僕の番が怖すぎる。

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一章 降って湧いた災難

お前にしか勃たない。

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 二人ともちょっと、疲れた顔をしてきたね?

《やぁ、僕らも加わっても良いかな?》
《さっきから気になっていたのよね。》

 あら?皆どうしたの集まってきて?

《マリーが面白い話をしているから気になった。》
《夢で見た話か何か?》
《理想の夫の話でしょう?》
《オメガバースの話と聞いたわ!!》

 え?私の作り話がぶっ飛んでるから気になって来た?
 失礼だな。本当の話だってば。

《夫とそれでよくうまく行ったな?》

 そんなのあいつの物理ゴリ押しだよ。

】に帰るって言っても、


『お前にしか勃たない。』


 なんて言って止めるし。

 あら…………皆なんで固まったのかな?

 何か私はまずいことを言ったのかな?
 私の感覚が壊れてるのかな?

《あー…。うん、続けて。》
《マジにかよ?!》
《ありえないだろう?!》
《その時点でそんな男はポイするわよ!》

 うん?あ、続けるの?良いけど、みんななんて顔してるの?

《オイ、プロポーズの言葉としてそれは…ないよな》
《そもそも、プロポーズなのか?》
《モンスターだし、αっていうのは傲慢で勝手なものだから…》

 あ、次はブラッディマリーをそれから何か甘いものが欲しい。
 創作物とかで吸血鬼がトマトジュースで代用とかありえないけど、何となく飲みたくなった。
 あいつの味は美味いとしか言い様がなくて、未だにあれ以上の美味しいものを私は知らないな。

《マリーは聞いてないな…》
《マリーは酷い味オンチ!》
《お菓子か酒しか興味がない!》
《偶にとんでもないもん食ってるよな?》
《『生の肉が食べたい。』とか言ったのを聞いたときは、目ん玉が飛び出そうになった。》

 ……………よく分かってるよ。味蕾が死んでいるとしか思えないからな、私は。
 生肉、美味しいよ?ホントだから。

 まぁ、私のその味覚の原因になったと思われることをさっきよりも詳しく話そうか?

《いやいや!遠慮するよ!!》

 いや、その前に当時のあいつの行状が、如何に酷いかを愚痴りたい。


 ◇◇◇


 まだ他にも僕を悩ませるものはあった。

朱点シュテン…僕に早くソレを食わせろよ。」
 
 こう言いながら僕はこいつのちんちんにしゃぶり付く為、襲いかかった。
 いつの間にかこいつの凶器のようなソレ・・が大好きになってしまった。
 頬杖をついて寝転がっているこいつに近づき、着物の間から手を入れソレを弄る。

「お前から来るなんて珍しい。どうしたんだお姫様。」
「うるさい!別にそういう気分なだけだし…」   

 こいつの閨で過ごすのも三月が過ぎて、僕はこいつの言う『俺好みのエロいお姫様』になってしまった。
 二回目の発情期ももうすぐ来るし、色々と良くなってしまったのでこいつのところで過ごしていた。 

 毎日毎日、僕を抱き潰して色々と仕込んだ為に、僕はこいつのソレがないと寂しくて仕方がない体になってしまった。

「お前もなんでこんなに小さい僕のことに拘るわけ?」
「百合だから。」

 訳がわからない反応ばかり返ってくる。

「俺はお前の事をずっと愛すると言ったぞお姫様。」
「はいはい、そうですか。」
「本当にそうだからな。」

 いつの間にかこんなやり取りをするようになっていたが
 まだまだ信用なんて出来なかったし、相変わらず僕の家の反対などの障害もあった。
うち】のアホなやつが呪詛などを命知らずにもこいつに掛けて、簡単に返され酷い目にあったなども、父からの文で知った。

「今は本当にお前にしか勃たない。」
「へー、そうなんですね。」

 また僕を怒らせることを発言をする。
 もう怒る気も失せて呆れに近いが、こいつは僕が拗ねたと勘違いしたらしい。
 
「俺のお姫様は本当に可愛いな。こっちに来い。可愛がってやるから。」

 …僕を抱くときや『俺のお姫様』なんて呼ぶときは、ほんとうに嬉しそうに、愛しそうに僕に微笑む。

 こんなんだから、勘違いしてしまいそうになる。
 こんなんだから、【青】に帰れない。

「僕を与えてやるんだから満足させろよ!」
「俺のお姫様、その期待に応えよう。」

 こいつはにっこりと笑った。

 その笑顔を見るとなんとなく離れ難くなる。
 
 そこからはもう、こいつの好きなままに抱かれるのが最近の流れだった。


 ◇◇◇


《ハイハイ!質問!発情期の周期ってどれくらい?創作によって違いがあるから知りたいわ。》

 うん?発情期の周期?

 そうだな、鬼族の若い個体は年齢固定される前だと、大体は三ヶ月くらいに一回という周期くらいかな?

 《年齢固定?》

 外見年齢が止まる事だね。そのものの全盛期で止まる様に出来てるよ。
 強い力を持つ個体ほど長寿でね、私の夫は十代後半から二十代前くらいで異様に若々しかったね。
 息子よりもずっと見た目は若くてね、二人が並ぶと不思議な気持ちになったよ。

《リリィは?》

 私自身もそれくらいで止まったよ。

 私の前世は…物凄く長生きかな。
 確か…二千歳を過ぎてからはもう数えてなかったね。

《《《《》》》》

 あら?

 なんか、嘘だろう?みたいな顔をしているね。
 本当にそうだからね。


 ◇◇◇


 最近の自分はおかしいくらいにお腹が空く。
 あいつが僕に沢山自分を飲ませるけど、あいつのスメラギ様の直系の濃い血を飲んでも飲んでも飲んでも、
 …まだ足りない。

 あいつも僕が摂りすぎるからか、最近は自分の囲っている奴ら…後宮に行って食事をしてる。
 この事も最近僕を苛つかせる原因だ。

 出会った当初は、僕が皇様の新しい妾妃になるんだと思ってたこいつは、それを嫌っていた。
 鬼族はもともと一夫一妻が普通だ。
 皇の血統に限り、妾などを大量に抱えている。


『お前にしか勃たない。』


 それを何度言われても信用できないのはそれだった。

 そしてこの人が僕の様子を見に来るのも嫌だった。


百合ユリ様ご機嫌麗しゅう。」


 首もとにあいつの【青薔薇】を咲かせているのは茨木イバラキ
 あいつ…朱点の腹心の部下だ。


 ◇◇◇


 眷属などが持つ【華】って場所によって、寵愛度合いが違うんだ。
 眷属?あぁ…最初に言ってた奴隷階級のものとか、従者だね。
 皆、主の【華】を体に植え付けられてるよ。
 命令に逆らったらそれが首輪みたいなもんで…わかるよね?
【枯】らされたら最後、死が待っている。

《oh………》
《………………》
《ぇ?!》

 あら…皆、吃驚してるな。

 言ったでしょ?物凄い階級社会だって。
 私は上から数えて三番目の地位だったけど、大変なのは変わらないよ。
 あいつの父母である皇様と后陛下に殺される事も普通にあるからね。

《なっ?!》

 私はそんなことになるような事はしなかったけれど、あいつは行動とか態度などが、とてもとても酷いから、良く皇様から凄まじい折檻をされてたな。
 体の半分が【消去けさ】れていた時もあったしな。
 
 あ、話が飛んですまない。
 それで、首もとにあるのが一番【縛】りの強制力が働いて、寵愛が大きい。
 目につく場所にあると誰の物かその【華】を見るとひと目で分かるし、
 周りにもこいつは自分のものだから、誰も手を出すなって意味でもある。

 私があいつの【華】が全身に咲いていて、驚いたって言うのを話したけれど、これはそれだけ執着されている証なんだ。
 これも普通ならまずありえないものなんだ。
【血の伴侶】くらいしか全身に華を咲かせない。
 これがある時点で、あいつのとこ以外に嫁げなくなったのが確定していた。

 本当になにしてくれちゃってんだって感じだよね?

 特に同族からもとても怖れられ、化け物扱いされていた、あいつの伴侶や腹心の部下なんて、恐ろしすぎる存在だった。


 ◇◇◇


 茨木はα性の鬼でとても強い力を持つ。
 長い金色の髪と金の瞳でしっとりとした物腰の、美しい容姿をしている大人の女性だ。
 いつも柔らかく微笑むひとで、女のα性といえば妙に凛々しく、男とも女ともどちらともとれる、そんな物腰の姉くらいしか知らない僕としては、その女性らしさに吃驚した。

 彼女の父は皇様の腹心の部下のαの男、彼女の母は后陛下の護衛で鬼族では大変珍しい女のαだ。
 彼女の母があいつの乳母で、乳姉弟として育ち、そのまま眷属になり仕えているそうだ。

 それに…噂であいつの愛人を長くしていると聞いていた。

 あいつは三大欲求に忠実で、喰う、ヤる、寝る。
 という順番でしたいがままにする。

 他の腹心の部下の四童子と呼ばれる、男のα性のものたちにも時々手を出して抱いていたらしい。

 聞いたときは彼らが、可哀想に思えた。

 全員番がいるのに、あいつの性欲処理をさせられるなんて哀れだし、しかも抱かれる側とか…
 あいつはそのへんがとても壊れているからヤバい。
 僕にもとんでもない倒錯的かつ変態的な行為をさせたがる。

「何か御用ですか?茨木様。」

 彼女は僕を様付けで呼ぶが、それは僕があいつの愛人として寵愛されているからだ。
 元は彼女の方が、階級が高いから、あいつにするような口は叩けない。
 僕は良いところの子なので、そのへんの猫かぶりというか、行儀とかは厳しく躾けられている。
 家族やあいつでさえ驚くほどの外向きの態度を僕はできる。
 逆にあいつに対する対応が、酷すぎるだけなんだけれど。

 何故かわからないが、出会ったときからあいつに対しては、とても気安く対応してしまった。
 今更皇子扱いしても嫌がるし、あいつも僕を滅茶苦茶に甘やかすから、もうどうでも良くなった。

「若が与えられる食事は血や肉ばかりでしょうし、干菓子などもお持ちしたので良ろしければお召し上がり下さい。」

 (柔らかい笑みをこのひとは絶やさない。
 僕みたいなやつに対しても凄く優しい。
 けれど…)

「お気遣いありがとうございます。
ですが私の様なもののことなど、放っておいてください。」
「……こちらに置いておきますから、お好きなときにお召し上がり下さい。」

 彼女には悪いが、少し機嫌が悪くあたってしまった。

 それもこれも茨木に、あいつが飼ってるやつらに、僕はどうやら嫉妬しているらしい。

『運命』だから、僕が発情期に入りかけでその匂いなどに惹かれて、
 それで番にしただけだと思わされる。
 

 (こんなにも僕の体中にお前の【青薔薇】を咲かせやがって!)


 (なのになんでそんなことをするんだよ!!)


 (何が『お前にしか勃たない』だよ!!!)


 僕はこの頃、かなり荒れていた。


 ◇◇◇
 

《その旦那はクズだ!》

 まぁ…普通はそうだよね。
 真相を知ったら、背筋がゾクッとしたんだけどね。

 ん?何でもないよ。

《そのプロポーズ?の言葉はない!》
《だよな。》
《ありえないわ!》

 それには激しく同意するよ。 

 でも、あの言葉になんでかときめいちゃったんだよね。

 皆が怖れるけれど、とても惹かれる存在からそんな風に求められるなんてね。

 それにあいつは後で、もっともっと嬉しい言葉を言ってくれた。
 だからそちらをプロポーズと思うことにしたんだよ。

《こんなことを言っているシュテンが?!》

 あいつは事情があって、話すのが困難なんだ。
 でも、本当は滅茶苦茶ロマンチストで、こちらが恥ずかしくなることばかり話すやつだよ。
 もちろん、卑猥なこと以外だよ。

《うーん、想像出来ないわね。》
 
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