72 / 266
3-2 肝試しと大掃除 side B
9 medi- 中 -terr- 地 -aneus 形容詞形成語尾
しおりを挟む
「とりあえず、話、元に戻します。メディアと言うと、昨今の一般で言えば媒体の訳語……逆かな? メディアを強制的に日本語化すると媒体になるっていう方がしっくりきますね」
「わかる。カタカナ語の難しいとこだよね、そういうの」
直人がハンドルを切って、交差点の左折レーンに車を進めながら言う。
生憎、信号は赤になってしまったので、そのまま停止線で止まった。
「さて、織歌、メディアの複数形って知ってます?」
「え? そういう風に訊くってことは、英語の複数形の文法に則って、順当に-sを付けるだけではないってことですよね」
「直さんは?」
「……んー、データと同じで元から複数形じゃない? あれもラテン語由来だったよね?」
直人はこう見えて、まあ、車出してくれるぐらいに割と自由が利く程度の文筆業者である。
翻訳やったり、雑誌記事書いたりしているとは本人の談だが、オールマイティというべきなのか器用貧乏というべきなのか。
なので、知っていてもさもありなん。
「やっぱり、直さんは知ってましたか。その通りです。最初から複数形。本来の形はデータ――いえ、ラテン語発音でダータの単数形datumと同じように、末尾が-umになって、メディアの単数形はmediumです。えーと、この語末は一般的中性名詞なんで、第二変化でしたっけね」
西洋魔術とか思想の類に触れるのにラテン語とギリシャ語の知識はあって困らないから、その内触れてもらうね、というのは、織歌も既に紀美からは言われている。
であれば、姉弟子である弘は既に通った道か、現在通過途中かである。
「本来のラテン語におけるmediumは形容詞なので、辞書で引く時は男性形のmediusで引くべきですね。間、中間、最中、半ば。転じて、中庸からの丁度いい。概念としては時間、空間、程度という尺度における端以外ですね。印欧祖語、インド・ヨーロッパの共通先祖の言語から存在する概念の語なので、アングロサクソン系を経由しても似た形になっています。例えば、夜中を指すmidnightのmid部分とか、真ん中を意味するmiddleとかと根っこが同じってことですね」
「地中海とか中世風もそういうことですか……」
「夏至とか、冬至もあるよー。まあ、midsummerはシェイクスピアから夏至よりも真夏っていうイメージ持っちゃってる人もいる気がするけど」
織歌が知っている英単語と結びつけて理解の促進を図っていると、更に直人が補足情報を乗っけて来る。
となると、その形容詞の複数形であるならば、メディアの本来的な意味は――
「形容詞が名詞的に使われているとして、それなら本来の意味は中間のもの……?」
「そうです。そして、ここが面倒なんですけど、時空間、程度における端以外を指す以上、二点間を結ぶ間は全てmediaと言えるんです」
直人がハンドルを回し、左折する。
そのルームミラーに映った弘は明らかに、どう説明しようかと悩んでいる渋面だった。
「わかる。カタカナ語の難しいとこだよね、そういうの」
直人がハンドルを切って、交差点の左折レーンに車を進めながら言う。
生憎、信号は赤になってしまったので、そのまま停止線で止まった。
「さて、織歌、メディアの複数形って知ってます?」
「え? そういう風に訊くってことは、英語の複数形の文法に則って、順当に-sを付けるだけではないってことですよね」
「直さんは?」
「……んー、データと同じで元から複数形じゃない? あれもラテン語由来だったよね?」
直人はこう見えて、まあ、車出してくれるぐらいに割と自由が利く程度の文筆業者である。
翻訳やったり、雑誌記事書いたりしているとは本人の談だが、オールマイティというべきなのか器用貧乏というべきなのか。
なので、知っていてもさもありなん。
「やっぱり、直さんは知ってましたか。その通りです。最初から複数形。本来の形はデータ――いえ、ラテン語発音でダータの単数形datumと同じように、末尾が-umになって、メディアの単数形はmediumです。えーと、この語末は一般的中性名詞なんで、第二変化でしたっけね」
西洋魔術とか思想の類に触れるのにラテン語とギリシャ語の知識はあって困らないから、その内触れてもらうね、というのは、織歌も既に紀美からは言われている。
であれば、姉弟子である弘は既に通った道か、現在通過途中かである。
「本来のラテン語におけるmediumは形容詞なので、辞書で引く時は男性形のmediusで引くべきですね。間、中間、最中、半ば。転じて、中庸からの丁度いい。概念としては時間、空間、程度という尺度における端以外ですね。印欧祖語、インド・ヨーロッパの共通先祖の言語から存在する概念の語なので、アングロサクソン系を経由しても似た形になっています。例えば、夜中を指すmidnightのmid部分とか、真ん中を意味するmiddleとかと根っこが同じってことですね」
「地中海とか中世風もそういうことですか……」
「夏至とか、冬至もあるよー。まあ、midsummerはシェイクスピアから夏至よりも真夏っていうイメージ持っちゃってる人もいる気がするけど」
織歌が知っている英単語と結びつけて理解の促進を図っていると、更に直人が補足情報を乗っけて来る。
となると、その形容詞の複数形であるならば、メディアの本来的な意味は――
「形容詞が名詞的に使われているとして、それなら本来の意味は中間のもの……?」
「そうです。そして、ここが面倒なんですけど、時空間、程度における端以外を指す以上、二点間を結ぶ間は全てmediaと言えるんです」
直人がハンドルを回し、左折する。
そのルームミラーに映った弘は明らかに、どう説明しようかと悩んでいる渋面だった。
0
あなたにおすすめの小説
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
「お前のカメラ、ずっと映ってるよ」〜ホラースポット配信者が気づいた時には、もう遅かった〜
まさき
ホラー
ホラースポット専門のYouTuber・桐島悠は、霊も怪異も一切信じない合理主義者だ。
ある廃病院での配信中、今まで感じたことのない「違和感」を覚えた。しかし撮影は無事終了。その後も普通に配信を続け、あの夜のことなど忘れかけていた頃——深夜、金縛りにあう。
疲れてるだけだ。
しかし、それは始まりに過ぎなかった。
記憶の空白。知らない足跡。動画に毎回映り込む、同じ女の姿。そして——「やっと、見つけた」という声。
カメラが映し続けていたのは、心霊スポットではなかった。もっとずっと、近いところにいるものだった。
✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
【完結】これはきっと運命の赤い糸
夏目若葉
恋愛
大手商社㈱オッティモで受付の仕事をしている浅木美桜(あさぎ みお)。
医師の三雲や、経産省のエリート官僚である仁科から付き合ってもいないのに何故かプロポーズを受け、引いてしまう。
自社の創立30周年記念パーティーで、同じビルの大企業・㈱志田ケミカルプロダクツの青砥桔平(あおと きっぺい)と出会う。
一目惚れに近い形で、自然と互いに惹かれ合うふたりだったが、川井という探偵から「あの男は辞めておけ」と忠告が入る。
桔平は志田ケミカルの会長の孫で、御曹司だった。
志田ケミカルの会社の内情を調べていた川井から、青砥家のお家事情を聞いてしまう。
会長の娘婿である桔平の父・一馬は、地盤固めのために銀行頭取の娘との見合い話を桔平に勧めているらしいと聞いて、美桜はショックを受ける。
その上、自分の母が青砥家と因縁があると知り……
━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆
大手商社・㈱オッティモの受付で働く
浅木 美桜(あさぎ みお) 24歳
×
大手化粧品メーカー・㈱志田ケミカルプロダクツの若き常務
青砥 桔平(あおと きっぺい) 30歳
×
オフィスビル内を探っている探偵
川井 智親(かわい ともちか) 32歳
女神の白刃
玉椿 沢
ファンタジー
どこかの世界の、いつかの時代。
その世界の戦争は、ある遺跡群から出現した剣により、大きく姿を変えた。
女の身体を鞘とする剣は、魔力を収束、発振する兵器。
剣は瞬く間に戦を大戦へ進歩させた。数々の大戦を経た世界は、権威を西の皇帝が、権力を東の大帝が握る世になり、終息した。
大戦より数年後、まだ治まったとはいえない世界で、未だ剣士は剣を求め、奪い合っていた。
魔物が出ようと、町も村も知った事かと剣を求める愚かな世界で、赤茶けた大地を畑や町に、煤けた顔を笑顔に変えたいという脳天気な一団が現れる。
*表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
【なろう490万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ
海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。
衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。
絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。
ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。
大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。
はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?
小説家になろうSF(パニック)部門にて490万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。
カクヨムのSF部門においても高評価いただき100万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる