僕の番が怖すぎる。

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二章 あいつの存在が災厄

泣かないで、僕の朱い鬼。 お前の昏い顔も、悲しい、苦しい顔もそんなの見たくない。

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『泣かないで、僕の朱い鬼。
お前の昏い顔も、悲しい、苦しい顔もそんなの見たくない。
ずっと、お前に与えた【天】の色の様に、にこにこ笑っていなきゃ僕は嫌だ。
僕にはもう…お前の天しか見れないんだからな。』


 ◆◆◆

 ────「勝手に色々と決めて行動するなと、何度も言いましたよね?」

 突然来訪したあいつに対応する為、
 近くに居る【戦乙女ヴァルキュリヤ】に息子を預けようとした。

「ははうえ…」

 クロが泣きそうな顔をしている。
 あいつの方には恐ろしい視線をやっているが、一応は父親なのだからやめなさいと言いたい。

 僕は黒を抱きしめ、頭を撫でてから

「お父様とお母様は大事なお話があります、フノスたちと遊んでいなさい。」

「はい、ははうえ。
でも、ちちがアホなことをすればわたしがしまついたします。」

 とても幼子がする様な表情ではない、鋭い義父によく似た眼差しであいつを睨み続けている。
 黒からのあいつの評価は底辺以下だな。

「それはやめなさい、母が困ります。」

 色々と父子仲を拗らしているのは、本当になんとかしなくてはいけない。
【戦乙女】に面倒をみてもらったのが悪かったのか?

 黒を姪のところへ連れて行くように頼む。

「「「姫様、何かあればあの赤鬼のケツを叩きますゆえ。」」」
「「「野蛮で好色な鬼よりも我らに嫁す方が良いのでは?」」」
「「「お労しい。」」」

戦乙女こいつら】はこの調子だから、少し離れてほしい。
 あと、揃って喋るのもやめてくれ。

「「「我らはこういうものです。お慣れ下さい。」」」

 本当に厄介だよな…こいつらは。
 
「「「そう思われているのも我らには筒抜けでございます。」」」

 お願いだから、話にくいから、向こうに行ってほしい。
しゅ】や【血吸ちすい】を使うよ?

「「「畏まりました、何か御座いましたらお呼び下さいませ。」」」

 少し慌てて退出してゆく。


 彼女達が去るのを見届けてから、あいつに話しかける。

「さて、朱点。
お前にまだ私は【】を返していませんでしたね?
これからお前に私から【華】を与えます。」

「保留ではなかったのか?」

 確かにそう言っていたよ。
 でも、それでお前の不安が除けるなら構わない。

「自由なお前を縛るのも嫌でしたから。
私たちのはじまりはそれは酷いものでした。
勝手に【伴侶】にもされましたしね。
ところでお前が私にかけた【宣誓縛り】を教えてください。
それを参考に私は【】を返します。」

 お前に僕があげられる【愛】を与える。
 これからする宣誓は僕が生きている限り、ずっとお前を【縛】る呪いだ。
【至】った僕や、生来からの亜神であるお前は、永遠の命を持つ不死の存在だ。
 それはとても重い枷になる。

 鬼族の番への執着心は本当にヤバい。 
 呪いで自分の最愛を縛りつけ永遠に虜にする。
『番の血しか飲めない』や『番しか抱けない』などが無難ではあるが、
 こいつにはそれが難しい。

 何を与えてやれば良いのか本当に分からなかった。

 でも、こいつもずっと不安で…
 悪いことをした。

「…………………………」

 沈黙が続く。

 なんでそんなに気まずそうな顔をする?
 口の重いこいつにキツめの視線を遣り、促す。


「…無い。」 


「はぁ…?!何言ってんだよ。
ちゃんと答えろ。今度こそボコるぞ!」

 あ、素が出た。
 マズいな茨木イバラキも四童子もいるのに。
 綱、お前は笑いを堪えるな!殴るぞ!!

 ──『悪ぃ。』── 


 とうとうこいつが話しだす。

「俺はお前を一切縛らない、何でも許す。
お前のすること全てを受入れる。
…そう縛った。
俺に。」

 おい…マジか?!
 それは【縛】りでも何でもないだろう!

 こいつの考えることも行動も突き抜けすぎていて、もう何も言えない。
 でも、その大きな愛に込み上げてくるものがある。
 少し泣きそうな顔を見られたくない。


酒呑童子シュテンドウジ】騒動のあとに家出して、
 色々と悩みなどを整理し、気持ちを落ち着けていたこの一年ほどの間。
【至】り、亜神となった事で姉たちに相談する時間が欲しかった。

 鬼のα精神Ωではなく、
 耳長エルフの在り方に僕は近かった。
 そういったこともあり、今まで『ヒト』として過ごしてきたことに…
 決別する必要もあった。
 
 決して、義父母に会わす顔がないとか、皇宮を破壊してゴメンなさいとか、
 そんな事だけじゃないよ。
 ホントだからね?

 ずっとお前が恋しかった。
 あの頃に、僕が寝ていたひと月ほどの間にした事を…
 知りたくなかった。
 黒を巻き込んで色々と暴走してしまったところも反省している。

 どうしてお前みたいに僕は素直になれないんだろうな?
 こんなにも大きな真っ直ぐな愛を、お前はいつも僕に与えてくれている。

 …なら、僕はお前の背負うものを、ひとつ減らしてやる。
 それしか返してやれない。
 それしか思いつかない。
 大好きなお前の笑顔に似たこの青空も今日で、
 今ここで見納めになる。
 それでもきっと後悔なんてしないから………───────────────

 
 ───────────
 この章の最後のお話に入ります。
 巻いても【酒呑童子】の話が長くなりました。
 最後は甘く締めたいです。
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