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168.オレの嫁だぞ(SIDEセティ)
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*****SIDE セティ
ドラゴンの背を怖がらないのも、急降下が平気なのもいいことだ。問題はすぐにキスをしようとするところか。ドラゴンがイシスを舐めるのは仕方ないとして、お返ししようとするのが気に食わない。先ほどもヴルムの3番目の息子エルランドに、キスを返そうとしていた。
止めたオレに『子どもですね』と苦笑いしたエルランドに「うるさい」と悪態をつく。この子に関しては心が狭くても、振る舞いがガキでもいいんだ。オレのだからな。しっかり所有権を主張してオレの嫁だと示してやった。
青いヴルムは水に特化し、銀のファフニールは光と癒しを司る。実際はファフニールが帝についたことからも推測できるが、かなり攻撃的な性格だった。まあ、竜としての特性と性格は別物みたいだな。生まれた末っ子ボリスと3番目エルランドは緑の鱗を持つ。植物を操り育て、風をよく読む性質が強かった。
今はまだ飛べないボリスだが、空中で舞うことにかけて緑の竜に勝てるドラゴン種は少ない。いずれは竜帝の息子に相応しい速さを誇るだろう。残る2匹は火に強い長男、先祖返りの土竜系の次男だった。楽しみにしているようだから口にはしないが……。
エルランドの嫁の白ドラゴンが、奥から肉を引っ張り出した。巨大なイノシシのようだ。今日のために捕まえておいたらしい。狩りに行かずに済むのは助かる。獲物を確かめたファフニールとエルランドが毛皮を剥ぎ始めた。任せたオレに飛びついたイシスが笑う。この子が笑うと周囲が釣られるな。
柔らかな雰囲気の中でゲリュオンが肉を切り裂き、叩いて細かく刻んだ。肉団子にしないとイシスやシェリアには食べられないだろう。イノシシ肉は硬いことが多く、野草を取り出して風味付けしながら練り始めた。隣に用意した鍋に入れていると、興味深そうに近寄ったシェリアが真似をする。
「お、うまいぞ。シェリア」
ゲリュオンが褒めた途端、嬉しそうに笑って肉を捏ねる。寄ってきたトムが匂いを嗅ぎ、追いかけたイシスがぴたりと足を止めた。そのまま動こうとしない。ボリスと遊んでたんじゃなかったか?
「どうした?」
「僕もやる」
両手を綺麗に洗ったイシスが、わざわざ狭い場所に入り込んでくる。並んで作業していたシェリアを、オレから遠ざけたいようだ。可愛い焼きもちに頬が緩んだ。ヴルム達も呆れ顔ながら何も言わずに見守っている。気づかないのは当人達だけ。
「今日はボリスとエルランドお兄さんと寝るね」
何を言いだしたのか。きょとんとしたオレに、今日だけしか泊まれないからとイシスが説明する。だから一緒に寝るらしい。ヴルムやファフニールが隣にいるから変な心配はしないが、面白くないのは当然だ。むっとしたオレを見ながら、イシスは首を傾げた。背伸びしてキスをくれるが、頬では満足できない。大人げないと思いながら見つめるオレに、イシスは無邪気に提案してきた。
「夜はいっぱい仲直りのお呪いしようね」
……くそ、ドラゴンだけじゃなくゲリュオンにも睨まれた。
ドラゴンの背を怖がらないのも、急降下が平気なのもいいことだ。問題はすぐにキスをしようとするところか。ドラゴンがイシスを舐めるのは仕方ないとして、お返ししようとするのが気に食わない。先ほどもヴルムの3番目の息子エルランドに、キスを返そうとしていた。
止めたオレに『子どもですね』と苦笑いしたエルランドに「うるさい」と悪態をつく。この子に関しては心が狭くても、振る舞いがガキでもいいんだ。オレのだからな。しっかり所有権を主張してオレの嫁だと示してやった。
青いヴルムは水に特化し、銀のファフニールは光と癒しを司る。実際はファフニールが帝についたことからも推測できるが、かなり攻撃的な性格だった。まあ、竜としての特性と性格は別物みたいだな。生まれた末っ子ボリスと3番目エルランドは緑の鱗を持つ。植物を操り育て、風をよく読む性質が強かった。
今はまだ飛べないボリスだが、空中で舞うことにかけて緑の竜に勝てるドラゴン種は少ない。いずれは竜帝の息子に相応しい速さを誇るだろう。残る2匹は火に強い長男、先祖返りの土竜系の次男だった。楽しみにしているようだから口にはしないが……。
エルランドの嫁の白ドラゴンが、奥から肉を引っ張り出した。巨大なイノシシのようだ。今日のために捕まえておいたらしい。狩りに行かずに済むのは助かる。獲物を確かめたファフニールとエルランドが毛皮を剥ぎ始めた。任せたオレに飛びついたイシスが笑う。この子が笑うと周囲が釣られるな。
柔らかな雰囲気の中でゲリュオンが肉を切り裂き、叩いて細かく刻んだ。肉団子にしないとイシスやシェリアには食べられないだろう。イノシシ肉は硬いことが多く、野草を取り出して風味付けしながら練り始めた。隣に用意した鍋に入れていると、興味深そうに近寄ったシェリアが真似をする。
「お、うまいぞ。シェリア」
ゲリュオンが褒めた途端、嬉しそうに笑って肉を捏ねる。寄ってきたトムが匂いを嗅ぎ、追いかけたイシスがぴたりと足を止めた。そのまま動こうとしない。ボリスと遊んでたんじゃなかったか?
「どうした?」
「僕もやる」
両手を綺麗に洗ったイシスが、わざわざ狭い場所に入り込んでくる。並んで作業していたシェリアを、オレから遠ざけたいようだ。可愛い焼きもちに頬が緩んだ。ヴルム達も呆れ顔ながら何も言わずに見守っている。気づかないのは当人達だけ。
「今日はボリスとエルランドお兄さんと寝るね」
何を言いだしたのか。きょとんとしたオレに、今日だけしか泊まれないからとイシスが説明する。だから一緒に寝るらしい。ヴルムやファフニールが隣にいるから変な心配はしないが、面白くないのは当然だ。むっとしたオレを見ながら、イシスは首を傾げた。背伸びしてキスをくれるが、頬では満足できない。大人げないと思いながら見つめるオレに、イシスは無邪気に提案してきた。
「夜はいっぱい仲直りのお呪いしようね」
……くそ、ドラゴンだけじゃなくゲリュオンにも睨まれた。
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