映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

来住野つかさ

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036 映画獣? クラファン詐欺?③

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 映写室に向かって移動している時に、辻堂刑事は堪えられないといった風にくくくと笑い出した。

「日比野さんは聞き込みに向いてるんじゃない? 8階であんまりだったから趣向を変えたんでしょう?」
「聞き込みなんて出来ませんけど、何となく変えてみたんです。お客様トラブルでのクレーム電話は、時々総務の電話が塞がっている時に取ることがあるので、その時の感じを使ってみようかなと。あと図書室でも利用者トラブルに困って応援呼ばれることもありますし」
「まだ若いのに色々なことしてるんだねえ」
「いや、そんなこともないですけどね。では後で控室にお邪魔させてもらうことにして、まずは映写室に行きましょう」



     ◇     ◇     ◇



 映写室は上映会場の少し上、中二階といえる場所にある。ここの会場はスクリーンが大きく、座席も傾斜をつけているため、会場の天井も二階ぶち抜きになっている。大きな映写機の横で、二人の映写技師が今上映したフィルムを巻き戻しつつ、次の回で流すフィルムの切れや音飛びなどを確認している。

「馬場さん、原さんお疲れ様です。ちょっと聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
「おー、お疲れ様。さっき終わったばかりだからいいよ。何かあったの?」

 二人とも長く務める男性だが、仕事柄常に映写室か地下のフィルム収蔵庫に籠もり、あまり他の人と話すことがないからなのか、たまにこうして他の人間が来ると珍しくて饒舌になる面白いおじさん達だ。

「ええ。実は当館によく来ているお客さん同士でトラブルがあったらしくて。でも私は事務室から出ないんで実際どんなトラブルがあったか分からないんです。西村課長に誰か話知ってる人がいたら聞いてきてって言われまして」
「そうなんだ? この人は?」

 後ろでじっとしている辻堂刑事を見て聞いてくるが、私はしれっと嘘をついた。

「この人は辻堂さん。他館から研修に来たんですけど、こういうことも見えておけって······課長が」
「まあ映画ファン同士のトラブルなんて日常茶飯事だけどね。どんな件なの?」
「映画コレクターさん達の揉め事とかそういう系なんです。何かご存知だったりしますか?」
「あの有名な五人のこと? あ、あの女のコレクターさんいるじゃない、八頭さんだっけ? あの人さあ、比江島さんと付き合ってるよね」
「······えっ?」

 先日殺された比江島氏の恋人? 映画コレクターの八頭さんが?

 予想外の話で驚いていると、映写技師達はいたずらが成功したような笑顔でくすくす笑いながら教えてくれた。

「隠してるのかなぁ。でも彼らっていつもほとんど決まったところに座るのよ。佐山さんはセンターの前の方、それで比江島さんは左の後ろの方。八頭さんは前まで右端の真ん中ら辺だったんだけど。ここ数ヶ月前からかな、比江島さんの隣に座ることが多いよ。なんか肩寄せたりしてるし。後ろの方の席だと映写の光でちょっと見えちゃったりするんだよね」
「何度か見てるから、そうなんじゃないかなあって。でも二人が結婚している人なのかも知らないし、フリーなら別に止めるものでもないしね」

 
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