映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

来住野つかさ

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117 寄贈感謝会の日に③

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「沢本清彦は、この黄金のデスマスクを当館に寄贈しようとしていた。なのに何かがあって、それを止めて、なるべくこの2体は離しておくべきと考え直したようだ。それはもしかしたら何者かに盗難される恐れがあって、リスク回避のためにまとめて置いておかない方がいいと思ったのかもしれないな」

 沢本家への寄贈手続きの書類を作りながら、西村課長がそんなことを口にした。
 別の作業をしていた田代主任もすぐに反応する。

「独自に作ったからくり箪笥に保管していたものな。さすが沢本! とつい、その箪笥に目がいってしまって恥ずかしくなったよ」

 これをしまうだけに祖父が作ったものです、と言いながら、弓香さんは貝細工が仕込まれた美しい木製箪笥の引き出しを流れるようにいくつか開けていく。と、カチリと音がして一番下の飾り台輪部分が動いた。そしてそこに入った桐箱の中に沢本が隠したかったマスクがあった。

「美しいものだったし、マスク保管に向いているので、一緒に寄贈してもいいとおっしゃって下さったが、映画に関係ないものをご寄贈いただくのも違うからねえ」

 まだ少し未練はありつつも、尾崎係長が正論を言う。そう、欲しいものを手に入れ続けていたら資料館はパンクする。先の未来を考えて取捨選択しないといけないのだ。

「······池上はまだ出勤できないのか?」
「そうだな、館内でのデスマスクお披露目報告を済ませてから、だな」

 この後、寄贈者と館内向けに佐山義之氏の映画資料の寄贈品報告会を行う。佐山家もご招待して、この度の御礼と寄贈品の目録のお渡し、確認いただきサインをもらったのち、簡単な会を催して一部の資料の公開をするのだ。
 もちろん寄贈者ご家族以外は館内職員しか参加しない。これはあくまでも寄贈者への感謝と報告をするためのものだからだ。

 


 寄贈感謝会当日。私はロッカーに入れっぱなしのジャケットを羽織って、大会議室にドリンクと軽食を用意した。尾崎係長と田代主任の手も借りて、その奥に長テーブルを3台横長に設置して白いテーブルクロスをかけ、その上にビニールに包まれた寄贈品の一部を並べていく。

「準備ありがとう、日比野さん」

 館長がゆったりと会場に入って来て、寄贈品を眺める。とても状態のいい書籍やスチル、納骨堂に収まっていた富樫のデスマスクもある。

「立派なものだね。さすが佐山氏だ」
「はい、本当に。佐山家の方々はまもなくでしょうか?」
「そう思うよ。じゃあ諸々よろしくね」
「······はい、承知しました」




 
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