怪異から論理の糸を縒る

板久咲絢芽

文字の大きさ
142 / 266
4-2 うろを満たすは side B

6 時速60キロ(自動車全般の場合)

しおりを挟む
「いや、織歌おりか、優秀か優秀じゃないかなら、優秀なんですよ?」

ほけ~っと、まるで心当たりがないなんて顔をしている織歌おりかひろは言う。
横の高みの見物二人も無言でうなずいている。

「ただ……そう、ただ、何事にも限度がある、という話なだけで」
「どうしてこうなったかなあ……」
「センセイの影響にしたって、ねえ……」

師匠まで含めて、三者三様にどうしてこうなったのか、と疑問符にまみれた視線を織歌おりかに送る。
が、織歌おりかからも疑問符の乗った視線が返ってくるだけなので、益体やくたいもない。

「まあ、織歌おりかの理解度の法定速度外疑惑は置いといて、ひとりかくれんぼにおけるぬいぐるみについてのは理解できましたね」

紀美きみもロビンもそのひろの言い草にツッコむ気はないらしい。
むしろ全面的に同意されてる気配すらする。

「はい。でも、ぬいぐるみ関係で直接的な変わった事というと、あとはお米と赤い糸ぐらいですか?」

確かにぬいぐるみの前準備でお米を詰めるし、それを赤い糸で縫うのである。

「まあ、そうなりますね。それをどう解釈するか、なんですが」
「うーん……お米は穀物の代表格ではありますよね……これ、粳米うるちまい糯米もちごめの違いはないんですよね?」
「どうして、そこに行き着けるのかな?」
「おかしいなあ……ゆっくり育てるはずだったのになあ」

とうとう師匠と兄弟子が二人して頭をかかえ始めたし、その気持ちがわからぬでもないので、ひろのうるさいという気持ちすらえた。

「確かに同じお米でも、糯米もちごめの方がと考えるのが妥当ですけど……ひとりかくれんぼ上、区別はありませんね」

糯米もちごめのその性質は、潜性せんせい――ひろが初めて聞いた頃は劣性――遺伝である。
あらわれにくい遺伝であるということは、すなわち全体に対して少数派であり、つまりは普通の多数派に対する非普通、何かと価値や意味を付与されがちななのである。糯米もちごめはその価値・意味がプラス方向だっただけで。

「まあ、一粒に三柱の神様だの仏様だの、なんなら神様の目だなんて言うのもありますし、占いだったり、塩と一緒に使われたりもしますし、大陸の道術系でもなんかあったような気がしますが……」
「ということは、粳米うるちまい糯米もちごめかにかかわらず、お米は聖性せいせいを持つ、ということでしょうか」
「……さっき言った通り、格としては糯米もちごめの方が上ですけどね」

もう何かあきらめるしかないな、とひろは思った。
いや、何をあきらめるのかと言われたらなんなのかわかんないけど。

「まあ、聖性せいせいと言うよりは神性しんせいに近いとボクは思うな。神はたたるから、それで両義性りょうぎせいが生まれる」
あるいは、本来は聖性せいせいであったのが、神性しんせいとごっちゃになったとも考えられるね。こういう似通にかよったのは、いつの間にか合体するのが世の常」

補足の連携を見せる師匠と兄弟子をちらりと見て、ひろはとりあえずこれ以上言う事はなかった。
織歌おりかはふんふん、と考えつつうなずきながら、自分の考えの及ぶゴールに辿たどいたらしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

きさらぎ駅

水野華奈
ホラー
親友から電話があった。 きさらぎ駅という場所にいるらしい… 日常の中の小さな恐怖が今始まる。 触れてしまったが最後。 二度と戻れない。

ひとりぐらし

雨宮 叶月
ホラー
その痛みに、絶望に、気づいてください。 ※これは警告です。※

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

処理中です...