですね!ソーンさん、何とってますか?」
「え、あ、えっと、元素学とかかな…。」
「それ僕もとってますよ!」
「じゃあ、そこで見かけたのかな…。」
「そうかもしれませんね。あ、今度の授業一緒に受けませんか?ソーンさんがいてくれたら心強いです!」
「え、あ、あぁ、それは…もちろん。」
「ちょっと、二人だけで話しを進めないで頂戴。その授業なら私も取ってるし。」
「そうなんですか?なんで気づかなかったんだろう…。あれ、お二人は取ってないんですか?」とテオ君が僕とシンの方を向く。
「俺はその授業の先生が苦手で取ってない。」
「僕も…元素学って魔術系の授業だからな…。それより、テオ君。ここでは敬語使わなくていいよ。みんなも使ってないし。」
「そうよ。敬語って堅苦しいし、なんか距離感じちゃう。」
「ほんとに…?じゃあ、お言葉に甘えて…。」
「でも、不思議ね。こんなかわいい子がいたら、私知ってるはずなのに。どこ出身なの?」
「仕事で転々としてるから曖昧だけど、ルーツはロウ国だよ。」そう言いテオ君は偶々開いてあった教科書の地図を指し示す。
「ロウ!?またすごい遠いとこだな。ん、じゃあなんでこの学園選んだんだ?遠くねえか?」
「今はこの国を拠点に仕事してるからね。」
「そうなんだ。じゃあもしかしたら他の国の学校に行ってたかもしれないってことか…。あれ、ルーツがロウ国ってことは、もしかしておばあさん…。」
「そう。元々ロウ国の貴族だったんだ。おじいさんもロウ国の人でね、駆け落ちしてほかの国に移って、それで商売を始めて今に至るって感じかな。」
「おぉ…なんというか結構壮絶なんだな…。」
「でも、駆け落ちするくらいにお互いのこと好きだったってことでしょ?素敵だなぁ…。」そんな恋愛してみたい気もする…。
「そうですね。僕もそうだと思います。」
そう言うテオ君の表情は心做しか少し暗かった。
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