12 / 131
012 佐山氏の手紙発見②
しおりを挟む
「これは、あの私家本を発行した際に献本で来館予定だった佐山氏が、突然弁護士同伴でお持ちになった手紙らしいんだ。館長が言うには、何か切羽詰まったものを感じたため、これで気休めになるのならと受け取って館長室の金庫に保管しておいたらしい」
「その時から狙われているような気がしていたのでしょうか?」
「その辺は分からない。数年前のことだしね」
「だけど、他に味方になってくれる人とかいなかったんですかね?」
西村課長の言葉に反応して田代主任がぽつりと呟くが、誰も答えられずに沈黙になってしまった。
たしかに、上映会場や図書室にはよくいらしていた方らしいが、佐山氏はあくまでお客様だ。多くの貴重な資料の寄贈をいただき当館運営にご協力下さってもおられたが、それ以上の関係ではない。
それだから、彼が当館でどのような方と知己を得ていたかは知らない。長年当館に通っておられても顔見知り以上の関係にはならなかったのかもしれない。あるいはそれは意図的なものだったのかもしれない。
「佐山氏の手紙にはこんなことが書かれていただろう?『他所からの購入依頼には原則お断りだが、当館が間に入って研究機関もしくは当該作の遺族にのみ寄贈すること。例外は認めない』と」
「じゃあ、大学の研究機関ならいいけど、大学の先生個人が自身の研究のために欲しがるとかだと駄目ってことですね?」
「そういうことだな。まあ基本、個人には渡さないことになるが、情報は回るだろうからそこら辺をどういう風に差し止めるか、かな」
西村課長が眉間を揉むようにし、手紙を元に戻した。
「どこかの研究機関や、雑誌や書籍系なら国会図書館がまとめて引き受けてくれたらいいのですが。これから要確認ですね」
尾崎係長が話を引き取り、そういえば、と私を見やる。
「上の書斎には目録はなかったんだろう? でも私家本には詳細な掲載一覧がある。この本は佐山氏お一人で作成されたと聞いているから、やはりどこかに目録はありそうだよね」
そうか、あの本を自身で作られたのなら目録化あるいはデータベース化していそうな気がする。
「書斎にはプリントアウトした形では見つかりませんでしたが、書斎デスクには鍵がかかっていまして、そこにもしかしたらあるかもしれません」
「そっか。じゃあ俺達で見てみようか。課長、弁護士から借りた鍵の中には邸の鍵遺骸は預かっていないのですか?」
「うーんと、警備会社の警報を切る方法と、邸の鍵と、あとカードキーなのかなって思われるものがある」
「カードキー?」
私が首を傾げると、尾崎係長が疑問に答えてくれた。佐山氏の訃報が入った後、佐山氏の弁護士事務所から館長室に使いが来て、ここの鍵一式の類を託されたのだそう。
「日比野ちゃん、デスクはカードキーで開く感じ?」
「······そういえば引き出しが開かなかったな、とは思いましたが、鍵穴は見てないかもしれません」
「その時から狙われているような気がしていたのでしょうか?」
「その辺は分からない。数年前のことだしね」
「だけど、他に味方になってくれる人とかいなかったんですかね?」
西村課長の言葉に反応して田代主任がぽつりと呟くが、誰も答えられずに沈黙になってしまった。
たしかに、上映会場や図書室にはよくいらしていた方らしいが、佐山氏はあくまでお客様だ。多くの貴重な資料の寄贈をいただき当館運営にご協力下さってもおられたが、それ以上の関係ではない。
それだから、彼が当館でどのような方と知己を得ていたかは知らない。長年当館に通っておられても顔見知り以上の関係にはならなかったのかもしれない。あるいはそれは意図的なものだったのかもしれない。
「佐山氏の手紙にはこんなことが書かれていただろう?『他所からの購入依頼には原則お断りだが、当館が間に入って研究機関もしくは当該作の遺族にのみ寄贈すること。例外は認めない』と」
「じゃあ、大学の研究機関ならいいけど、大学の先生個人が自身の研究のために欲しがるとかだと駄目ってことですね?」
「そういうことだな。まあ基本、個人には渡さないことになるが、情報は回るだろうからそこら辺をどういう風に差し止めるか、かな」
西村課長が眉間を揉むようにし、手紙を元に戻した。
「どこかの研究機関や、雑誌や書籍系なら国会図書館がまとめて引き受けてくれたらいいのですが。これから要確認ですね」
尾崎係長が話を引き取り、そういえば、と私を見やる。
「上の書斎には目録はなかったんだろう? でも私家本には詳細な掲載一覧がある。この本は佐山氏お一人で作成されたと聞いているから、やはりどこかに目録はありそうだよね」
そうか、あの本を自身で作られたのなら目録化あるいはデータベース化していそうな気がする。
「書斎にはプリントアウトした形では見つかりませんでしたが、書斎デスクには鍵がかかっていまして、そこにもしかしたらあるかもしれません」
「そっか。じゃあ俺達で見てみようか。課長、弁護士から借りた鍵の中には邸の鍵遺骸は預かっていないのですか?」
「うーんと、警備会社の警報を切る方法と、邸の鍵と、あとカードキーなのかなって思われるものがある」
「カードキー?」
私が首を傾げると、尾崎係長が疑問に答えてくれた。佐山氏の訃報が入った後、佐山氏の弁護士事務所から館長室に使いが来て、ここの鍵一式の類を託されたのだそう。
「日比野ちゃん、デスクはカードキーで開く感じ?」
「······そういえば引き出しが開かなかったな、とは思いましたが、鍵穴は見てないかもしれません」
10
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる