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3-2 肝試しと大掃除 side B
8 Aurea mediocritas.
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「そういえば、曲がるは悪いものってそことなら勾玉ってどうなの?」
「……そうなると正常のなおと異常なだけのまがの二項対立な気がしますね」
「それだと、マイナス方向の用例が禍々しい、勾玉はプラス方向の用例ってことになるんですかね」
織歌の確認に、たぶん、と弘が答える。
こうした内容において、正負または善悪の両義性のある異常というのは珍しくない。
中庸こそが正常、平均こそが正常。
つまるところ、普通こそが正常なのである。
過猶不及、みたいな。
だから、能力的に誰かを守れる織歌だって、本来的には誰かを傷つけてしまうはずの弘だって、並べて異常なのである。
そう思っていると、丁度すれ違った対向車のライトが眩しくて、織歌は少し目を細めた。
ルームミラーには似たような表情をしている弘が映っている。
「……でも、その招かれざる客の子達も不運なのか、幸運なのか、わかんないねえ」
「悪運が強いってやつじゃないですかね」
いい迷惑でしたけど、と弘がぼやきながら、剥いた二つ目の飴を口に放り込む。
「つーか、半分がヤバくなりそうな属性持ちってなんですか、マジで」
「私も勾田という名字は知ってましたけど、津曲は初めて知りましたね……」
世の中は広い。
が、弘はまた、がりりと飴に歯を立ててから、嫌そうな表情で口を開いた。
「ところがどっこい、それだけじゃねーんですよー、あの二人」
「え?」
「所属、メディア学部らしいんですよ」
「……オジサン、よく話が見えないんだけど」
直人の言葉を肯定するつもりで、織歌も頷く。
それをルームミラー越しに確認した弘が、数回瞬きをしてから口を開いた。
「あれ、直さんはともかく、織歌にもしてませんでしたっけ? メディア、元は何語だかわかります?」
「ええっと、英語やフランス語にしては綴りと発音がそのまま過ぎますし、ドイツ語の音の感じではないので、イタリア系、ですか?」
おおう、当てにきた、と弘が焦ったように呟く。
「当たらずとも遠からず、元はラテン語ですね……いや直系子孫を当てるかあ」
「……織歌ちゃん、フランス語やドイツ語できるの?」
「あ、いえ、何度かヨーロッパに旅行した時に聞いたことがあるだけです」
「その何度、ってヨーロッパに旅行した、にかかるでいいんだよね?」
直人の反応に、あれ、と弘が首を傾げる。
「直さんには言ってませんでしたっけ? 織歌、話した感じの通りお嬢様ですよ。なんなら今我々が住んでるあそこ、織歌の家の持ってる土地で、その系列の借家ですし、そのまま他人の土地通らずに織歌の家まで行けます」
「あー、あの引っ越し、確かに織歌ちゃんが弟子になった直後か……いや、いいとこの子だとは思ってたけどさ」
そういうことなのね、と直人が呟いている。
確かに、今、紀美やロビン達が住んでいるのは織歌の家の持ち物ではある。
「そんな大層なものでは……」
「先生も含めた中で一番実家が太いというのに、ちょっと何を言ってるのか理解できませんね」
十二分に大層なんですよ、と弘がため息をついた。
「……そうなると正常のなおと異常なだけのまがの二項対立な気がしますね」
「それだと、マイナス方向の用例が禍々しい、勾玉はプラス方向の用例ってことになるんですかね」
織歌の確認に、たぶん、と弘が答える。
こうした内容において、正負または善悪の両義性のある異常というのは珍しくない。
中庸こそが正常、平均こそが正常。
つまるところ、普通こそが正常なのである。
過猶不及、みたいな。
だから、能力的に誰かを守れる織歌だって、本来的には誰かを傷つけてしまうはずの弘だって、並べて異常なのである。
そう思っていると、丁度すれ違った対向車のライトが眩しくて、織歌は少し目を細めた。
ルームミラーには似たような表情をしている弘が映っている。
「……でも、その招かれざる客の子達も不運なのか、幸運なのか、わかんないねえ」
「悪運が強いってやつじゃないですかね」
いい迷惑でしたけど、と弘がぼやきながら、剥いた二つ目の飴を口に放り込む。
「つーか、半分がヤバくなりそうな属性持ちってなんですか、マジで」
「私も勾田という名字は知ってましたけど、津曲は初めて知りましたね……」
世の中は広い。
が、弘はまた、がりりと飴に歯を立ててから、嫌そうな表情で口を開いた。
「ところがどっこい、それだけじゃねーんですよー、あの二人」
「え?」
「所属、メディア学部らしいんですよ」
「……オジサン、よく話が見えないんだけど」
直人の言葉を肯定するつもりで、織歌も頷く。
それをルームミラー越しに確認した弘が、数回瞬きをしてから口を開いた。
「あれ、直さんはともかく、織歌にもしてませんでしたっけ? メディア、元は何語だかわかります?」
「ええっと、英語やフランス語にしては綴りと発音がそのまま過ぎますし、ドイツ語の音の感じではないので、イタリア系、ですか?」
おおう、当てにきた、と弘が焦ったように呟く。
「当たらずとも遠からず、元はラテン語ですね……いや直系子孫を当てるかあ」
「……織歌ちゃん、フランス語やドイツ語できるの?」
「あ、いえ、何度かヨーロッパに旅行した時に聞いたことがあるだけです」
「その何度、ってヨーロッパに旅行した、にかかるでいいんだよね?」
直人の反応に、あれ、と弘が首を傾げる。
「直さんには言ってませんでしたっけ? 織歌、話した感じの通りお嬢様ですよ。なんなら今我々が住んでるあそこ、織歌の家の持ってる土地で、その系列の借家ですし、そのまま他人の土地通らずに織歌の家まで行けます」
「あー、あの引っ越し、確かに織歌ちゃんが弟子になった直後か……いや、いいとこの子だとは思ってたけどさ」
そういうことなのね、と直人が呟いている。
確かに、今、紀美やロビン達が住んでいるのは織歌の家の持ち物ではある。
「そんな大層なものでは……」
「先生も含めた中で一番実家が太いというのに、ちょっと何を言ってるのか理解できませんね」
十二分に大層なんですよ、と弘がため息をついた。
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