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081 『夜を殺めた姉妹』特別観覧③
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「······そんな話は伺ったことがなかったですね」
「そうでしたか? とにかくその時のビリーズの館長は自国の文化財を守ることを第一に考えた。沢本さんが売却した時のビリーズ館長は日本贔屓だった。しかし80年代後半時は違った。とにかく当家はそのように聞きまして。
当家も映画業界の皆様にお世話になっている身、冨樫監督ゆかりの作品がバラバラに散逸するなんてあってはならない、とこのように娘が言いますもんですから、冨樫関連品を全てまとめてお譲りいただけるなら、という条件付きで手元に来たというわけなんです」
龍司氏が一度言葉を切ってお茶を口に運ぶ。それを見て西村課長が鷹揚に頷いて、八頭家の売買契約書に目を通す。まだ他の家の方は話の流れに困惑しているのか何も口を挟まない。
「こちらの売買契約書に拠りますと、沢本が用意した冨樫ゆかりの品は全部で11点ありましたよね? それら全てを現在もお持ちということですか?」
「いいえ。もちろん売買契約書にはその全てを購入したと記録がありますし、その点は事実です。ただ、その後に仲介者へ一部が渡ったと妹から聞いております」
「ゆかりの品の中には冨樫甲児のデスマスクも含まれていたかと思いますが、それは?」
「それは、当家よりも······あちら様がよくご存知のことではないのですか?」
龍正氏が急に佐山家の方に水を向ける。佐山家の女性陣は全く分かっていなさそうだが、江藤弁護士と牧田氏は心得ているようで、ご自身の持ち込まれた資料をめくりながら江藤弁護士が手を挙げて発言を求めた。
「ええ。八頭家の皆様のおっしゃるように、本件は当職の依頼人であった佐山義之氏が望まれたことです」
「どういうことでしょうか?」
「当職の理解しているところでは、この映画資料11点は佐山義之氏が伝手をお持ちの八頭早苗様にご依頼をして、アメリカより買い付けていただいた。ただし本件は八頭早苗様の同意の元で行われたものであり、なんら強要したものではなく、互いの利益を鑑みた結果であるものだと······」
「つまり、娘を利用していいように使い、自分の名前は出さずに欲しいものだけ手に入れて、足がつかない形で転売でもしたということですか?」
「そうでしたか? とにかくその時のビリーズの館長は自国の文化財を守ることを第一に考えた。沢本さんが売却した時のビリーズ館長は日本贔屓だった。しかし80年代後半時は違った。とにかく当家はそのように聞きまして。
当家も映画業界の皆様にお世話になっている身、冨樫監督ゆかりの作品がバラバラに散逸するなんてあってはならない、とこのように娘が言いますもんですから、冨樫関連品を全てまとめてお譲りいただけるなら、という条件付きで手元に来たというわけなんです」
龍司氏が一度言葉を切ってお茶を口に運ぶ。それを見て西村課長が鷹揚に頷いて、八頭家の売買契約書に目を通す。まだ他の家の方は話の流れに困惑しているのか何も口を挟まない。
「こちらの売買契約書に拠りますと、沢本が用意した冨樫ゆかりの品は全部で11点ありましたよね? それら全てを現在もお持ちということですか?」
「いいえ。もちろん売買契約書にはその全てを購入したと記録がありますし、その点は事実です。ただ、その後に仲介者へ一部が渡ったと妹から聞いております」
「ゆかりの品の中には冨樫甲児のデスマスクも含まれていたかと思いますが、それは?」
「それは、当家よりも······あちら様がよくご存知のことではないのですか?」
龍正氏が急に佐山家の方に水を向ける。佐山家の女性陣は全く分かっていなさそうだが、江藤弁護士と牧田氏は心得ているようで、ご自身の持ち込まれた資料をめくりながら江藤弁護士が手を挙げて発言を求めた。
「ええ。八頭家の皆様のおっしゃるように、本件は当職の依頼人であった佐山義之氏が望まれたことです」
「どういうことでしょうか?」
「当職の理解しているところでは、この映画資料11点は佐山義之氏が伝手をお持ちの八頭早苗様にご依頼をして、アメリカより買い付けていただいた。ただし本件は八頭早苗様の同意の元で行われたものであり、なんら強要したものではなく、互いの利益を鑑みた結果であるものだと······」
「つまり、娘を利用していいように使い、自分の名前は出さずに欲しいものだけ手に入れて、足がつかない形で転売でもしたということですか?」
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