怪異から論理の糸を縒る

板久咲絢芽

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4-2 うろを満たすは side B

5 ぬいぐるみの意味

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「さて、織歌おりか、気になる点は?」
「……まず、手足のあるぬいぐるみが必要、という点でしょうか」

小さく首をかしげて織歌おりかは言った。

「その心は」
「手足のあるぬいぐるみ、というのは頭足人とうそくじんタイプのものでなければ、基本、頭、胴、四肢の五体からなるはずです。つまり、基本的な人形ひとがたの類似ですよね」
「センセイ、トウソクジンってナニ?」
「一定レベルの成長に達した幼児が人をこうとした時にくような、頭というか顔に直接手足がえてるフォルムのやつ。頭、足、人って書いて頭足人とうそくじん

高みの見物勢がこそこそと何か話しているが、ひろはそっちを意識しない。

「そうですね。ぬいぐるみ、というより人形にんぎょう全般は、えてして人の形への類似を起点に連動して紐付けられます。『金枝篇きんしへん』のフレイザーが類感呪術るいかんじゅじゅつとして分類したタイプですね」
「かたい」
「雷おこしかな」

もうキリがないので意識しない、意識しない、とひろは自分に言い聞かせながら一口玄米茶をすする。
すると、織歌おりかが口を開いた。

「フレイザーでいくと、でもこれって自分の髪や爪を入れているので、感染呪術かんせんじゅじゅつでもありますよね。うし刻参こくまいりと同じで」
「あ、前に賢木さかきさんに聞いた勉強のために読書してるって本当だったんだね……」
「うーん、熱心なのはありがたいけど、ちょっとボクとしては心配だな、この素直さ」

こればっかりはひろも同意見である。
あれか、自分の初期理解度の確認も込みで、あえて難度高めから始めるのか。
なお、紀美きみの言う賢木さかきさん、は織歌おりかの父親のことである。
ひろからすれば、子煩悩でお茶目なダンディだが、腹芸もできるタイプの善人といったところ。
正味、爪の垢のほんの少しばかりを自分の父親に飲ませたい。全部でなくていい。
その程度には人を気負わせる、というかある意味ゆえの空気感があるタイプなので、そこまで父親に真似まねしてほしくはない。

類感るいかん感染かんせんも十分に一分類として確立してる以上、その両方をそなえているということは、呪いとして過剰なまでに認識されうるということになります」
「やっぱり、そうなりますよね……じゃあ唯一、実行者を守っているのは、名前の禁忌、ですか」
「チョット、はやいはやい」
「僕が言うのもなんだけど、若葉マークの速度じゃないよこれ」

やいのやいのと横がうるさい。
気持ちはわかるが、流石さすがにこれは無視できない。

「先生、ロビン、
「あっ、ハイ」
「……はい」

ひろが敬語をやめて言うと、高みの見物二人はすぐに静かになった。

「……さて、ひとりかくれんぼのぬいぐるみにまつわる要素腑分ふわけして解析してみれば織歌おりかの言う通りです。四肢ししのあるぬいぐるみという時点で人との類感をなし、その内に実行者の髪や爪をおさめることで実行者への感染をなす。しかし、このに与えられる名前はそのと異なる。その上で手順をさらってみれば……」
「……手順の中で、明確に名前とどうであるかを共に告げるのも、ぬいぐるみと実行者を切り離すための明確な線引きの宣言? ……ひろちゃん、どうかしました?」

確かに、ひろ織歌おりかの思考を誘導はした。
誘導はしたのだが、こうも華麗にまとの中央に来るとは、ということで、ひろは若干引き気味で織歌おりかを見つめていた。
高みの見物の二人も完全に引いていた。
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