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035 映画獣? クラファン詐欺?②

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「すみませんね、ずっと案内して頂いて。あとは上映会場の方ですね」
「はい。それと映写室ですかね」

 私達は二階の上映会場に移動した。ここは約300名が収容出来る座席数があり、縦にも横にも大きいと驚かれる大型のスクリーンが据えられている。映画によっては縦横比――画面アスペクト比が違うものも上映することになるためだ。
 例えばシネスコ――シネマスコープサイズというのをよく聞くと思うが、それは通常の画面アスペクト比であるスタンダードサイズと比べて2倍近く横長のサイズのものを言う。昔のアナログテレビがスタンダードサイズ、デジタルハイビジョンのテレビのサイズはその後に出来たビスタビジョンサイズといえば分かりやすいだろうか。
 それなのでテレビでシネスコ映画を観ると、ワイドサイズに変更して上下に黒枠が入って小さく収まることになる。テレビ放送局によっては左右を切られて放送されてしまう。
 その他にも映画会社によって細かなサイズ設定で作品が作られていたので、当館では70ミリの大画面映画でも観られるようになっている。その代わりブローアップされていない8ミリや16ミリフィルムでの映画上映にはこのスクリーンは大きすぎるため、そういう作品の時は地下の小ホールで上映することもあるが、こちらは通常は閉じていて、研究者の特別観覧の時などに使用している。

「今日の上映はちょうど一回目が終わったところですので、話を聞きに行ってみましょう」

 エレベーターで二階に降りると、もぎりのお姉さん達がチケットの半券を数え、入場者のカウントをしている。会場の方では守衛さんが座席のチェックやトイレに人が残っていないか、忘れ物の確認などを行っている。

「すみませんお疲れ様です。資料課なんですけど、館内でトラブルが起きていたというクレームが入りまして、ここ最近で何かなかったか聞いて回ってるんですけど」

 辻堂を刑事と言ってしまうと事件のことと関連付けられてしまうので、私は前にやったことがあるようなクレームをでっち上げて適当に質問をしていくことにした。
 辻堂刑事は心得たように笑顔でメモを持っている。

「お疲れ様です。ええと今日は特にないですよ。守衛さん呼びに行くようなことはなかったですよね?」

 お姉さん方で確認をし合ってくれている。そうすると、守衛さんの一人が「ああ、それなら」と声をかけてくれる。

「今日は何もないけど、申し送りをしている業務日報があるから、そっちで確認してみてくれる? お客さんトラブルとかは結構な率で同じ人が繰り返すから、見た目の特徴とかも書いてあるから。控室で読んでいいよ」
「ありがとうございます! もし他に何かあったら内線で資料課に一報入れて下さいね」
「りょーかい」


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