映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

来住野つかさ

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078 八頭家に起きたトラブル④

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 それから、ご家族のご厚意でまた日を改めて八頭女史のあの邸に入れていただけることになった。あの祭壇は八頭女史がアメリカから輸入したのは間違いないそうで、額がすごかったのでその時の売買契約書も会社の金庫にあるかもしれないとのこと。弁護士と税理士にも確認してくれるらしい。
 曰く付きとなってしまった『夜を殺めた姉妹』の祭壇も、諸々解決したら寄贈してもいいと言ってくれた。神妙な顔で西村課長が聞いていたけど、どうするつもりなのだろう。
 まずは比江島氏、八頭女史ともども、早く犯人が捕まって事件が解決してほしい。そうでないとご遺族のお気持ちはいつまでも晴れないだろう。

 



「皆、ちょっといいかい? 映画普及課に頼んで『夜を殺めた姉妹』の特観を行うよ。館長が許可してくれたから、終業後だけど時間のある人は観ようか」

 西村課長の号令で通常上映のない今日、大ホールの方で『夜を殺めた姉妹』の特観――特別観覧を行うことになった。特別観覧とは研究機関に所属している方の申請に限り、当館に所蔵している作品を学術的乃至は研究目的のために特別に上映することを指している。閉架式図書資料の閲覧申請と要は同じなのだが、フィルムの上映には収蔵庫からの持ち出しに際し数日かけての温度調整から運搬と、色々な手順が必要なので、たとえ館内の人間であっても観たいから程度ではそう安々と受け入れてくれないのだ。

 今回はこの映画が事件に大きな意味があるかもしれないということで、辻堂刑事も観覧を希望していたので、課長はそのおこぼれで我々も便乗させてもらおうと思ったのだそう。

「日比野ちゃんは時間平気そう?」
「······はい、観るつもりてす」
「この頃何かおかしくない? 俺変なことした?」
「いえそんな」
「ちぇー。もうちょっと前もって言ってくれたら母にお迎え頼んだのになあ」

 池上との会話にギクシャクしているところに、山森が割り込んで来て空気を変えてくれた。

「ねえ、けいちゃん。あの、今日ってさ······」

 今度は山森が躊躇うように何かを言いかける。「どうしましたか?」と返そうとした時に、西村課長の言葉が続く。

「それから。今日は辻堂刑事と、八頭家、それから比江島和志氏、······佐山家も来るらしい。タイミングがいいのか悪いのか、佐山氏の弁護士から館長に話があったようなんだよね。だから正直何が起こるか分からないけど、よろしく」

 最後は少し課長の目が泳いでいた気がするけれど、私にもその三家が集まったところが想像出来ないし、何より『夜を殺めた姉妹』を観ることで動くものがあればいい。そう思っていた。

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