君の瞳は月夜に輝く

文字の大きさ
上 下
49 / 104
幕開け

46

しおりを挟む
「あ!アルいた!!」名前を呼ばれてしばらくの間ボーっとしていたことに気が付く。え、まって今何時!?授業間に合わないかも…!!
「ごめんね、遅くなった~」焦る僕とは裏腹にのんびりとした声のソーン君。
「じゃあ、帰ろっか!今日は月が出ない日だし、ゆっくりできるね!」




 …え?まって、帰るって…?

 そこで僕はパッと時計を見る。時刻は放課後の時間を示していた。

「あれ…?」
「ん?どうしたの?今日はもう授業ないでしょ?もしかして何か別の用事があった?」
「あ、いや…何もないけど…。」
「じゃ帰ろうよ。二人も待ってるしさ!早く荷物まとめて…」







 ……あー。もしかして、さっきのリュークさんは放課後になったにも関わらず授業行かなきゃとか言ってる僕につっこもうとしたのかな?でも、「もう授業は終わりだぞ。」とかはっきり言うと、僕が恥ずかしがると思って何も言わなかったのかな…?それで、あの謎の間が...?
 うわ、てか、ちょっと待って。もしそうなのだとしたら僕、僕…それはそれでめちゃくちゃ恥ずかしいぞ!!授業の時間終わってるのに授業あるから~ってなんだよほんと!!なのに何かリュークさんの顔じっと見ちゃったりして!なんか僕変に勘違いしちゃったみたい!!ほんとに何してんだろ!!もう!リュークさんにあわせる顔がないよ!!
 …頼む、誰かこのまま僕の存在を消してくれぇ…。





「…大丈夫?さっきから顔が赤くなったり青くなったりしてるけど…。」
「へ?あ、ううん!何でもないよ!行こっか!」





 …そっか、僕の勘違いか…。





















 テストまで二週間をきったということで今日は寮の談話室を占領して勉強会を開いている。今日はテオ君も来れるって言っていたからやっと3人に紹介できると思っていたんだけど、遅いな…。


「そういえば、今年でリリーシュ殿下が成人するだろ?それで夏祭りとかが結構派手になるって聞いたんだけどよ…。」課題が一段落したらしいシンが話しかける。
「それ、僕のお母さんが手紙で言ってた!町のみんなもリリーシュ殿下が来るかもっていつもより気合いが入ってるらしいんだ。」ソーン君もその話につられてペンを置いた。
「確か、普段は夏祭りがない地方でも今年は何かしらの祭りをするって言ってたわね。」
「え~そうなんだ!行ってみたいね。あ、でも僕、せっかくならソーン君の地元のほう行ってみたいな!王都からも近いし!」
「おいでおいで!アルの好きなスコーン用意して待ってるよ!」
「ほんと!?」
「でも、アルが外に出るの結構ハードル高くないかしら?遊びに行くとしてもアルのお母さん、お父さん、そしてアランさんの同伴とかになりそうじゃない?」
「うわ、絶対そうだね。」
「今も授業の合間で移動するとき、俺たちが行けなかったらアランさんが行くし、それに加えて防犯用のいっぱい魔術が詰まったペンダント持つよう言われてんだろ?」
「うん、これね。全く...僕一体何歳だと思われてるんだろ…。」

 そういって首から下げていたペンダントを見る。このペンダントには水晶がはめられていて、その水晶には僕が危険を感じた時に大きな音が出るような魔術とかペンダントの持ち主がどこにいるか分かるような魔術とかが込められている。他にもいっぱいあるよって言われたけど、正直多すぎてよく覚えていない。ほんと、どんなところでシューベルト家の魔術力使ってるの…。



 集中力も切れたし、休憩を取ろうと背伸びをしたら、柱の陰にテオ君がいることに気づいた。
「あれテオ君?よかった来てくれたんだ!!」
「あ、アルス君!ごめん遅れちゃった!」
「ううん、気にしないで!ほら、こっちおいでよ!」
「あら、もしかしてあなたが噂のテオ君?初めまして!私はリーン=アシュレよ。アルから色々話は聞いてるわ。」
「俺はシン。シン=フィンオール。好きなように呼んでくれ!」
「あ、僕はソーン=エンゲルス。よろしくね。」
「はい!みなさんよろしくお願いします。」ぺこりとお辞儀をするテオ君。さすが、きれいなお辞儀だな…。





「テオ君、だっけ…?僕さ、君とどこかで会った気がするんだけど…。」僕とリーンの間の席に座ったテオ君にソーン君が質問する。
「そうですか?もしかしたら同じ授業とってるのかもしれないですね!ソーンさん、何とってますか?」
「え、あ、えっと、元素学とかかな…。」
「それ僕もとってますよ!」
「じゃあ、そこで見かけたのかな…。」
「そうかもしれませんね。あ、今度の授業一緒に受けませんか?ソーンさんがいてくれたら心強いです!」
「え、あ、あぁ、それは…もちろん。」
「ちょっと、二人だけで話しを進めないで頂戴。その授業なら私も取ってるし。」
「そうなんですか?なんで気づかなかったんだろう…。あれ、お二人は取ってないんですか?」とテオ君が僕とシンの方を向く。
「俺はその授業の先生が苦手で取ってない。」
「僕も…元素学って魔術系の授業だからな…。それより、テオ君。ここでは敬語使わなくていいよ。みんなも使ってないし。」
「そうよ。敬語って堅苦しいし、なんか距離感じちゃう。」
「ほんとに…?じゃあ、お言葉に甘えて…。」


「でも、不思議ね。こんなかわいい子がいたら、私知ってるはずなのに。どこ出身なの?」
「仕事で転々としてるから曖昧だけど、ルーツはロウ国だよ。」そう言いテオ君は偶々開いてあった教科書の地図を指し示す。
「ロウ!?またすごい遠いとこだな。ん、じゃあなんでこの学園選んだんだ?遠くねえか?」
「今はこの国を拠点に仕事してるからね。」
「そうなんだ。じゃあもしかしたら他の国の学校に行ってたかもしれないってことか…。あれ、ルーツがロウ国ってことは、もしかしておばあさん…。」
「そう。元々ロウ国の貴族だったんだ。おじいさんもロウ国の人でね、駆け落ちしてほかの国に移って、それで商売を始めて今に至るって感じかな。」
「おぉ…なんというか結構壮絶なんだな…。」
「でも、駆け落ちするくらいにお互いのこと好きだったってことでしょ?素敵だなぁ…。」そんな恋愛してみたい気もする…。
「そうですね。僕もそうだと思います。」
 そう言うテオ君の表情は心做しか少し暗かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

王道学園と、平凡と見せかけた非凡

壱稀
BL
定番的なBL王道学園で、日々平凡に過ごしていた哀留(非凡)。 そんなある日、ついにアンチ王道くんが現れて学園が崩壊の危機に。 風紀委員達と一緒に、なんやかんやと奮闘する哀留のドタバタコメディ。 基本総愛され一部嫌われです。王道の斜め上を爆走しながら、どう立ち向かうか?! ◆pixivでも投稿してます。 ◆8月15日完結を載せてますが、その後も少しだけ番外編など掲載します。

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。 まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。 転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。 ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。 「本当に可愛い。」 「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」 かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。 「お願いだから、僕にもう近づかないで」

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

処理中です...