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013 佐山氏の手紙発見③

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 西村課長が鍵を持ち、我々も後に続く。
 再び書斎に戻った私は、電気をつけてデスクの前に立った。
 たしかにさっきの記憶どおり鍵穴は見当たらない。
 カードキーを差し込める場所もないが、どうやって使うのだろう。
 全員であれこれ調べてみるが分からず困惑していると、池上が「あ、そうだ」と口にする。

「何か思い付くことあったのか?」
「いやー、違います。スマートフォンの充電、ここでさせてもらおうかなって」

 へへへ、と笑いながら池上はデスクの上に置かれたワイヤレスタイプのスマートフォン充電器にスマートフォンを載せた。ちゃっかりしている。

「電気泥棒」
「まあちょっとくらいいいじゃない。最近充電の減りが早くってさ。······あれ?」

 スマートフォンを見て不思議そうに置いたり持ち上げたりしながら首を傾げている池上の手元を、尾崎係長が覗き込んだ。

「これ、電源入ってないのか?」
「いやー、コンセントは繋がってますよ? 俺のスマートフォンがおかしいのかな」
「······違うな、これダミーなんじゃないか」

 西村課長が充電器にカードキーを翳すと――ロック解除された音がした。

「当たりっすね! 課長すごい!」
「こら騒ぐな。······じゃあ開けるぞ」
 
 少しだけ白手袋の手を握りしめてから、西村課長が言った。
 引き出しは全部で四つあり、横長の大きなもの一つと、右手に三段の形で三つ。まず横長の大きなものを見てみることになった。
 引き出しの中は、キャビネ判のスチール写真がいくつかとワラ半紙で綴じられた会報らしきものが入っていた。

「何かは全く分かりませんね」
「そうだな、映画ファン活動報告みたいだ。スチールも映画スチルというわけではなさそうだ。これは後回しにしよう」

 丁寧に戻してから、右側の三段式の引き出しを上から順に開けていく。
 一段目には手帳。それと佐山氏の蔵書印だが、現存の形を残したいタイプの彼は、自身のコレクションには殆ど押すことはない。私家本発行の際に作ったものか、それとも映画コレクション以外の蔵書には押していたのか?

「手帳は、悪いが後で見させてもらおう。何かキーワードになるものが書かれているかもしれない」

 尾崎係長が几帳面に引き出しの中の写真を撮りながら、手帳を取り出し作業を進める。
 それから二段目。ここには手紙類が入っている。
 最後に三段目。一番深いその引き出しには、『国立映画資料館御中』と書かれた封筒が一つだけ納まっていた。

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