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二章 あいつの存在が災厄
うそはいってないだまっていただけ。 フノスもあかもいわないだけ、うそはいえない。
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朱点と同じ立場に立った百合の苦悩と遠距離恋愛?のような状態のお話です。
───────────
酒呑童子の一件はなんとか片付いたが、次に大きな問題が出てきた。
元々ことが上手く運んでも、家出はするつもりだった。
《どうして?》
色々と無茶をしたのは分かっていたし、気持ちの整理とかを含め、
まぁ…色々とあいつと離れて考えたかったんだ。
そばにいると色々となし崩しで流されてしまうのがわかっていたからな。
《リリィはシュテンの体に堕ちたと言っていた。》
《シュテンは物凄く上手》
《リリィは快楽に弱く、シュテンのペニスがないと我慢できないのでは?》
そうだよ!そのとおりだよ!!そうだったんだよ!!!
あいつのあれはヤバすぎるんだ…家出中も本当に疼いて疼いて仕方がなかった。
発情期も一人でなんとか我慢していた。
本当に辛かった。
あいつの声や【あれ】がなければ耐えれなかったな。
私が憔悴していた様子を見て、黒はあいつに対してのあたりが悪くなるし…
《【あれ】?》
それについてはこれから話すよ。
おまけにあいつは今まではしなかった【華】を通して愛を、毎日毎日、呆れるほどに囁きだすし…
義父母が与えていた枷も私が外したから、話す言葉が全部呪いになってしまって…
色々と大変だったらしい。
《らしい?》
四天王やゲンジ達が知らせてくれようとしたが、綱が堰き止めてくれていた。
茨木や四童子が私のもとに何度も説得に来たそうだ。
だけど私も問題を抱えていたんだ。
そろそろ酒を少し控えるかな。
【華】を与えた日のことは、今も鮮明に思い出せるが、よりクリアな頭であいつの顔を思い出したい。
◇◇◇
───【【青】の家、百合の実家】───
「妃殿下、両陛下にお詫びして早くお戻りください。」
うるさい…
「朱点様が心配ではないのですか黒様も連れて帰ってくるなど何を考えているのです!!」
うるさい、うるさい………
「そもそも私たちは散々反対していたのに。貴方様が望んでいたのではないのか?」
うるさい、うるさい、うるさい!
「【煩い!】
父様たちもなんでそういうことばかり言うの!少しは考えてよ!!
あんなふうに嫁いで初めて帰ってきたのに!
少しは僕のことを心配とか出来ない訳?」
「ぐっ!」
「ウッ!」
「あ…!」
「「「………………………!!!!!!」」」
強制的に言葉を奪われ、もどかしそうにする父たち。
まただ、またやってしまった。
【至】ってしまってから、こんな調子だ。
あいつみたいに【域】や睦み合う時に箍が外れてとかでなく、今の僕はしょっちゅうこんな感じになる。
黒や綱は魂の持つ力の強さや、僕との魂の繋がりの為か、こういった事にならないが、
【青】の者たちはこんな感じになる。
あいつを皆が恐れていた理由の一つ、『話す言葉全てが呪いをばら撒く』を自分がすることになってしまった。
すぐに父たちを開放するが数刻と経たず、また似たようなことをすることになる。
それに周りのものたちも僕と黒、綱や【鬼キラー】たちを恐れる。
強い力を持つ存在とは本当に面倒だ。
あいつは生まれたときからこんな事に悩み暮らしてきていたのか。
その事を理解できるようになったのは良いことだが、
こんな事を理解したくもなかったな。
それに父たちは僕の名を呼ぶことさえ怖ろしいらしい。
『妃殿下』や『貴方様』などと家族から呼ばれると悲しい。
これもあいつが望んでいたことだな。
【名】を呼ぶ。自分を恐れない。気安くして欲しい。
こんなことさえあいつには無理だった。
実家でも色々と問題を起こしてしまっていたので、色々と察した姉が数日後に迎えに来る。
それまでは大量に支配した眷属のゲンジ達を使い、【酒呑童子】の一件に関わったものに制裁を加えている最中だ。
それも僕の怖ろしい『銀の鬼姫』『銀の君』の話をより盛り上げている。
噂の力とあいつの…【呪】により、僕は義父母よりも神格が高くなってきているらしい…
生まれたての亜神なのに。
それに、あいつの調子もまだ悪いと聞く。
憂鬱な気分が晴れない。
こんな気持ちのままだと、また呪いをばら撒きそうだ。
今の僕が怖いらしく黒も近寄らないし本当に母は悲しいよ。
◇◇◇
───【アルフヘイム 神子の【域】『聖域』】───
「悪かったね、百合。この子もちゃんと叱ったから。
それはもう…物凄くね。」
目の前には土下座をしている、姪の姿がある。
微動だにせずにその姿勢を続けているから、人形にしか見えない。
「姉様、フノス、もう良いから。この子のおかげで助かったことも色々あったんだ。
けれどお前も、もう少しひとの話を聞かないとダメだぞ。」
「わかった。」
すぐさま立ち上がり、コクリと頷く姪。
少し、早まったかもしれない。
この子もあいつとよく似たところがあるから、もう少し厳しくしないと駄目なのかしれない。
「フノス!反省しているのか?」
姉はかなり怒っている。
その顔は昔、僕のお尻を叩いてお説教した時を思い出して怖いです。
「うそはいってないだまっていただけ。
フノスもあかもいわないだけ、うそはいえない。」
そんな姉やその隣で静かに怒っているお義姉様を置き、平然と話す姪。
お義母様に叱られているあいつを思い出すな…
不思議そうな顔をしているあいつと違って、フノスは口が立つ。
「はぁ…この子はなぁ…もうなぁ…すまんな義弟よ。
こいつには私と紅薔薇で説教する。」
亜神耳長特有の長い耳をヒクヒクさせて、怒っているお義姉様。
フノスのそれはお義姉様譲りでしたか…
「ほんとうのことしかフノスははなしていない。」
この子も耳が心なしか下がっているな…
姉様のお尻たたきは痛いからね。
あいつみたいに大きくなってからも問題を起こしてはいけないから、
ちゃんと反省しないとダメだよ。
「した。」
「「「フノス!!!」」」
◇◇◇
こんなやりとりがあった。
そして、あいつのいない初めての発情期を迎えそうな今…
「おじさま、これ。
さみしいときにぎゅっとする。
そうしたらがまんできる。」
姪が持っているのは誰かの手作りの人形だった。
頭には皇の家のものの証の金色の双角、限りなく白に近い金髪、金色と銀色の色違いの眼、女の子にも男の子にも見える顔に、華奢な体格の鬼の子を模した人形だった。
とてもよく出来た、女の子の好きなお人形遊びに使うものだった。
耳長族はとても手先が器用で、寒い国でもあるから、長い冬の間に家に籠もる。
無聊を慰める為に家具や小物など様々なものを作るのが得意だ。
神子などの住むこの聖域は、季節など関係なく常春の【域】で、初めて訪れたときは驚いた。
あいつのとは全く違う。
あいつのとても寂しく、日にちや時間などの感覚が無くなるかのような、そんな虚無の世界ではない。
お義姉様曰く、亜神の在り方で如何様にも変わるそうだ。
そんな優しい、不思議な場所が、このとても寒い国に存在した。
「どうしたのフノス。
それは…くれるの?
僕の夫ではないけれど、少し似ているね?」
あいつの髪の色を変えて女の子っぽくしたような感じだ。
「だめ、あげれない。
これはフノスのうんめいのひと。」
また、訳のわからないこと言っているな…
ひょっとして、僕が将来産む子どもなんだろうか?
「ちがう、あかがうむ。」
え?!
それ…ほんとかな?
マジに?!
てことは…僕がお父様になるのかなぁ?
そういうことは…したことあるけれど。
あいつも具合が悪いみたいだけれどまさかね。
身籠っていたりするのかなぁ?
嫌な汗が出てきた。
「それもすこしちがう。
ずーっとずーっとずーーっと、さきってまえにフノスはいった。」
少し興奮しているのか耳が上下に動いている。
この子は表情も変わらないし、声に抑揚もないけれど、耳を見ればなんとなくわかる。
うーん、物凄く突っ込んで話をしたいけれど、凄く怖いよ。
「フノスはうんめいにあいたい。
あいたい。だからあかとおじさま…むらさきをたすけた。
さみしいとき、かなしいとき、そばにいてほしい。
そんなうんめいにはやくあいたい。
あかもきっとそうだった。」
うん、よくわかるよ。
彼女はコクリと頷き、話し続ける。
少し、耳が下がっているから悲しいのかな?
「でも、いまはあえない。
だからフノスはかなしい、さみしい。
フノスはあかがうらやましい。」
そっか、この子もあいつと同じなんだな。
抑圧して育てていないから、自由に色々とやらかしていると聞いたし、された。
涙を流して泣くことも、声を荒げて怒ることも、
呪いによって出来ないらしいから本当にかわいそうだ。
「フノス!おいで」
彼女を手招きし、腕に抱く。
そして優しく頭を撫でてやる。
あいつの喜ぶ、義母があいつに良くしたことだ。
「朱もこうすると喜ぶんだよ。」
「しっている、ははうえがしてくれる。」
そういえばお義姉様は、お義母様と双子だった。
◇◇◇
とてもややこしいことだけれど、ハイエルフの長である神子は始祖の魂をその身に宿す。
つまり、そういうことだ。
《???》
うーん、わからないか。
義姉の魂は義母の双子の姉のものだった。
あちらではそれ程珍しくはないのだが、子孫の中に転生するということを繰り返しているんだよ。
【戦乙女】達などもそうだね。
この能力は義母や長じてからの百合も出来る様になったね。
《?!》
◇◇◇
「おじさまもつくればいい。」
なんのこと?
「あかににたにんぎょう。」
そんな感じで腕の良い職人を紹介してもらい作ってみた。
皇のものの証の金色の双角、鮮やかな朱い髪、金と銀の色違いの眼、そして…
とてもあいつに似せて如実に模した、でっかいちんちん。
うん、これがないとあいつとは認めれないからな。
「うーん、初めてにしては結構上手くできたかな?」
「百合、朱点様がその…そういうのが凄いのは知っているが…そのね?」
「義弟よ、それはどうかと思うが…
甥は、お前にそんな姿しか思い出させない程の生活をさせていたのか?」
────ボトッ
「変態耳長!!!!!」
姪が持っていた、大切な『フノスのうんめいのひと』人形を取り落とし、叫んだ。
「「「変態耳長???」」」
◇◇◇
朱点人形を抱いて初めての一人で耐える発情期を迎えることになった。
あいつもだけれど僕も鬼族の亜神として肉体的にはとてもとても強くなっている。
薬なんてほぼ効かない。
だから辛かったら帰ることも視野に入れておきなさいと言われた。
最後に嗅いだあいつのあの匂い。
あれは…絶対にヤッている。
箍を外したから、【神鞭鬼毒酒】などで理性も奪えると聞いたから…
もしかしたら、昔のご乱交野郎のような状態になっていたのかもしれない…
涙がぽろぽろと溢れてくる。
僕は鬼族ではありえないと言われるくらいの貞操観念を、姉様から叩き込まれているし、僕自身の質がそうだった。
そんな時にあいつから初めて【華】を通した【交心】が来た。
あいつはそれまで『俺はお前を縛りたくない』とか言って一切そういった事はしなかった。
眷属などともする連絡や位置を知ることも、あいつはせずに僕の【白百合】の匂いのみで追跡した。
だから、それが来たのは晴天の霹靂といえるような出来事だった。
──『百合…俺のお姫様、聴こえるか?』──
──『え?…朱天?!』──
あいつはこれまでは一切、こういったことをしなかった。
多分、僕の人よりも大分重く、長い発情期を心配していたんだろう。
いつも『お前のそのでっかいちんちんをしゃぶらせろ』とかそういうことを言っていたし、行動をしていたからな。
お前に散々、卑猥なことを喋るなとか言っているが、僕も大概だな。
発情期に限るが。
──『怒られると思うが俺は…』──
──『いい、聴きたくない!事実でも嘘でもそれは僕が嫌だから。
そもそも箍を外してそうなってしまったのは僕のせいだから………』──
──『お前は気高く、潔癖過ぎるほどの魂を持つ。
だから、俺はお前を抱いてからは全てのものを切った。
茨木も、あれ自身が耐えれない欲求で俺を頼った時でさえ、捨ておいた。
そうしてまでもお前を手に入れたかった。
今話していることは弁解ではない。
俺は事実しか言えん。
もしくは、口を噤むかだ。』──
そんなことをフノスも言っていたな。
──『お前が嫌なら、お前の従者にあらましを伝える。
知りたくなったら俺や綱に聞け。
それから…大丈夫か?お前は初めての時から俺が居なかったことなど無い。
一人でやり過ごせるか?今は帰るのが無理でも、必要なら俺が行く。
抱かれるのが嫌なら抱きしめ、口づけし、優しく頭を撫でてやる。
添い寝もする。
だから…無理をするな。』──
なんだろう、こいつがこんなことを言うなんて…
お前は本当はそういう欲求を我慢できないだろうが!
──『お前が望まないなら、俺は本当に出来ない。そういうふうになってしまった。』──
はぁ?何言っているんだよ!
──『だから、これから俺はお前に毎日愛を囁やく。』──
──『なにを言っているのかわからないんだけれど?』──
──『俺は潜在的には母上など軽く超えるくらいの眷属を支配できる。
だが、俺は俺の域を見てもわかるように俺は空虚だ。
主人の魂と繋がっているものたちを、
他のものを飲み込み、狂気へ誘うようなそんな俺を誰が愛せる?
お前しか要らない。お前だけだ。
俺のところまで堕ちて欲しいと思ったのも、ずっと仲良く暮らしたいと思ったのも、
お前だけだ。』──
こいつは【域】の中限定で本当にこっちが真っ赤になる様な恥ずかしいことを言う。
交心でも同じことをしている!
──『僕が拒絶するとか思わないのか?』──
──『耳長の亜神たちは、俺に協力的だ。』──
そういえば姉は義姉と共にこいつに大恩があると言っていた。
フノスは…あの子は同じ存在として味方しそうだな。
──『お前も大概のワガママだな。』──
──『これが俺の在り方だ。』──
こんなふうに今まで以上にあいつと毎日話をするようになった。
肉体的には辛い僕の発情期も、あいつの発情期もお互いに話して耐えた。
その間に茨木や四童子、義父母の側近なども僕のもとを訪れたが、綱に止められ手出しできなかった。
そうそう、綱は茨木と関係を持ったらしく、童貞を卒業した次の日に眷属にしてくれと頼まれた。
『おれの覚悟を見せないといけない』そう言っていたけれど、付きまといはやめておけよ!
そんな友人に僕は【名】も与えた。
茨木と夫婦になるには必要だと思ったからだ。
あいつは凄い!
とても強い魂を持っている。
だからあいつとはとても特別な繋がりを築けた。
まだまだ力の制御も甘く、亜神としての在り方も定まらない。
悩み続けている僕のもとに痺れを切らしたあいつが迎えに来るまで、
約一年ほどの期間をアルフヘイムの聖域で過ごした。
ある時、あまりにも強く僕を求めたあいつが、アルフヘイムまで来た。
門番たる【戦乙女】と争い揉めて、その知らせを受けた僕が駆けつけた。
───────────
続きます。
───────────
酒呑童子の一件はなんとか片付いたが、次に大きな問題が出てきた。
元々ことが上手く運んでも、家出はするつもりだった。
《どうして?》
色々と無茶をしたのは分かっていたし、気持ちの整理とかを含め、
まぁ…色々とあいつと離れて考えたかったんだ。
そばにいると色々となし崩しで流されてしまうのがわかっていたからな。
《リリィはシュテンの体に堕ちたと言っていた。》
《シュテンは物凄く上手》
《リリィは快楽に弱く、シュテンのペニスがないと我慢できないのでは?》
そうだよ!そのとおりだよ!!そうだったんだよ!!!
あいつのあれはヤバすぎるんだ…家出中も本当に疼いて疼いて仕方がなかった。
発情期も一人でなんとか我慢していた。
本当に辛かった。
あいつの声や【あれ】がなければ耐えれなかったな。
私が憔悴していた様子を見て、黒はあいつに対してのあたりが悪くなるし…
《【あれ】?》
それについてはこれから話すよ。
おまけにあいつは今まではしなかった【華】を通して愛を、毎日毎日、呆れるほどに囁きだすし…
義父母が与えていた枷も私が外したから、話す言葉が全部呪いになってしまって…
色々と大変だったらしい。
《らしい?》
四天王やゲンジ達が知らせてくれようとしたが、綱が堰き止めてくれていた。
茨木や四童子が私のもとに何度も説得に来たそうだ。
だけど私も問題を抱えていたんだ。
そろそろ酒を少し控えるかな。
【華】を与えた日のことは、今も鮮明に思い出せるが、よりクリアな頭であいつの顔を思い出したい。
◇◇◇
───【【青】の家、百合の実家】───
「妃殿下、両陛下にお詫びして早くお戻りください。」
うるさい…
「朱点様が心配ではないのですか黒様も連れて帰ってくるなど何を考えているのです!!」
うるさい、うるさい………
「そもそも私たちは散々反対していたのに。貴方様が望んでいたのではないのか?」
うるさい、うるさい、うるさい!
「【煩い!】
父様たちもなんでそういうことばかり言うの!少しは考えてよ!!
あんなふうに嫁いで初めて帰ってきたのに!
少しは僕のことを心配とか出来ない訳?」
「ぐっ!」
「ウッ!」
「あ…!」
「「「………………………!!!!!!」」」
強制的に言葉を奪われ、もどかしそうにする父たち。
まただ、またやってしまった。
【至】ってしまってから、こんな調子だ。
あいつみたいに【域】や睦み合う時に箍が外れてとかでなく、今の僕はしょっちゅうこんな感じになる。
黒や綱は魂の持つ力の強さや、僕との魂の繋がりの為か、こういった事にならないが、
【青】の者たちはこんな感じになる。
あいつを皆が恐れていた理由の一つ、『話す言葉全てが呪いをばら撒く』を自分がすることになってしまった。
すぐに父たちを開放するが数刻と経たず、また似たようなことをすることになる。
それに周りのものたちも僕と黒、綱や【鬼キラー】たちを恐れる。
強い力を持つ存在とは本当に面倒だ。
あいつは生まれたときからこんな事に悩み暮らしてきていたのか。
その事を理解できるようになったのは良いことだが、
こんな事を理解したくもなかったな。
それに父たちは僕の名を呼ぶことさえ怖ろしいらしい。
『妃殿下』や『貴方様』などと家族から呼ばれると悲しい。
これもあいつが望んでいたことだな。
【名】を呼ぶ。自分を恐れない。気安くして欲しい。
こんなことさえあいつには無理だった。
実家でも色々と問題を起こしてしまっていたので、色々と察した姉が数日後に迎えに来る。
それまでは大量に支配した眷属のゲンジ達を使い、【酒呑童子】の一件に関わったものに制裁を加えている最中だ。
それも僕の怖ろしい『銀の鬼姫』『銀の君』の話をより盛り上げている。
噂の力とあいつの…【呪】により、僕は義父母よりも神格が高くなってきているらしい…
生まれたての亜神なのに。
それに、あいつの調子もまだ悪いと聞く。
憂鬱な気分が晴れない。
こんな気持ちのままだと、また呪いをばら撒きそうだ。
今の僕が怖いらしく黒も近寄らないし本当に母は悲しいよ。
◇◇◇
───【アルフヘイム 神子の【域】『聖域』】───
「悪かったね、百合。この子もちゃんと叱ったから。
それはもう…物凄くね。」
目の前には土下座をしている、姪の姿がある。
微動だにせずにその姿勢を続けているから、人形にしか見えない。
「姉様、フノス、もう良いから。この子のおかげで助かったことも色々あったんだ。
けれどお前も、もう少しひとの話を聞かないとダメだぞ。」
「わかった。」
すぐさま立ち上がり、コクリと頷く姪。
少し、早まったかもしれない。
この子もあいつとよく似たところがあるから、もう少し厳しくしないと駄目なのかしれない。
「フノス!反省しているのか?」
姉はかなり怒っている。
その顔は昔、僕のお尻を叩いてお説教した時を思い出して怖いです。
「うそはいってないだまっていただけ。
フノスもあかもいわないだけ、うそはいえない。」
そんな姉やその隣で静かに怒っているお義姉様を置き、平然と話す姪。
お義母様に叱られているあいつを思い出すな…
不思議そうな顔をしているあいつと違って、フノスは口が立つ。
「はぁ…この子はなぁ…もうなぁ…すまんな義弟よ。
こいつには私と紅薔薇で説教する。」
亜神耳長特有の長い耳をヒクヒクさせて、怒っているお義姉様。
フノスのそれはお義姉様譲りでしたか…
「ほんとうのことしかフノスははなしていない。」
この子も耳が心なしか下がっているな…
姉様のお尻たたきは痛いからね。
あいつみたいに大きくなってからも問題を起こしてはいけないから、
ちゃんと反省しないとダメだよ。
「した。」
「「「フノス!!!」」」
◇◇◇
こんなやりとりがあった。
そして、あいつのいない初めての発情期を迎えそうな今…
「おじさま、これ。
さみしいときにぎゅっとする。
そうしたらがまんできる。」
姪が持っているのは誰かの手作りの人形だった。
頭には皇の家のものの証の金色の双角、限りなく白に近い金髪、金色と銀色の色違いの眼、女の子にも男の子にも見える顔に、華奢な体格の鬼の子を模した人形だった。
とてもよく出来た、女の子の好きなお人形遊びに使うものだった。
耳長族はとても手先が器用で、寒い国でもあるから、長い冬の間に家に籠もる。
無聊を慰める為に家具や小物など様々なものを作るのが得意だ。
神子などの住むこの聖域は、季節など関係なく常春の【域】で、初めて訪れたときは驚いた。
あいつのとは全く違う。
あいつのとても寂しく、日にちや時間などの感覚が無くなるかのような、そんな虚無の世界ではない。
お義姉様曰く、亜神の在り方で如何様にも変わるそうだ。
そんな優しい、不思議な場所が、このとても寒い国に存在した。
「どうしたのフノス。
それは…くれるの?
僕の夫ではないけれど、少し似ているね?」
あいつの髪の色を変えて女の子っぽくしたような感じだ。
「だめ、あげれない。
これはフノスのうんめいのひと。」
また、訳のわからないこと言っているな…
ひょっとして、僕が将来産む子どもなんだろうか?
「ちがう、あかがうむ。」
え?!
それ…ほんとかな?
マジに?!
てことは…僕がお父様になるのかなぁ?
そういうことは…したことあるけれど。
あいつも具合が悪いみたいだけれどまさかね。
身籠っていたりするのかなぁ?
嫌な汗が出てきた。
「それもすこしちがう。
ずーっとずーっとずーーっと、さきってまえにフノスはいった。」
少し興奮しているのか耳が上下に動いている。
この子は表情も変わらないし、声に抑揚もないけれど、耳を見ればなんとなくわかる。
うーん、物凄く突っ込んで話をしたいけれど、凄く怖いよ。
「フノスはうんめいにあいたい。
あいたい。だからあかとおじさま…むらさきをたすけた。
さみしいとき、かなしいとき、そばにいてほしい。
そんなうんめいにはやくあいたい。
あかもきっとそうだった。」
うん、よくわかるよ。
彼女はコクリと頷き、話し続ける。
少し、耳が下がっているから悲しいのかな?
「でも、いまはあえない。
だからフノスはかなしい、さみしい。
フノスはあかがうらやましい。」
そっか、この子もあいつと同じなんだな。
抑圧して育てていないから、自由に色々とやらかしていると聞いたし、された。
涙を流して泣くことも、声を荒げて怒ることも、
呪いによって出来ないらしいから本当にかわいそうだ。
「フノス!おいで」
彼女を手招きし、腕に抱く。
そして優しく頭を撫でてやる。
あいつの喜ぶ、義母があいつに良くしたことだ。
「朱もこうすると喜ぶんだよ。」
「しっている、ははうえがしてくれる。」
そういえばお義姉様は、お義母様と双子だった。
◇◇◇
とてもややこしいことだけれど、ハイエルフの長である神子は始祖の魂をその身に宿す。
つまり、そういうことだ。
《???》
うーん、わからないか。
義姉の魂は義母の双子の姉のものだった。
あちらではそれ程珍しくはないのだが、子孫の中に転生するということを繰り返しているんだよ。
【戦乙女】達などもそうだね。
この能力は義母や長じてからの百合も出来る様になったね。
《?!》
◇◇◇
「おじさまもつくればいい。」
なんのこと?
「あかににたにんぎょう。」
そんな感じで腕の良い職人を紹介してもらい作ってみた。
皇のものの証の金色の双角、鮮やかな朱い髪、金と銀の色違いの眼、そして…
とてもあいつに似せて如実に模した、でっかいちんちん。
うん、これがないとあいつとは認めれないからな。
「うーん、初めてにしては結構上手くできたかな?」
「百合、朱点様がその…そういうのが凄いのは知っているが…そのね?」
「義弟よ、それはどうかと思うが…
甥は、お前にそんな姿しか思い出させない程の生活をさせていたのか?」
────ボトッ
「変態耳長!!!!!」
姪が持っていた、大切な『フノスのうんめいのひと』人形を取り落とし、叫んだ。
「「「変態耳長???」」」
◇◇◇
朱点人形を抱いて初めての一人で耐える発情期を迎えることになった。
あいつもだけれど僕も鬼族の亜神として肉体的にはとてもとても強くなっている。
薬なんてほぼ効かない。
だから辛かったら帰ることも視野に入れておきなさいと言われた。
最後に嗅いだあいつのあの匂い。
あれは…絶対にヤッている。
箍を外したから、【神鞭鬼毒酒】などで理性も奪えると聞いたから…
もしかしたら、昔のご乱交野郎のような状態になっていたのかもしれない…
涙がぽろぽろと溢れてくる。
僕は鬼族ではありえないと言われるくらいの貞操観念を、姉様から叩き込まれているし、僕自身の質がそうだった。
そんな時にあいつから初めて【華】を通した【交心】が来た。
あいつはそれまで『俺はお前を縛りたくない』とか言って一切そういった事はしなかった。
眷属などともする連絡や位置を知ることも、あいつはせずに僕の【白百合】の匂いのみで追跡した。
だから、それが来たのは晴天の霹靂といえるような出来事だった。
──『百合…俺のお姫様、聴こえるか?』──
──『え?…朱天?!』──
あいつはこれまでは一切、こういったことをしなかった。
多分、僕の人よりも大分重く、長い発情期を心配していたんだろう。
いつも『お前のそのでっかいちんちんをしゃぶらせろ』とかそういうことを言っていたし、行動をしていたからな。
お前に散々、卑猥なことを喋るなとか言っているが、僕も大概だな。
発情期に限るが。
──『怒られると思うが俺は…』──
──『いい、聴きたくない!事実でも嘘でもそれは僕が嫌だから。
そもそも箍を外してそうなってしまったのは僕のせいだから………』──
──『お前は気高く、潔癖過ぎるほどの魂を持つ。
だから、俺はお前を抱いてからは全てのものを切った。
茨木も、あれ自身が耐えれない欲求で俺を頼った時でさえ、捨ておいた。
そうしてまでもお前を手に入れたかった。
今話していることは弁解ではない。
俺は事実しか言えん。
もしくは、口を噤むかだ。』──
そんなことをフノスも言っていたな。
──『お前が嫌なら、お前の従者にあらましを伝える。
知りたくなったら俺や綱に聞け。
それから…大丈夫か?お前は初めての時から俺が居なかったことなど無い。
一人でやり過ごせるか?今は帰るのが無理でも、必要なら俺が行く。
抱かれるのが嫌なら抱きしめ、口づけし、優しく頭を撫でてやる。
添い寝もする。
だから…無理をするな。』──
なんだろう、こいつがこんなことを言うなんて…
お前は本当はそういう欲求を我慢できないだろうが!
──『お前が望まないなら、俺は本当に出来ない。そういうふうになってしまった。』──
はぁ?何言っているんだよ!
──『だから、これから俺はお前に毎日愛を囁やく。』──
──『なにを言っているのかわからないんだけれど?』──
──『俺は潜在的には母上など軽く超えるくらいの眷属を支配できる。
だが、俺は俺の域を見てもわかるように俺は空虚だ。
主人の魂と繋がっているものたちを、
他のものを飲み込み、狂気へ誘うようなそんな俺を誰が愛せる?
お前しか要らない。お前だけだ。
俺のところまで堕ちて欲しいと思ったのも、ずっと仲良く暮らしたいと思ったのも、
お前だけだ。』──
こいつは【域】の中限定で本当にこっちが真っ赤になる様な恥ずかしいことを言う。
交心でも同じことをしている!
──『僕が拒絶するとか思わないのか?』──
──『耳長の亜神たちは、俺に協力的だ。』──
そういえば姉は義姉と共にこいつに大恩があると言っていた。
フノスは…あの子は同じ存在として味方しそうだな。
──『お前も大概のワガママだな。』──
──『これが俺の在り方だ。』──
こんなふうに今まで以上にあいつと毎日話をするようになった。
肉体的には辛い僕の発情期も、あいつの発情期もお互いに話して耐えた。
その間に茨木や四童子、義父母の側近なども僕のもとを訪れたが、綱に止められ手出しできなかった。
そうそう、綱は茨木と関係を持ったらしく、童貞を卒業した次の日に眷属にしてくれと頼まれた。
『おれの覚悟を見せないといけない』そう言っていたけれど、付きまといはやめておけよ!
そんな友人に僕は【名】も与えた。
茨木と夫婦になるには必要だと思ったからだ。
あいつは凄い!
とても強い魂を持っている。
だからあいつとはとても特別な繋がりを築けた。
まだまだ力の制御も甘く、亜神としての在り方も定まらない。
悩み続けている僕のもとに痺れを切らしたあいつが迎えに来るまで、
約一年ほどの期間をアルフヘイムの聖域で過ごした。
ある時、あまりにも強く僕を求めたあいつが、アルフヘイムまで来た。
門番たる【戦乙女】と争い揉めて、その知らせを受けた僕が駆けつけた。
───────────
続きます。
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