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169.我が侭言って悪い子だった

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 洞窟にいる間はお風呂に入れないから、魔法で体を綺麗にしてもらう。セティのテントに入っていくと、トムが一緒に入ってきた。お膝に乗せて撫でる僕が欠伸をひとつ。今日はたくさん移動したね。僕は乗ってるだけなのに、疲れちゃった。

 トムも欠伸をしたところで、戻ってきたセティがトムの首を掴んで籠に入れた。唸って文句を言うトムを睨んで黙らせる。

「セティ、ひどいことしないで」

「ああ、もちろんだ」

 僕を膝に乗せたセティが約束してくれたので、僕はほっとした。でも、外に声が聞こえていたみたいで……。

『ひどいこととは、何だ?』

『早く助けないと』

 ぐるるるるっ! 唸るボリスの声に、エルランドお兄さんとお嫁さんの声がして……テントがばさっとなくなった。咥えてどけたのはお兄さんで、慌てて駆け寄ったお嫁さん。お父さん達は顔を見合わせて大笑いしていた。

 突然テントを取られたセティが、大きな溜め息を吐く。ちょっと手が震えてるのは怖かったの? 可哀想に思って、僕はセティの膝の上で反対向きに座った。足を開いて向き直って座り、よしよしと頭を撫でる。項垂れたセティに、隣のテントのゲリュオンが話しかけた。

「諦めろ、こいつらは天然だからな」

 ドラゴンを指さして笑うゲリュオンの言葉に、わかってると怒鳴り返すセティ。何か怒ってるのかな。

「今日はあいつらと寝るんだろ。ほら行ってこい」

 僕を膝から下ろそうとするセティに、悲しくなって抱き着く。両手を背中に回して、長い黒髪ごとセティにしがみついた。

「やだっ」

「自分で決めたんだぞ、約束を破ったらダメだ」

「……お呪いも仲直りもしてないもん」

 仲良しじゃないし、仲直りしてないのに離れたら嫌われちゃう。両足も使ってがっちりくっ付いた僕を、後ろからボリスが引っ張った。離れそうで怖くて泣きながら首を横に振る。

「やだ、やだぁ……」

「ったく、それなら約束なんかするんじゃない」

『仕方あるまい、引き剥がせば明日も一日泣いているであろう』

 お父さんが間に入って、お兄さんとボリスに説明してくれた。ぽかんとしていたお嫁さんとお兄さんは、慌てて洞窟の奥へ移動する。ごめんなさい、僕が悪いから嫌われちゃった。肩を落とす僕達の前に、お母さんがテントを置く。

『ほら、泣いていないでテントを直しなさい。仲直りするんでしょう?』

 鼻を啜りながら頷いて、セティの膝から降りる。ボリスは騒いでたけど、諦めてお父さんと寝るみたい。お母さんに頷いて、でも怖いからセティの手は離さなかった。セティも離せって言わない。

 お母さんが手伝ってくれたので、すぐにテントは元に戻った。お父さん達のところへ戻る前に、お母さんがセティに話しかける。僕には聞こえないけど、セティが少し驚いた顔をしてた。

「おいで、イシス」

「怒ってない?」

「怒ってないよ」

 手を繋いだまま入り口で立ち止まった僕に、セティは優しかった。我が侭言って、勝手なことして、僕は悪い子なのに。優しく抱っこしてくれた。それから背中を撫でて、何度もキスをもらう。僕も必死でキスした。仲直りして、元通りになりたい。

「ん……ふぅ、っ」

 服も脱いで体中触って、僕もセティのシャツを脱がせていっぱい触った。腰がじんとして足を動かすと、セティが笑う。ふわふわした気持ちでいっぱいキスをしたら、僕は眠さに耐えきれなくて目を閉じた。

「ゆっくりお休み」

 セティの声に返事、できなかったかも。
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