映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

来住野つかさ

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082 『夜を殺めた姉妹』特別観覧④

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 冷たい龍司氏の回答に、突如として牧田氏が大声で捲し立てる。

「とんでもない! あなた方はあの冨樫と沢本の傑作映画の美術道具類にどれほどの価値があるかご存知ないのです! 本来であればあの祭壇も義父は望んだものでした。しかし当時の義父には収蔵する場所がなかった。それで諸々用意が整ったら譲っていただきたいということで話が付いていたはずですよ!」

 牧田氏の話を聞いて、八頭家の方もいきり立つような姿勢を見せた。

「何を言う。散々利用し尽くしたくせに。
 ――所詮佐山氏は娘に気持ちなどなかったのでしょう? 娘のあの家だって佐山氏の意向がふんだんに盛り込まれた造りだと聞いています。和室の方が休まるからとか言って、あんな変な造りの家を建てさせたのでしょう? 祭壇を倒壊させないよう、天井にレールを付けて上から吊れるようにまでして! いいですか、うちの娘はその造りのせいで亡くなったんだぞ! 祭壇を引き取らせ、それ用の家まで造らされ、あげくに殺されただと? あんな祭壇があるから、こんな目に遭ったんじゃ······ないか······!」

 激昂しながら話していた龍司氏の勢いが止まる。手で顔を覆って何も話さなくなった。景子夫人が夫を慰めている横で、龍正氏が吐き捨てるように佐山家側に告げる。

「真っ当な人間ならな、不倫相手の小娘にこんなことさせないさ。奥さんだって知ってたんでしょう? 弁護士さんも婿さんも庇うしかない立場でしょうけどね、うちの娘は素直だからすぐ人の影響を受けてしまう。······おおかた佐山氏の映画狂が移って娘の人生が狂ってしまったんだ!」

 会議室内が静寂に包まれる。由紀子夫人も娘さん二人も口を噤んだままだ。

「ですから娘の物は佐山家には絶対に差し上げません。資料館さん、日比野さん、落ち着いたら娘のところへ遊びに来てください。そして当家も必要なものは資料館さんに差し上げますよ。祭壇は警察が許可を出したらすぐにでも」

 ようやく落ち着きを取り戻したように見える龍司氏が、そう言ってまた沈黙に浸った。
 しばらく後、淡々とした調子で辻堂刑事が話を向けた。

「牧田さん。佐山義之さんが八頭早苗さんから購入した冨樫資料にはビリーズ版デスマスクも含まれていたと思います。しかし今回資料館へなされた寄贈品の中にはないようです。データも故意に削除された形跡がありますが、一体どこにあるのでしょう。何かご存知ですか?」
「デスマスクはたしかにありました。見落としでは?」

 
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