【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

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167.3番目のお兄さん

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 ぱたぱたと足音がして、奥からお母さんより小さいドラゴンが来た。ボリスより大きいから、この人がお兄さんみたい。挨拶をするから下ろしてとお願いして、僕はきちんと自分で立った。近づいたのは緑色のドラゴンで、光ってる壁の色と同じ。ボリスも緑だから、お互いに近づいて匂いを確かめていた。

「お兄さん? 僕、イシスです」

『父さんから聞いたよ、エルランドだ』

 頭を下げて挨拶すると、お兄さんも同じように頭を下げてくれた。嬉しくなって飛びつくと、ぐるると喉が鳴る。お父さん達と同じだ。ぺろりと顔を舐められて舐め返そうとしたら、後ろから引っ張られた。

「こら、キスはダメだ」

「家族だよ」

「……ダメ」

 セティが言うなら、きっとダメなんだと思う。ごめんねとエルランドお兄さんを撫でていたら、また舐められちゃった。ボリスが一緒になってお兄さんを舐めたり、僕を舐めたりする。足元に置いた籠をくんくん匂ったエルランドお兄さんが声を上げた。

『この中に何がいるのさ』

「トムとガイア」

 籠の上を開けて見せてあげる。トムのお母さんは僕で、ガイアはセティの兄弟なの。説明しながらトムを外へ出すと、奥へ走っていく。

『奥は嫁がいるけど……食べたりしないよな?』

 不安そうなエルランドお兄さんの言葉に、僕は慌てて走り出した。追いかけた先で、金色の子猫が丸まっている。正面に綺麗な白ドラゴンがいて、トムを爪の先で押さえていた。匂いを確かめてるみたい。近づいて僕は挨拶した。

「エルランドお兄さんの弟で、イシスです。あの、トムを返してくれる?」

『ああ、お前さんの連れなのね。子猫が紛れ込むなんて珍しいと思ったわ』

 笑いながら爪を離してくれた。お兄さんが食べるなんて言うから、びっくりしたけど優しいお姉さんだ。ほっとした僕はトムを抱っこした。

「ダメだよ、急に走ったら危ないんだからね」

 前に僕が注意されたことを、そのまま教える。

『あら、もう仲良くなったの?』

 お母さんが入ってきて気づいた。この洞窟、すごく大きくて広いの。お父さんとお母さん、お兄さんとお嫁さんがいて……それでも全然平気だった。僕はドラゴンみたいに夜は良く見えないけど、この洞窟は明るい。壁の緑の草が光ってるけど、お兄さん達が植えたのかな。

「お母さん、ここ明るいね」

『光る草だからね。便利だろう? エルランドはこういう工夫が上手なのよ』

 お兄さんが育てたんだ! すごいね。感心していると後ろからセティに抱っこされた。僕もトムを抱っこしてるから、抱っこが2回だ。

「今夜はここに泊って、明日は違うドラゴンのところへ行くぞ」

「1日だけなの?」

「そうだ。あと2人もいるからな」

 ほかのお兄さんを待たせたら悪いからだね。頷いた僕は、今日はボリスと一緒にお兄さんと寝ることになった。むすっとした顔でご飯を用意するセティの頬にキスをする。それでも機嫌が直らないの、困ったな。あっ! 仲直りのお呪いすればいいね。
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