【完結】魔王なのに、勇者と間違えて召喚されたんだが?

綾雅(りょうが)今年は7冊!

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第1章 強制召喚

7.下がれと命じた。オレの前を歩くなど千年早い

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 王族の命令でオレに刃を向けたのだろう。先ほどの謁見で、壁際に控えていた奴らだ。見覚えがある騎士達を指さした。

「貴様と貴様、あと貴様もか……『戻れ』」

 命じる言葉に魔力を乗せる。圧倒的な力の差がある今、彼らに逆らう手段はなかった。魔力に操られて命令に従う男達を並ばせ、溜め息をついた。

「こ……殺さないで、くれ」

「もうすぐ子供が生まれる、だからっ!」

「命令だったんだ」

 必死に助命嘆願する彼らは、涙を流しあれこれ垂れ流し、威厳もなく見た目も哀れな状態だった。そこまで恐れるならば、国王の命令を拒否すればよい。まあ彼らの立場でそれが出来るかと問われたら、難しいだろう。しかし王族が先に逃げたのであれば、剣を投げ捨てて投降する選択肢もあった。

「強者に武器を向け攻撃する意思を示した時点で、貴様らの生殺与奪権せいさつよだつけんはオレに預けられた。大人しく従えば命は奪わぬ」

「「「はい」」」

 驚くほどよい返事だ。誰かに命じられて生きてきた人間は素直だった。もちろん簡単に寝返るから信用は出来ないが、ひとまずの手足にちょうどいい。爪が伸びたと思えば悪くなかった。要らなければ切り落とすだけのこと。

「サタン、様。こいつら、いらない」

 リリアーナはたどたどしい口調で訴える。何を言いたいのか最後まで聞く態度を見せたオレに、必死で言葉を探して身振り手振りで伝えた。

「裏切る。いらない! わたし、役に立つ! こいつら、使えない。わたしだけ、足りない?」

 金の瞳がすこし潤んでいる。裏切る可能性がある部下を増やす必要はない、自分が一番役に立つが1人では足りないかと不安そうに首を傾けた。

 ぽんと金髪の上に手を乗せれば、嬉しそうに笑う。最初は怯えていた姿が嘘のようだった。何が原因かわからないが、彼女はオレを主と認めたらしい。

 ドラゴン系の忠誠心は、オレが知る限り鬱陶しいくらい真っすぐだ。主人のために己を犠牲にするのは当たり前、主の信頼に存在意義を見出みいだす。忠犬という単語があるが、ぴたりと当てはまる種族だった。

「リリアーナ、王とはすべての手足を余すことなく使い尽くす者だ。リリアーナに役目を与えるように、彼らにも使い道はある」

 聞いていた騎士の顔色が青くなる。使い捨ての駒として、数を揃えて使い倒すと言われた気がした。おそらく意味合いとしては間違っていない。今までの扱いも同じようなものだが、相手が魔王というだけで恐怖心は膨らんだ。

「召喚の儀が行われた塔へ案内あないせよ」

「イエス、マイキング」

 命じられた騎士は敬礼して従った。命を奪わないと告げた言葉を信じるしかない。国王の命令に背いた以上、圧倒的強者の下で生き残る道を探るのみだ。彼はある意味真面目だった。生まれてくる子供を一度抱くまでは死ねないと、必死で両手両足を動かす。

 騎士3人の先導で石造りの塔へ戻るオレは、身軽過ぎる自分の姿に気づいた。自室で休んでいたところを召喚されたため、かなりの軽装だ。マントも武器もない状態は無防備極まりない。ここが敵地であるならば、最低限の装備は必要だった。

 歩きながら黒いマントを取り出す。圧政を敷いた前魔王からの戦利品であるマントは、内側に魔法を弾く魔法陣が刺繍されていた。手慣れた様子で羽織り、鎖骨の辺りで服に固定する。次に漆黒蛇の革ベルトを巻き、剣をかけた。

 後ろからリリアーナが手を伸ばし、乱れた黒髪を手櫛で直してくれる。気の利く娘だ。満足げに頷くと、半歩下がった位置を歩くリリアーナは嬉しそうに笑った。

 崩れかけの王宮を出ると、見覚えのある風景の先に塔がある。誰もいないのか、しんと静まり返っていた。扉は開け放ったままで、魔術的な仕掛けも見当たらない。

「あの……ここです」

 この先は魔術師でなければ罠を見抜けないだろう。侵入者対策の罠がいくつか感じ取れた。騎士に先を歩かせても、無駄に命を散らすだけ。立ち止まった騎士を押しのけ、先頭を歩く。駆け寄るリリアーナが、今度は2歩先に飛び出した。

「下がれ、リリアーナ」

「でも」

「下がれと命じた。オレの前を歩くなど千年早い」
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